危惧した通り
樹里が人間に戻って3日が経った。樹里の様子がすーっごい気にはなるけど、樹里には元の生活に戻ってもらわないと困る。私みたいな異物と関わらないようにね
「……で、話し相手の居なくなったバカ姉は、妹の部屋に入り浸ってるって情けなくない?」
「だってぇ〜‼︎寂しいんだもん‼︎」
私の危惧した通り、話し相手が居なくなった途端にすごく寂しくなる。樹里は日中は家族の様子を見ていたからずっと一緒だったわけじゃないけど、夜中とかは本当に暇で暇で仕方がない
「幽霊になったばっかりの時に戻っただけじゃんか」
「一回話し相手が出来て、それに慣れちゃったからさぁ」
最初の頃は不思議と暇だと思ったりしなかった。でも慣れとは恐ろしい……私にとっての夜中0時から朝の7時は、24時間に感じるぐらいに長い
「あのさぁ?私だってずっとバカ姉の相手出来るほど暇じゃないの。それに隣の部屋に蘭だっているし。油断して喋ってるところ聞かれたら、「独り言なんて吐いてどうしたの?寂しいの?」って心配されちゃうじゃん」
「寝てるから大丈夫でしょ」
今は深夜の1時半。蘭さんは寝息をたてて寝ていることはしっかり確認済みだ
対して初芽はいつも2時ぐらいに寝て7時に起きる。5時間睡眠ぐらいが初芽にとってはちょうど良い時間らしい
「いいから出てって。週1とかならまだしも3日連続とかさすがにないから」
「うぅ……分かったよ。おやすみ初芽」
「はいはいおやすみ」
私は初芽の部屋から追い出されるような形で出た
といっても初芽に非は無く私が全面的に悪い。あのビリビリを使って追い出してこないだけまだ優しい方だ
一時期なんて部屋にお札を貼りまくって私を部屋に入れなくしていたぐらいだし
「……仕方ない。あそこに行こ」
♢ ♢ ♢
「……で、儂の所に来たのか?」
「そうだよ」
「そうだよじゃないわ‼︎なぜお主の暇つぶしの為に儂が話し相手にならにゃいかんのじゃ!」
「でも今休憩中でしょ?それに仕事ばっかりで誰かと話す機会も少ないんじゃない?」
「バカか‼︎死人が来るたびにそやつらと喋ってるんじゃぞ⁉︎下界に生きる奴らの何倍も儂の方が色んなやつと喋っとるわ‼︎」
「た、確かに……」
毎回2人か樹里入れての3人で話してばっかりだったからすっかり忘れてた
「だって暇で……死にそうなんだもん」
「死んどるじゃろがって。……仕方ないの。樹里をこちらに戻してやろう」
「へっ?も、戻すって?」
「魂をじゃよ。戻してまた幽霊にしてやろう。ただし、次こそ肉体は死に、もう人間には戻れぬがな」
「す、ストップストップ‼︎そ、そこまでする必要ないって‼︎」
「じゃがそうすると暇な時間は潰れぬぞ?」
「せっかく家族の元に戻れた樹里を引き戻すとか考えられないから‼︎」
「なら文句言うでないわ」
「……はい」
冗談で言ってるのは分かるけど、実現させることは間違いなく出来るはず。変な癇癪を起こして実行されたらたまったもんじゃない……
「というか暇なら儂から依頼をこなしてきてくれんかの?」
「えぇ……私日中は忙しいんだよ。暇なのは夜中だけで」
「その夜中だけで構わんから」
「……なに?」
正直前の依頼が依頼なだけにあまり乗り気ではない。夜中ならこの前みたいに初芽の力も借りられないし……
「リビティーナの手伝いじゃ」
「リーナの?」
また怨念系の依頼だと思っていたので、ちょっと拍子抜けだ
「儂は詳しくは知らんが、なんかヤバい異臭を放つ釜が店の中にあるらしくての」
「あっ……」
ナトちゃんはあの匂いにトラウマを植え付けられて、そこの記憶だけないって言ってたっけ……
「トラウマ?なんの話じゃ?」
「い、いやなんもないよ!」
やっぱり考えてることバレてるよね?これ
「まあとにかくその釜を処理する為の手伝いをしてほしいそうじゃ」
「リーナは元神様だし、能力とかでなんとか出来ないの?」
「神じゃなくなった物は能力の使用に制限がかかる。釜を処理するのに適した能力は持ち合わせていないと言っておったわ」
「なるほどねぇ」
リーナにはお世話になってるし、ここで恩を売ってしばらく夜中の話し相手になってもらおうかなー
「分かった‼︎明日の夜中からでいい?」
「構わん。リーナには儂から伝えておく」
「オッケー‼︎じゃあ仕事がんばってねー!」
私は明るくなってきた下界に降りた
♢ ♢ ♢
「今日も進展なしかぁ……」
今日は初芽と由布子さんの2人と共に晩御飯を共にした湊。でも2人に襲いかかったり、結婚を迫ったりすることなく普通に解散して終わった
2月ももう終わりに差し掛かり、残り10ヶ月。着々と私の時間は無くなっていってる
「何とかしないとなぁ……」
って考えるけど、何とかなるならもうすでに実行に移している
良い方法がないかと考えながら私はリーナの元へと向かった
「リーナー?来たよー?」
いつも通り壁をすり抜けての不法侵入で店の中に入った
「……リーナ?」
私の呼びかけに反応が返ってこない。もしかして寝てるのかな?
「もーっ。リーナ?呼び出したのはそっちなんだから、早く出て……ってうわぁっ⁉︎」
リーナは廊下でうつ伏せに倒れていた
「り、リーナ⁉︎」
私は急いでリーナに駆け寄った




