準備①
二日後、午前中の授業が終わって昼食を食べ終えた頃に補佐官が何冊ものカタログを抱えて部屋へとやって来た。
疲労が浮かんでいる顔を見て、パパに相当使われたんだとすぐに分かった。だから、疲れが取れるよう願いながら魔法を使うと、だんだんと顔色がよくなっていって補佐官が驚いていた。
「ありがとうございます皇女様…!あんなに重かった体が軽くなりました」
「魔力無感知症なのが嘘みたいだな」
「そういえば、クラウス様が作ることになった魔力を自動で調整する魔道具ってどうなったんですか?」
「一応作っている途中だけど、魔力無感知症について調べていくうちに治せる可能性を見つけて今はそっちにかかりきりで研究してる」
「え、治るんですか!?」
「確実に治るとは言えねぇけど、要するに魔力を感知する回路が詰まってるから感知できないってだけなら詰まりをどうにかすれば感知できるようになるんじゃねぇの?ってわけ」
「ああ、なるほど…」
希望が見えた魔力無感知症の完治に補佐官とアルベルトが喜んでいるのが分かった。かくいう私も、完治するかもしれないと分かって嬉しい。
クラウスが医者みたいなこともできるなんて知らなくて、凄いと素直に褒めると少し照れた顔をしてて可愛かった。
補佐官は後でパパにも伝えると言って咳払いを一つした後、本題の方へ入った。
「皇女様に決めてほしいことはテーブルクロスの色やティーセットのデザイン、花の種類に紅茶とスイーツを何にするか等です」
「このカタログの中から選べばいいの?」
「はい。もし、持ってきたカタログ内に気に入ったものがなければ他のカタログもあるのでその時は言ってください」
「うん、分かった」
「では、一つずつ決めていきましょうか。まずは…花の種類からにしましょう」
補佐官が持っていたカタログが種類ごとに分けられてテーブルの上に広げられ、それぞれの中を見てみれば、シンプルなものから可愛いもの、綺麗なものから大人な感じのものといったティーセットのデザイン画や、レース柄や花柄、ボーダー柄にチェック柄と様々な柄のテーブルクロスのデザイン画、紅茶の名前とどんな香りがして、どんなスイーツが合うかの説明が書かれたもの等が分かりやすく載っていた。
見ているだけで楽しいそれに、キャッキャッとしながら花の種類のカタログを見てどれにしようか話し合った。
その結果、フリルのような可愛い花のリシアンサスに決まって、その花に合うようにテーブルクロスはレースにした。
ティーセットはお茶会を開くならありきたりはどうかなと思って、帝国であまり使われていないガラスでできた綺麗なものにした。
それに合わせて、ティーセットがガラスならとクラウスが勧めてきたお湯を注ぐと徐々に薔薇の花が咲いていくというお茶にした。
そんなお茶があるなんて知らなかったから当日が楽しみになりながら、スイーツはラズベリーのタルトとマカロン、スコーンとマドレーヌを選んだ。
そして、スイーツまで決め終えた頃には夕食の時間近くになっていて、結構な時間が経っていたことにびっくりしつつも、いい一日を過ごしたなと冷めきってしまったミルクを飲みながら思った。
◇◆◇
「皇女様に決めていただかないといけないものは全て決め終えました」
「工芸茶を選んだのか。ガラスでできたティーセットといい、帝国ではほとんど使用されていないものだ」
「ありきたりはどうかと思うということで、敢えて選んでいました。工芸茶に関してはガラスのティーセットを使うならと大魔法使い様がオススメして、それに決めていましたよ」
「まあ確かに、ありきたりなお茶会は元老院が小言を言いそうだな。テーブルクロスや花もバランスが取れていて全体的に問題はなさそうだ。注文して構わない」
「では、商人に言って手配させますね」
レイシアが選んだものをまとめて、レイビスに提出すると問題箇所はなかったようですぐに許可が降りた。
クラウスの話をした時に一瞬、眉間にシワが寄ってブラントはやらかしたと思ったが、レイビスの機嫌は思ったより悪くなることはなかった。
そのことに安堵しながら、明日の朝イチで商人に注文をしてお茶会の準備を進めようとスケジュールを立てながら、ブラントはクラウスが言っていたことを思い出してレイビスに話しかけた。
「アルベルト様が大魔法使い様に皇女様の魔力を自動で調整する魔道具のことを今日聞いていたんですが、そこで朗報がありました」
「…朗報?」
「魔力無感知症を治せるかもしれないそうです」
「本当か?」
「大魔法使い様が言うには、魔力を感知する回路が詰まって感知できないだけなら、詰まりをどうにかすれば感知できるようになるのではないかと言うことです」
「…なるほど。確かに治せる可能性があるな」
魔力無感知症が治せるのなら、それがいいに越したことはない。今後の王位争いで魔力無感知症が治っていれば、確実に負けることはないのだから。
クラウスもそれが分かっているからか、魔力無感知症に関するカルテや書籍を片っ端から集めては読んでいる。
カルテや書籍を秘密裏に用意するのは骨が折れるほど大変だったなと、ブラントはその時のことを思い出しながら、商人に渡すための注文書類を書き始めた。




