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パンデミック



「リーナ‼︎大丈夫⁉︎リーナ‼︎」



身体を大きく揺らし、頬を3回ペシペシと叩いた。



「うっ……あ……李……華?」

「リーナ‼︎良かった……目が覚めて……」

「……ごめん。迷惑かけたわ」

「別に私は大丈夫だけど……まさかまたあの釜の匂い嗅いだの?」



リーナが倒れているところを見かけるのは、これで3度目ぐらい。そのいずれも釜の匂いにやられたものだった



「ええ」

「ええって……リーナそれで何回も倒れてるのに、なんで学習しないのさ?」

「いや……今回は不可抗力なの」

「不可抗力?」

「……あの部屋には実は、結界が張ってあるの」



またなんか現実離れした能力が出てきた



「リーナさんが張ったんですか?」

「ええ。でもその結界がさっき破れたの」

「結界が⁉︎」

「中に入ってまた結界を張り直したのだけど、戻ってきた瞬間に耐えられなくなって……」

「倒れた……と」

「そうね」



中で倒れてなくて良かった。中で倒れてたら私にリーナを助けることはできなかったと思う



「というか今回、あの釜をどうにか処理するって聞いたんだけど……結界張り直せるんだったら別に放置でもいいんじゃない?無理に危険な目に遭うくらいなら」

「私の前の結界は、まだ私が死神だった頃に張った物だから頑丈だったけど、神としての力が弱くなった今の私が張った結界なんて1週間も持たないわ」

「い、1週間……だけ?」



樹里がリーナはここで何百年と住んでいるって言ってたから、結界は少なくとも100年以上の耐久は見せたということ。それが1週間分まで減ってるということは、相当な弱体化を喰らってる



「結界張るのも疲れるし、どうしてもこの1週間で処理しきりたい」

「でも処理ってどうやって?釜を部屋から出してどっかに捨てるんですか?」

「……李華。私が結界を張ったのは匂いを外に出さないため。もしどこかに釜の中身を捨てたりなんかしたら、この街中に異臭が一瞬で広がるわ」

「……え?」

「そうなればあなたの旦那や妹。彼女候補達も気絶する。この街でパンデミックが起こるでしょうね」



平然と言ってくれるが相当ヤバい。もはやテロ行為だ



「でもちゃんと処理する方法考えたから。安心して」

「あ、ちゃんと考えてあるんだ。良かった良かった。それでどうやって処理するの?」



ニーナはお腹を2回ポンポンと叩いた



「……」

「……」

「え?」

「え?」



私の解釈の仕方が間違ってるのかな?



「もう一回どうやって処理するか聞いてもいいですか?」



またもリーナはお腹をぽんぽんと叩いた。今度は4回分



「……そういえば私用事あるんでした。また来ますねー‼︎」

「能力解除」

「ふぇ?」



なんか不穏なワードが聞こえてきた



「あ、用事あるんでしょ?もう帰ってもいいよ。ただし私からあげた能力2つは返してもらったけど」

「えっ⁉︎」



ただでさえ時間がないのに、ここで能力が減るのは困る‼︎



「ほら早く帰りなよ。用事あるんでしょ?」

「あ、あー……えっと……」



能力を奪われるのは痛い。でもあの釜の中に入ってる物を私は食べたくない。嗅ぐだけで気絶するほどの異臭物。そんな物を口にしたいわけがない



……でも正直、私に選択肢なんてない



「た、食べますから。能力返してください……」

「……分かればよろしい」



私がやらなければこの街でパンデミックが起こる。まさかこの街の命運を私が握ることになるなんて思わなかったなぁ



♢ ♢ ♢



「いい?扉を開けたら結界の壁がある。でも結界には自由に出入り出来るようになってるから。それで一気に釜の中のものを救って飲むのよ‼︎」

「……というかあの釜結構大きいですよね。そもそもあの量飲むのが不可能というか……」

「大丈夫よ。ああみえて結構中身は蒸発して消えてる。私の見立てだと小さいペットボトル分ぐらいしかないわ」



それなら希望は……ほんの少しだけあるかも



「はいスプーン」

「あ、ありがとう。じゃあ……逝ってくる」

「うん。逝ってらっしゃい。私は扉を開けたまま応援してるから」



間違いなくスピード勝負。私は息を大きく吸い込んでから、地獄の部屋に入った



「く、くざぃ……」



息をしてなくても勝手に匂いが鼻に入ってくる。でもまだ耐えられる。私がやらなきゃいけないんだ‼︎



釜の底の液体を掬うために私はスプーンを液体に沈めた



「……っ⁉︎」



私は即座に結界の外に飛び出した



「な、ななななになに⁉︎どうしたの⁉︎」

「す、すすすスプーンがっ‼︎」



私の持っていたはずのスプーンは、先っぽが無くなっていた。しかも明らかに断面は溶けた跡のように……



「金属で出来たスプーンが溶けるような物を私は口にしないといけないの?」

「……ごめん。実は結構反省してる」

「これお礼がないと流石に困る」

「……分かった。ちゃんと考えとくから」

「よし……全然よしじゃないけど」



さっき決まった覚悟が揺らぎに揺らぎまくっている。そりゃあんな物を見てしまったら誰でもそうなる

でも報酬が期待出来るようになったし、頑張るしかないよね‼︎



「これを使いなさい」



リーナから新たなスプーンが手渡された



「これは菌を弾く能力があるスプーン。だから溶けることは無い……と思う」



確定では無いらしい



「分かった」



私はまた大きく息を吸い込み、釜の前まで移動した



恐怖してる暇はない。息が続かなくなってしまうから。だから私は急いでスプーンで掬い取り、口の中に放り込んだ



「た、食べた‼︎」



あ……でも味は美味し……いけどもぉぉ⁉︎



「え?あ、え?な、なんでこっちに向かって飛んでくんの⁉︎」

「おえーーーーーーっ‼︎」



私はリーナに飛びつき、ゲ○を吐いた



「く、くっさぁぁぁあ⁉︎」パタン



私とリーナは気絶した。もちろん……異臭のせいで

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