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我が家のペットは兵器である  作者: 御影冬馬
スクールライフ
54/98

54 トラブル?

「きょーま、きょーま! そろそろ時間なんだけど!」

 と、言いかけた言葉を遮るようにアリアがこちらへと慌てて駆けてきた。


「え、あ……うん」

「ふふ、心配すんな奏。お前が考えてるような事はしてないからさ。それじゃ、また明日なー」

 そう言ってカズキは教室から出て行ってしまう。

 本当に大丈夫なのだろうか。心配するなと言われると余計に気になってしかたない。

「でも、俺が出来ることなんて何もないか」

 仮に助けが必要ならカズキは正直に助力を求めるはずだ。つまり、何事もなかったということだろう。

 無理に訊くのも俺たちの関係だとおかしいしな。頭の片隅にでも覚えておけば何ら問題あるまい。

「聞いてる? ねぇ、きょーまってば!」

 っと、まずはこっちが先決だな。

「なんだよアリア、そんなに慌てて……今日ってそんなに重要な用事あったっけか?」

「何をとぼけてるのさきょーま! あと三十分もしないうちにアレが始まるんだけど!」

 アレ、とはなんだろうか。

「キョーマ、たぶんですが時代劇の放送があるんじゃないでしょうか。たしかアリアはいつもこの時間帯に部屋にこもってたはずですし」

 わけもわからず首を傾げていると、シエルがそんなことを言ってくる。

 まさか、時代劇が見たいだけでそこまで慌てるわけないだろ。

「さすがシエル。うん、今日はね、見逃してた回の再放送があるの! 早く帰らないと間に合わないかも!」

 予想を裏切られた。いや、うん。楽しみにしてたのか、アリアの瞳がいつもよりキラキラとしていた。

「だそうです。帰りましょうか、もう夕方ですものね。リンネさんたちもきっと待っていますよ」

「そうだね。授業も終わったことだし、ここに居てもしょうがないか」

 そわそわしているアリアの顔をもう少し眺めていたいが、あまりのんびりしていると鉄拳制裁をくらいそうである。アリアの場合、文字通り鉄拳なので笑い事で済まないのが難点だ。


「響真ちゃん、またねぇ~」

「明日もお待ちしてます、響真さん。でも、久美子は渡さないからな」

「あらあら。そこまで本気なのね丈治君ってば……えへへ」

 意志の固い丈治さんに久美子さんがまんざらでもなさそうな笑顔を浮かべていた。

「うちとったりー」「ふ、そればざんぞうなのー」

 リリとルルは丸めた紙で作った刀で時代劇ごっこをまだ満喫しているようだ。白熱するのはいいけれど、怪我だけはしないようにな。


 学校を出る前に他の教師たちへ挨拶をすることにした。


「いやぁ、奏くん久しいねぇ」

「あはは、色々ありまして中々時間が取れずすみません」

 ちなみにアリアはシエルと共に先に帰宅することになった。待ちきれないけど一人だと迷子になりそうだということで――あれ、シエルと一緒で平気なんだろうか? 以前彼女と出掛けた時はよくわからない道に連れて行かれたのだが。まぁ、簡易マップ端末を渡してあるし大丈夫かな……信用してるからね?

「おっと、そういえば」

 挨拶を終えた教師の男性が去り際に何かを思い出したかのように振り返る。

「どうしました?」

「いや、なに。大したことではないんだがね、最近ここら……出るらしいよ」

 出る? えっと、それって

「何でも鈴の音を鳴らしながら、黒いマントを翻して――」

「か、帰ります! 暗くなる前に帰りまーすッ!!」

 言い終わる前に逃げた。最後まで聞いたら駄目な話だと直感する。

「あっはっは。相変わらず怖がりだねぇ奏くんは。気をつけて帰るんだよー」

 チラリと後ろを見ると手を振っているのが見えたので俺も振り返しておいた。しっかし、俺がそういうの苦手だと知っているくせにわざわざ言うあたり本当たちが悪いと思う。

「でも、嫌いになれないんだよなぁ。変に面倒見がいいというか。だからこそ、この学校で教師なんてしてるんだと思うけどね」

 そう呟きながら校舎を出て正門をくぐり抜ける頃には辺りはもう薄暗くなっていた。


 バス停に行くが、次のが来るのは一時間後であった。

 時刻表を確認すると利用客のまばらな時間帯は運行本数が絞られているらしい。


「しかたない、歩いて帰るか」

 距離的にはそれほど遠いというわけでもない。来る時はシエルもいたのでバスに乗ってきたが、独りなら脚を使って走った方が速いかもしれん。今は急いでないからのんびり帰るけどさ。


「………………」

 カツ、コツ、と。誰もいない暗闇に己の足音だけが響く。


「ちょっと怖いんだけど」

 いつもなら平気な夜道であるが、先ほど聞いた教師の話を思い出してしまう。

「……後ろには誰もいないか」

 少し進む度に背後を振り返り、怪しい人物がいないかを確認していた。

 気にしすぎだとは思う。でも怖いんだもん!


 ――ッリン――


「え?」

 幻聴だろうか。


 ――――チリン、チャリン――――チチッ――キチッ――


 鈴の音と教師は言っていたが、それとは少し違う音が鼓膜を震わす。


「だ、誰だ!?」

 おっと、これは死亡フラグなセリフだな。

 内心焦りつつも冷静な感情も持ち合わせている。いざとなれば走って逃げればいい。しかし、相手が何者かは確認せざるを得まい。なんたってここは学校の近くなのだ、子供たちに危険が及ぶ可能性がある場合は――


『みーつ、けたぁ』


 だが、俺の考えは浅はかであった。


「ッ!?」

 声に驚き咄嗟に距離を取ろうと四肢に力を込めるが全く動かない。

 義眼の解像度を上げて視線を向けると、腕や脚に何か糸のようなものが巻き付いているのが見えた。

「ちぃッ!! アクセル!」

 引き千切ろうと義体のパワーを上げる。


 ――ギチィッ!! 


「くぅあッ」

 肉眼では見えないほどの絡まった細い糸は切れることもなく、俺の腕と脚をさらに締め付けるだけであった。

 見た目に反して丈夫だな。だったら、


「エクステンド/イグニス・ハート」

『エクステンド/アクセル/ヒート・ナイフ』


 ボボッ!! ヒュィイン! スパーッン!!!!


「よし、これで……!?」

 なんだ、まだ体が動かない。

 疑問に思い地面を見ると、そこには刃が二つに分かれてしまったナイフが落ちていた。

「おいおい、うそだろ」

 千切れないほど硬いならナイフで焼き切ってしまおう。そう思ってイグニスを出したのだが、ヒート・ナイフの方が壊れた。硬いだけじゃなく弾性まであるのかよっ! それに熱による損傷もみられない……もはや打つ手無しである。


『むーだ、だよ。それはキミには壊せない』


 バサリと、マントを翻す音がして顔を上げる。


「やっと、逢えたね――――ブルーノ」


 不意に目の前に現れた黒衣を纏う女は、懐かしい友人の名を呼ぶように俺に語りかけるのだった。



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