冒頭~
事件の幕揚げを予感させる近所の一幕(声劇台本)
ナレーション2<温和な氷売りと兼用
おさげの女学生3
ぽっちゃり女学生1<あしらう母親と兼用
おねだり男児3
穏和な氷売り4
>女学生たちの立ち話が聞こえる…
―おさげの女学生
ねぇ聞いた? 例の…ほら、新聞の。
「財布の落し物を届けた」って女学生…
あれ、うちの生徒なんだって。
―ぽっちゃり女学生
あぁ…
あの「一日で十三個」のやつ?
ちゃんと警察部に届けたのよね?
えらいわねぇ…
お礼いくらもらったのかなぁ…?
…と! 言うよりもさ! お礼!
拾った額の一割って言っても…!
「一日で十三個」なわけでしょ?
ショートケーキ何個分の額になるの!?
…いいなぁその子!
ツイてる! ツキすぎよぉ!
―おさげの女学生
………
…でもさ、それって逆に言うと、
十三人いるってことでしょう?
…お財布を落としちゃった人。
この界隈で一日に十三人も同じ日に
お財布落としたってことよね…?
…ツイてないってことにならない?
>荷を吊るした天秤棒を担いだ男と
子連れの女の立ち話が聞こえてくる…
―穏和な氷売り
…でよぉ、休みの日にデパートの食堂で
モダンにパンなんて食おうと思ってな…
食堂の前の行列に並んで待ってたのよ。
…んで、次の次が俺の番ってときに…
急に腹ぁ痛くなっちまったんだ。
ツイてねぇ話だろ?
―あしらう母親
…そうでもなかったかもしれないよ。
あんた、朝刊を見てないね?
その食堂で…事故だってさ。
給仕の服のボタンがパンに入って…
それ食べちまったお客さん…
病院に担ぎ込まれたって話じゃないか。
―おねだり男児
………
―穏和な氷売り
下手すりゃボタン入りのパン…
俺が食っちまってたかもしれねぇか…
…あそこで腹が痛くなって
かえってツイてたのかもしれねぇ…
―穏和な氷売り
…ところでよ、氷はいかが?
買ってってちょうだいよ?
―あしらう母親
…そうねぇ、お喋りして喉かわいたわ。
二つもらおうかねぇ。
―おねだり男児
僕…いらない。
―あしらう母親
…どうして?
―おねだり男児
だって…
だってボタンが入ってるもん…
―あしらう母親
この子ったら…
―穏和な氷売り
や、やっぱり、俺…
なんか…ツイてねぇよな…?