第11章:刃の上のダンス
#サイコホラー #知能犯 #残酷な描写あり #異常愛 #サスペンス #サイコパス
黒い車列のエンジン音が、犬神邸の木製の門の前でぴたりと止まった。カーテンの隙間から、江戸は高木警部が車から降りるのを見た。一度狙った獲物は決して逃さない「鷹の目」を持つ男として知られる老練な刑事だ。彼の背後には六人の制服警官が控えている。
「くそっ! 予定より早すぎる!」江戸は低く唸った。彼のINTP的な脳が光速で回転を始める。
台所のテーブルの上では、有馬の眼球が入った瓶がまだ開いたままだった。鮮血がポルセリンの床に滴り落ちている。
「あかり! 今すぐそれを隠せ!」江戸はかすれた声で命じた。
あかりはむしろ楽しげに笑い、先ほどの争いで切れた唇に鮮やかな赤の口紅を引いた。「何を急いでいるの、愛しい人? 警部さんにも、私たちのコレクションがどれほど美しいか見せてあげましょうよ」
「地下室へ行け、今すぐにだ!」江戸はその瓶をひったくったが、地下まで運ぶ時間がないことは分かっていた。
コン、コン、コン!
玄関のドアを叩く音が、重く威圧的に響いた。「県警だ! 開けなさい、犬神さん!」
江戸は深く息を吸った。震えながらも正確な動きで、彼は眼球の瓶を、夕食の残りの唐揚げや鶏の内臓が入ったゴミ袋の中に突っ込んだ。臭いを紛らわせるために、その上に卵の殻とコーヒーの出し殻をぶちまける。彼はその袋を流しの真下に置くと、血の生臭さを消すために刺激的なシトラスの香りの床洗剤を撒き散らした。
「しおり、食卓に座れ。何事もなかったかのようにシリアルを食べるんだ」江戸が囁いた。
江戸が必死にテーブルの血痕を拭き取っている間に、あかりは悠然と玄関へ向かった。彼女はわざと部屋着の第一ボタンを外し、江戸に掴まれた「野性的な愛の痕」に見えるよう、赤くなった首元を晒した。
あかりは最高の微笑みを浮かべてドアを開けた。「あら……警部さん? こんな朝早くから、新婚夫婦のプライバシーを邪魔して何のご用かしら?」
高木警部は、乱れていながらも艶めかしいあかりの美しさに一瞬圧倒された。「犬神夫人、我々の同僚二人の失踪に関連して、この区域を捜索する令状を持っています」
「どうぞお入りになって」あかりは一歩下がり、高木を招き入れた。高木が横を通り過ぎる際、あかりはわざと彼の耳元で囁いた。「気をつけてね、警部さん。私の主人は独占欲が強いの……自分の家の中を他の男に嗅ぎ回られるのを嫌がるわ」
高木は台所へと足を踏み入れた。そこには、背中に冷や汗を流しながらも冷静を装って立つ江戸がいた。しおりはそこで、無垢な表情でシリアルを口に運んでいる。
「犬神さん」高木は江戸を鋭く見つめた。「このシトラスの臭い……随分と鼻につく。なかなか落ちない汚れでも掃除していたのかな?」
「妻が今朝、料理中に少し失敗しましてね」江戸は冷静に答えた。「床に魚のソースをこぼしたんです」
高木は流しの方へ歩み寄った――まさに有馬の眼球が入ったゴミ袋の真上だ。彼は足を止めた。鼻をひくつかせて空気を嗅ぐ。江戸は背後でパン切り包丁を握りしめた。もし高木が少しでも身をかがめれば、彼の喉元に包丁を突き立てるしかない。
突如、あかりが横から高木の腕に絡みつき、老刑事の肩に頭を預けた。「警部さん、ご結婚はされているの? あなたのような毅然とした方を夫に持てる奥様は、きっと幸せね。お茶でも淹れましょうか……それとも、私たちの『秘密の寝室』でもご覧になりたい?」
高木はあかりの大胆すぎる振る舞いに不快感を覚え、荒々しく腕を引き抜いた。「態度を慎みなさい、奥さん。我々は公務で来ているんだ」
「ちっ、つまんないの」あかりは口を尖らせ、江戸に視線を送った。まるで「ほら、あんな奴らを翻弄するなんて簡単でしょう」と言わんばかりの瞳だ。
居間と台所を(彼らが「不潔」だと見なしたゴミ袋を調べることなく)捜索した後、高木は去り際にもう一度江戸を睨みつけた。
「明日はもっと完璧な鑑識チームを連れて戻ってきますよ、犬神さん。犬鳴は秘密を永遠に葬ってはくれない」
ドアが閉まった後、江戸はその場にへたり込んだ。激しく体が震えている。
「君のせいで捕まるところだったんだぞ、あかり!」江戸が叫んだ。
あかりはむしろ江戸の前に膝をつき、夫の額に浮かんだ汗を情熱的に舐めとった。「でも、追い詰められた時のあなたは最高に素敵よ、江戸さん。私、とっても……昂っちゃったわ」
部屋の隅から、しおりが静かにゴミ袋を拾い上げた。「お父様、お母様……コーヒーの出し殻のせいで眼球が腐り始めているわ。今すぐ焼却炉に持っていくわね」
ピシッ……。
そのひび割れる音は、今や家中の壁に広がっていた。犬神家の完全な崩壊は、すぐそこまで迫っていた。
「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」




