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33 埋め込み作業

 花が咲くように開いた肉の内側を見る。鮮やかな赤い色をしていた。

 スパスパと淀みなく切り進むのはシエルの手だ。女の子に体を切り刻まれるこの快感……そんな物ないけどね。結構縦横無尽にいっちゃってるけど、血が噴出すような事はなかった。やっぱり義体だから血管は通ってないんだなぁ。肉に見えるこれも実際には生成された人工物だし、一度生え変わるのを見た事があるので嫌悪感はない。麻酔をしてるから痛みも感じないしね。

「緋華さん、ここ押さえていて下さい。はい、そのままで」

 グチュリッと追加した器具で開かれた場所が閉じないように押さえ込まれる。ふふふ、そんな真剣な目を向けられると照れるぜ。って、あれー。ドリルなんか持ってどうするんだよ!? まさか、穴、開けるの? や、優しくするって言ったじゃない、嘘つき! ……あああ、振動が伝わってくる~。

 ギュリギュリ音を響かせながら骨格に次々と穴が開けられていく。痛覚は無いがひんやりとした空気に触れたせいか少しムズムズしてきた。

「きょ、響真くん――私、もう駄目かもしれない」

 俺が手術の様子を心の中で実況したりして楽しんでいる間、一言も喋らなかった師匠が青い顔をして震えていた。

「何を言っているんですか緋華さん。患者さんに失礼ですよ、気合い入れて作業して下さい。ほらそこ! 角度を変えないでッ! 神経を傷つけでもしたら壊れてしまいますから!!」

「は、ひゃい!? すみません!」

 あっはっは、面白い。師匠には申し訳ないが、頼りない姿を見ていると和むなぁ。まあ、たしかに人体に近しい見た目の肉塊を切り裂いている光景はグロテスクだと俺も思う。慣れていなければ師匠のように気分が悪くなるのも頷ける話だ。シエルは集中しているからか、それとも先生の手腕を多数目撃しているからなのか平然と手を動かしているけどな。

「このコネクタはここで合っていますか? 緋華さん、これは何処に着けたらいいんです?」

「き、君は平気なのかシエルくん。こ、こここんな血みどろの中身を見てしまって……」

「あなたは何を言っているのでしょうか。私は曲りなりにも医師の端くれですからねぇ、先生と共に周った戦場ではもっと凄惨な光景が広がっていましたよ。血に塗れ、それでも生きようと必死にもがく人々を私と先生は何人、何十人、それこそ数え切れないほど救ってきました。その中には当然ながら義体を着けた人もいましたので、慣れているというだけです。骨格に触れる際は慎重にならざるを得ませんが、義体には血管が通っていませんので生身の肉体を切るよりは比較的簡単な作業になりますね。少しくらい切り過ぎても出血多量で死ぬなんてことはないですし、そもそも傷が残らないので視野確保のために余分に切り開くこともありますからねぇ。キョーマの義体は人間に似通っているので、血管もあるのかと覚悟していたのですが杞憂だったようです。凄まじく再生速度が速いので施術が大変ではありますけどね。まあ、そこは私の腕を持ってすれば――あ、切り過ぎました。うん、直った、続けましょう。えっと、ここに配線を通して……ああ、配置してやれば勝手に癒着しますね。これなら簡単です、どんどんいきましょう」

 具合の悪そうな師匠に話しかけながらも手を止めずに作業を続けるシエル。だが、時々ドジってメスがあらぬ方向に滑ってしまうのはご愛嬌だろう。見てるこっちがハラハラする手捌きだ、しかし、致命的なミスはしない。

「ふへへ。キョーマ、どうです、私すごいでしょう?」

 にへらと笑いながらそんな事を訊いてくる。どうでもいいが血を顔に滴らせた状態で笑われると怖ろしいのでやめてほしいな。もしかしなくても肉を切って興奮していらっしゃりますよね? おいおい、シエルにそんな趣味があったなんて知りたくなかったぞ……。それとも俺のことを切るの限定とか? 顔を赤らめながらそんなに恍惚の表情をされると悪い気はしな――

「響真くん、大丈夫か? 麻酔が頭にも回っておかしくなったりしてないか? 義体用の結構強力なやつだから心配なのだが」

 なんと。じゃあさっきまで見ていたシエルの顔も俺が考え出した幻だったというのか!

