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お茶会①

 とうとう待ちに待ったお茶会当日になり、その日の朝は忙しかった。朝からお風呂に入ってパックやマッサージ、保湿をされて今日のために前々から決めていたドレスに着替え、軽くメイクをされてヘアセットを終えると昼近い時間になっていた。


「気合入ってるな」

「疲れた……」

「まだ始まってねぇうちからそれで大丈夫かよ」

「大丈夫。それより、チェックは問題なかったの?」

「全部問題ねぇよ、安心しろ」

「そっか」



 薔薇の庭園で行われるお茶会まであと約一時間。準備は順調に進んでいて、三十分後くらいからは招待した令嬢達が護衛と共にやって来る。


 お茶会に招待した令嬢達は、パパが厳選したらしい。それなら、皇妃と繋がりがある家の子どもではないはず。仲良くなって問題ないだろう。皆、私より歳が三〜五歳上だけど。



「どんな令嬢達なんだろうね。仲良くなれると思う?」

「さあ?仲良くしたい奴がいればすればいい。一人も仲良くしたい奴がいなくても、その時は何も問題はねぇよ。お前はこの帝国で二番目に偉いんだからな」

「本当にパパにそっくり…」

「どこがだよ」

「思考」



 気に入らなかったのか、痛くない力加減でデコピンされた。ムスッとした顔に、可愛いと思いながら時間になるまでクラウスと部屋で話していると、ドアがノックされた。


 入るように言えば部屋に入ってきたのはアルベルトで、そろそろ時間になることを教えてくれた。だから、クラウスにエスコートされながら薔薇の庭園へ足を進めると、私以外の人はもう集まっているようだった。



「本日はお越しいただきありがとうございます。ぜひ、楽しんで頂けたら幸いです」



 緊張しながらも挨拶をして席に着けば、ガラスのティーポットにお湯が注がれて、中でバラの花が咲いた。令嬢達もわぁっと咲いていくバラの工芸茶を見て感動していて、これを選択してよかったとホッとした。


 そして、ティーカップに注がれた工芸茶を飲んでみると、薔薇の華やかな香りがふわっと鼻を通った。すっきりとした甘みと、微かだけど酸味も感じられる。


 初めて飲んだけど、意外と飲みやすくて美味しい。周りの令嬢の表情を見ても好評なようで、オススメしてくれたクラウスに心の中で感謝した。


 工芸茶の話が落ち着くと招待した令嬢達が順番に招待のお礼と名前を名乗ってくれた。それによろしくお願いしますと微笑めば、すぐに自分の両親はこんなことをしているという話になった。



「私の父は鉱山を所有していて装飾品を取り扱っていますの。今日のこのヘアアクセサリーも、その鉱山で採れたサファイアを使っているんですのよ」

「とっても綺麗な色ですわ。流石、帝国で有名な装飾品を取り扱っているウィストン侯爵家です」

「私の父は服飾を取り扱っています。帝国でそのブランドの名前を知らない者はいないとされているくらい有名なのですよ」

「……そうなんですね。それは凄いです」



 話は心底退屈なものだった。だから何?という話ばっかりで欠伸が出そうになる度、必死に欠伸が出ないよう耐えた。


 恐らく、両親に自分の家の事業を言うように言われたんだろう。私が興味を持てば、もっとお金儲けができると考えて。


 厳選されてもこの程度かと残念に思った。仲良くしたいと思える子がいなさそうなお茶会に、バレないようにため息を吐いた。その間に、気づけば話題が変わっていた。



「そういえば、この間のオルコット伯爵の家で開催されたお茶会は凄かったですよね」

「最近流行っているスイーツや友好国で人気のお茶があって楽しい一時でしたわ」

「そんな…喜んで貰えたようで私も嬉しいです」

「皆様、この場で“今”その話をするのはどうかと思われます」

「あ…も、申し訳ございません、皇女様」

「気にしないでください」



 そう微笑んで言ったのはいいけど、クラウスやアルベルト、シルビアやソフィアのメイド達といった普段私のそばにいる人達は静かに怒っていた。


 私を除け者にする話題を話していたんだから怒るのは無理もない。しかも、流行りのスイーツや友好国で人気のお茶があって楽しかったという発言は、このお茶会は不満で楽しくないと捉えられる。