「大丈夫です。ちょっと錯乱していましたけど、治りました。ありえないですよね、シエルがあんな嬉しそうに俺の体を弄ぶなんて」

 そうだよな、何を考えていたんだ俺は。真面目なシエルがそんな……あれ、これって現実なの?

「残念なお知らせになってしまうが……シエルくんのあの顔は本物だよ。私も研究に没頭していると同じような顔になっている時があるらしいから文句は言えないけどね」

「趣味は人それぞれですからね……俺の体で満足することを祈りましょう」

「その言い方だと何か違くはないかね。はう、ごめんなさいシエルくん! 無駄話してました、謝りますから足を踏まないでー!?」

 俺が現在載せられている手術台からは見えないが、彼女たちの足元では壮絶な争いが繰り広げられているのだろう。

「あっ、すみません! 熱中しすぎて踏んでしまいましたか。ですが、話をしているのは構いませんよ? その方がキョーマの精神も落ち着くでしょうし、緋華さんがキチンと自分の作業をしてくれるなら文句はありません」

 わざとじゃなかったらしい。それもそうか、シエルがそんないじわるをするわけがなかったな。どうかしてたぜ、疑ってすまなかった。

「私の手、必要なのかこれ?」

 師匠が疑問に思うのも無理はないだろう。実際、彼女がしているのは器具の固定だけであって、メスを握ったり患部に触れたりといった直接的な行為はさせてもらえていなかった。俺から見てもシエル一人で完結している気がする、むしろ邪魔になっているような……?

 だが、シエルはそんな師匠の言葉を真っ向から否定する。

「はい、緋華さんがいなければこの手術は成功しません。キョーマにはマキナ・ハートが在るせいか傷に対する再生力が異常でして……現在あなたに抑えていただいている器具なくしては、ホルダーの取り付けは不可能でしょうね。その器具だって力加減を間違えれば皮膚を引き裂いたり神経を傷つけたりして後遺症が残る事だってあるんですよ? 初めて扱ったにしては中々上手いじゃないですか、さすがはキョーマに師匠と尊敬されるだけはありますねぇ」

「むむむ、シエルくんは人使いが上手いな。それなら頑張ろうじゃないか、響真くんのために!」

 シエルは褒めて伸ばす教育方針らしい。師匠ってば調子に乗らなきゃいいけど。靴の一件、忘れちゃいないよ俺は。

「――あ、そこから切断して腕が飛ぶようにするのとかどうだい? ロケットパーンチ! みたいな。……ひぅ」

 ほら、そんな馬鹿なこと言い出すからシエルが鬼のようなオーラを纏ってしまったじゃないか。

「あまり冗談が過ぎると、足、踏み潰しますよ?」

「ごめんなさい、もう勝手は言いません。だからやめッ、グリグリしないでーーー!?」

 なんだろこの二人。仲が良いのか悪いのかわからんなマジで。


 師匠の方が年上なんだろうに、あまり年齢の差を感じさせない二人の茶番を見ていると、おかしくて自然と笑いが込み上げてくる。


「まったく、笑っていないで助けてくれたっていいじゃないか響真くん」

 俺が笑っているのを見た師匠が目に涙を浮かべながら文句を言ってくる。あれ? 踏まれても痛くないと思ってたんだけど。師匠の履いている靴、実験室で使う安全靴ですよね。甲の部分に金属製のプレートが入った頑丈なやつだった気が。たぶんシエルもそれに気付いていてやってたんだと思うけど。

「おっと、これはすみませんでした。ですが、師匠が俺以外と談笑しているのなんて初めて見たもので、つい」

 この研究室に通うようになってからというもの、師匠以外の人間をここで目撃したことはない。仕事関係の人が来ている様子もないみたいだし……本当に孤独な生活を送っているのだろうな。

「ふむ。私がここに住んでいるのを知っているのは、ごく一部の人間だけだからな。来客が少ないのだから響真くんが知らないのも……というのが建前で、本当は単純にボッチだから友達がいないんだよ。言わせんな恥ずかしい」

「いつの世も研究者とは孤独な存在ですからねぇ。先生も以前、友達がいなくて寂しいと言っていましたよ。なんだか緋華さんとは色々似ている部分が多くて懐かしいです。私でよければ友達になりましょうか? 緋華さんが嫌じゃないならの話ですけど」

 師匠がポロリとこぼした本音にシエルが提案を投げかけてくる。ほら師匠、チャンスですよ! 今なら落とせるって!

「哀れみの目で私を見るんじゃないよ。この年になってまで友達なんて欲しいと思わない」

「じゃあキョーマは私の物ですね! 私と彼は友達ですし、緋華さんが諦めるというなら好都合です」

 おや、どうしてそうなるのかな? 友達になったつもりはないけど。だってシエルはもう家族みたいなものだし、今更ランクの劣る友達ポジションになんて降格させたりはしないさ。

「ぐぬぬ、君は本当に……はぁ、わかったよ。友達になろう、いや、なって下さい。意地を張って後悔するのはもうしたくない。それにシエルくんとなら気も合うようだし……」

 気が合うというのが一番の理由だろうな。友達なんてものは自分と似通った性格をしている方が一緒にいて居心地が良いもんだし。正反対の思想を持っていても、それはそれで楽しくはあるけどさ。よく漫画とかで宿敵と親友になったりするのは後者の理由だよな、最後にどちらかが命を落とすというのがオチではあるけど。

「はい、それでは、これからよろしくです」

「うん、よろしく頼む」

 握手なんて交わしちゃってまぁ、なんて美しい光景なのでしょう。ついに師匠にも友達が出来たのか。なんて感慨深いんだろう、馬鹿にするわけじゃないけど嬉しいよ俺は。弟子として誇らしいね、この調子でもっと増えると良いのだけれど。そうすればこの研究室に引きこもることも無くなって、晴れて自宅警備員を卒業出来るはず。でも、そんな簡単にはいかないんだろうなぁ。


「ところで響真くん、腕の様子はどうだい? もう動かせそうか?」

 そう言われ自分の腕を見ると、手術は既に終わっていた。痛みも無かったので話に夢中ですっかり忘れていたよ。シエルは会話をしながらも手を休めることなく作業をしてくれていたみたいだけど。


 両腕の内側、体の方に来る所だな。そこには三つの円が二重になって残っていた。用意されたホルダーは計六つ、つまりは両腕に三箇所ずつ埋め込まれたのだろう。円になっている線は薄く見える程度で注意して観察しなければ今まで通りと変わり映えはしない。


「……? なんか感覚がないんですけど」

 なんだろうな。動かすことは出来そうなのだが、力を入れてもそれが何処かへ消えていってしまっているような――


パワー()イグジット()ターミナル()の認証を開始……失敗。再認証を試みます……コンプリート。接続が完了しました、起動待機状態に移行します』


 アナウンスが聴こえた後、消失していた力の循環が開始された。一瞬まだ麻酔が効いているせいだろうと思ったが違ったみたいだ。どうにも普段俺たちが使うPETとはシステムが異なるために繋がるまでに時間がかかっただけで運用には問題がないらしい。わりと融通の利くシステムで良かった、下手したら動かない可能性もあったのだし。俺の作った異世界ポーチの概念を応用したせいで齟齬(そご)が起こったんだろう、科学では説明のつかない技術だからなアレは。それを改良して使えるようにしてしまう師匠は本当に尊敬に値する人だ、撫でておこう。なでなで、わしゃわしゃ。