 分かっていて発言したのなら、相当失礼に値する発言だ。真意はどうあれ少しイラッとしてしまい、落ち着かせようと心を無心にさせた。


 そんな中、視界の端で今にも手が出そうになっているクラウスがいることに気づいた。絶対気づいているはずなのに、誰も止めようとせずむしろGOサインなんて出しているからやめて!!と心の中で叫んだ。


 クラウスに大人しくしててとジェスチャーで伝えて、話で盛り上がっていた皆を注意をした一人の令嬢に視線を向けた。


 確か、ダンヴァーズ公爵家の令嬢で、名前がラティアス嬢だったはず。皇妃の家と仲が大変悪く、皇女派の家だとパパが言っていた気がする。歳は私の五つ上だけど、この令嬢なら仲良くしたいかも。


 その横には面会の時に会ったラングフォード公爵家の令嬢のソルフィール嬢がいて、このお茶会で友達になれるのはこの二人だけだなと思った。



「そうだわ、次にオルコット伯爵の家で開催される時は皇女様も来てはいかがでしょう?」

「それはいいですね!皇女様だって、私達以外の令嬢や子息と関わる必要があると思いますし」

「あ…それなら、その時は招待状を出しますね」

「ちょっと、貴方達…!!」



 令嬢達から発せられた言葉に上から目線な所が見受けられるからか、またイラッとしてしまった。来てはいかがでしょうなんて、普通皇女相手に言わない。参加なされませんか?と伺い立てるのが正しいはずなのに、私を下に見ているのかと言いたくなる。


 他の令嬢や子息と関わる必要があるというのも大きなお世話だし、その時は招待状を出しますねだって、私は行くなんて一言も言っていないのに、仕方なく誘ってあげますねと言われているように感じられた。


 王族相手に、よくもまあこんなにも不敬な態度を取れるものだとある意味感心してしまいそうになった。


 そうして、あまりの不愉快さに顔を歪めてしまった時、ラティアス嬢とソルフィール嬢以外の令嬢達のすぐそばに雷が落ちた。



「ソルフィール嬢とラティアス嬢以外は随分と皇女を下に見る発言ばかりしているが不敬罪で死にたいのか」

「パパ!?」

「ウォーカー帝国の皇帝陛下にご挨拶申し上げます。年長者でありながら、令嬢達を止めることができずに申し訳ございません」

「申し訳ございませんでした」

「ソルフィール嬢、ラティアス嬢、頭を上げて構わない。それに、謝らなくていい。俺が人選ミスをしたのが悪いからな」

「除け者にするわ上から目線で話しかけるわで本当に酷い人選ミスをしたな」

「だから、責任を取るために出てきたんだろ。お前は皇女とソルフィール嬢とラティアス嬢を別の庭園へ連れて行け。そこで三人でお茶会の続きをするよう手配しろ。それと、ここにいる令嬢達の両親を呼べ」



 気怠げに返事をしたクラウスは、私を片腕で抱き上げて、もう片腕でソルフィール嬢のエスコートをして庭園から離れようとしたから慌てて「パパ」と呼んだ。


 すると、クラウスは止まってくれて、パパも振り返った。だから「殺すのはダメだよ」と一言だけ言って、クラウスにもういいことを伝えれば、ラティアス嬢をエスコートしているアルベルトとメイドの皆を引き連れて別の庭園へ移動した。


 庭園を出る時に見た令嬢達は顔を真っ青にさせて震えながら泣いていたから、バカだなぁと嘲笑った。

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