「すみません、気のせいでした。ちゃんと普通に動くし触り心地も良いです。感度良好ってやつですね」

 ちなみに、グローブの方はいつの間にか外されていた。なるほど、装着したままだと排熱がそっちへ行ってしまうからホルダーが機能しているかの確認も出来ないもんな。

「う、うむ。それは何よりだ。が、シエルくんの視線が怖いのでそのへんでやめてくれるとありがたい。通常使用に問題はないのはわかったから」

 手を激しく動かしても気だるさを感じることはない。過剰生成されている排熱もホルダー内に装填されているブラストカートリッジにちゃんと問題なく入っているようだな、不具合がないようで一安心だ。

「はい、それでこのカートリッジはどれくらい稼動時間があるのでしょうか? 一つあたりの収納限界を知っておかないと、いきなり行動不能になる事もあるでしょうし」

 合計六発の装填がされているが、日常生活で動くだけでも排熱が生まれる現状では不安になる数である。小型化したことで確実に容量は減っているはずだし、もしかしたら毎時間入れ替えが必要かもなぁ。面倒だな、就寝中とかどうするんだろう。

「えっと、普通に人間的な動きをしている限りは一個で一月程度はいけるんじゃないでしょうか? 緋華さんの書いた設計図を読んで計算するとですけどね。実際は多少前後するかもしれませんが、問題ないでしょう」

 俺の疑問に師匠ではなくシエルが代わりに答えてくれた。何故かって? 師匠ってば俺の言葉を聞いた途端に首を傾げてキョトンとした表情をしているんだもの。パーツを作るのは頑張ったが、それを使う事までは考えていなかったのだろうな。わりかし重要な情報だと思うんだけど、そこまで求めるのは酷ってもんだ。作ってくれただけで十分役目は果たしている。

「すまない、響真くん。小型化のことばかりに考えが向いてしまっていて、容量の件については忘れていたよ。許しておくれ」

「気にしなくても良いですよ。それにシエルが問題ないと言っているんです、だったら大丈夫かと。彼女の事は信頼しているので間違いはないと思います」

 そうだよね、とシエルに視線を向けるが目を逸らされてしまった。むむ、この照れ屋さんめ。

「あっはっは。君がそう言うならそうなんだろう。ちなみに全力稼動した場合はどうなるのかわかるかい?」

「キョーマはまったく、まったくもう……はい? ああ、フルパワーでしたら一個で一分が限界ではないでしょうか。義体四つ分に対してマキナ・ハートから供給される電力と排熱はパワーに比例しますからねぇ。もっとも、六個使い切る前にキョーマの胴体が悲鳴を上げそうな気もします。実のところ、彼の義体は並みの機巧人形に使われている物より出力だけなら上なのです。その分脆いので注意しないと破損しちゃいますが……排熱問題が起きた時に心臓の再手術も考えたのですが、その場合は四肢もノーマルの市販品に変える必要があるため見送りました。せっかく馴染んでいる体を切り離すのはもったいないですし」

 四肢の義体が特別製のために心臓だけ入れ替えると出力不足で動かなくなっちゃうのか。セットで使うの前提みたいだんな、俺の心臓と義体って。それにこの年齢で四肢全ての移植し直しとなると拒絶反応が出る可能性が非常に高い。俺があの時助かったのは幼かったのも一つの要因だ。若いとPETに対しての適合率が高くなる傾向があるらしいと資料で読んだことがある。

「こう言っちゃなんだが、難儀な体をしているなぁ響真くんは。これからは幸せな人生を送ってほしいものだ」

「あはは。たしかに大変でしたけど、生きているから満足ですよ。師匠に出逢わなかったら、こうして笑いあうことも出来なかったですし……ありがとうございます。感謝していますよ、緋華さん」

「私にはお礼はないのですか? 手術、頑張ったのですけど」

「シエルもありがとう。君には感謝してもしきれない。なんでも欲しい物を言ってくれ、可能な限り用意させてもらう」

「ふへへ……じゃあ、キョーマが欲しいです」

「はい?」

 いきなり何を言ってるんだシエルは。俺が欲しいって……つまり、そういうこと?

「駄目だよ。響真くんは私が貰うんだから!」

「えー。だったら二人で半分こにしましょう」

 そんなニヤニヤしながらメスをチラつかせるのやめてッ!? というか、何処から出したんだよそれ……手術に使ったやつは既に処分してあるのに。服の内側に何本も隠し持ってたりして――そんなわけないか。


 しばらく雑談をした後、師匠がある提案をしてくる。

「さて、それじゃあ実験をしようか」

「実験って、何を壊すんですか?」

「おい、響真くん。私に対してのイメージが酷くないか? 別に実験でいつも爆発事故を起こしているわけではないんだぞ。時々は成功する物だってちゃんとあるんだから」

 それって、時々以外は失敗してるって言ってるのと同じなんだけど。爆発しないにしても、今日の靴みたいに吹き飛んで行ったりする物を見た事は何回かあるのだ。伊達にPETの共同開発をしているわけではない。危険な場合は多少強引にでも中止させないと、取り返しのつかない結末が待っている。

「ははは、冗談ですってば。このタイミングで言い出すってことは、コレの実験をするってのくらいわかりますよ」

 そう言って机の上に投げ捨てられていたグローブを手に取る。

「そうですね、必要になった時に使えないでは意味がありませんから、早速試してみましょう」

「うん、だったらソレを持って外に出ようか。理論上はブラストカートリッジ一個に満杯の熱でこの施設が消し飛ぶから――寝床が無くなるのは勘弁してくれ」

 さらっと怖ろしいこと言ったぞ師匠のやつ。なに、そんな超兵器なのこのグローブって?


 まだそんなには排熱が溜まっていないので危険性はないが、一応大事を取って施設の裏手にある空き地へと移動する。

 空き地とは言っても、ここも俺が購入した土地なので多少なら壊しても問題はないだろう。大岩がゴロゴロ並ぶ開拓されていない、かつて山だった場所だ。現在は草の一本も生えていないので火事になったりもしない。


 グローブを手に装着する。

 一度使ったことのあるデバイスだからかアナウンスが流れる様子はない。


「えっと、まずは排出っと」

 腕のホルダー部分を下にして意識を向けるとキュリキュリという音がした後、ジャコンッという排出音と共にブラストカートリッジが落ちてくる。最初のはホルダーの蓋部分の開閉に際して鳴った音だろうな。普段は内部に異物が侵入したりしないように密閉されているみたいだ。これなら水中に浸かっても安心かな、風呂とか心配だったんだよね。

 カートリッジを落下させないように慌ててキャッチする。これ自体は触っても熱くないし、どちらかと言えば金属特有のヒンヤリ感さえあるな。


「それで、これを装填して――」

 グローブの甲側に付いているホルダーへとカートリッジを入れる。なんか銃みたいな仕組みだなこれって。薬莢の中身である火薬は自前で用意出来るわけだし、威力によっては本当に兵器になるかもしれない。


『外部デバイスへブラストカートリッジの装填を確認。現在のカートリッジ容量は20パーセントです。体内からの排熱供給を開始。21、22、23……』


 おおぉっと!? ここでアナウンスが入るのか。使い方がいまいちわからなかったが、この声に従っていれば良いんだろうか?


「準備が出来たら言ってくれー、私たちは避難するからー」


「はーい! わかりましたー!」


 ちなみに師匠とシエルは俺の数メートル後方に隠れてもらっている。

 目標物は目の前にある岩塊、ビーストと同じくらいの大きさをした仮想敵だ。


『許容量の30パーセントに到達しました。竜の息吹、発射可能です』


 どうやらカートリッジの容量が三割から撃てる仕組みのようだ。使う量によって威力も変わるのだろうけど、今回は的も大きいし三割程度なら全て放出してしまって良いだろう。

 そう思って装填済みのグローブが着けられた右手を岩塊へと向ける。


『ターゲットロックオン。アシストを開始……補正完了』


 いよいよだな。


「師匠~、準備完了でーす!」

「了解した~…………いいぞ、撃ってくれー!」


 声をかけた後、二人がさらに後方へと移動したのを確認した俺は前に視線を戻す。


「それじゃ――撃ちますッ!!」


『ドラゴンブレス、ファイヤ』


 瞬間、閃光が奔った。



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