第6話:壊れた世界と、届かなかった願い
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第6話では、事故の直後、冷たい病院の現実と、受け入れがたい絶望に向き合う宮乃の姿を描きます。
愛する人を失った悲しみの底で、彼女が目撃するものとは――。
救急車のサイレンのけたたましい音が、耳元でいつまでも鳴り響いていた。
揺れる救急車の中、必死に心臓マッサージを続ける救急隊員の緊迫した声と、モニターの電子音が不気味に響き渡る。
「しっかりしてください! 目を開けてください!」
宮乃は奇跡的に、健太がその全身で自分を庇ってくれたおかげで、身体のあちこちに擦り傷や打撲はあるものの命に別状はなく、お腹の赤ちゃんも奇跡的に無事だと病院の医師から告げられていた。
しかし、そんなことは宮乃にとって何の慰めにもならなかった。
目の前で、愛する健太が生死の境をさまよっているのだから。
病院に到着すると、すぐにストレッチャーで健太が手術室へと慌ただしく運ばれていった。
両親たちも顔面蒼白でその後を追い、病院の白い待合室は重苦しい沈黙と、押し殺したすすり泣く声に包まれた。
どれほどの時間が経っただろうか。
病院の時計の針はすでに深夜を大きく回っていた。
手術室の上の赤いランプがパッと消え、疲労の色を隠せない医師が重い足取りでドアから出てきた。
宮乃はすがりつくように立ち上がり、すがるような目で医師の顔を見つめた。
「せんせい……健太くんは……? 助かったんですよね? 生きてますよね?」
医師は申し訳なさそうに目を伏せ、ゆっくりと、しかし残酷に首を横に振った。
「……ご家族の皆様、最善を尽くしましたが、頭部への強打による損傷があまりにも激しく、心肺停止の状態から……戻ってきませんでした。申し訳ありません」
その言葉を聞いた瞬間、世界からすべての色が音もなく消え去った。
「……え?」
声が出なかった。
全身の力が一気に抜け落ち、宮乃はその場の冷たい床に崩れ落ちた。
母親が泣き叫びながら宮乃の体を必死に抱きしめるが、宮乃の耳にはもう何も届かない。
嘘だ、そんなはずがない。
数時間前まで、あのファミレスで一緒に笑い合い、生まれてくる赤ちゃんの名前を考えていたじゃないか。
「ずっと一緒になろう」って、さっき約束したばかりじゃないか。
霊安室の冷たいベッドに横たわった健太の顔は、驚くほど穏やかだった。
まるで、ただ深い眠りについているだけのように。
冷たくなったその大きな手を両手で握りしめると、そこにはいつもあるはずの温もりはもう二度と戻らなかった。
「健太くん……やだよ、一人にしないでよ……。私と、お腹の赤ちゃんはどうなるの……? 一緒に育てるって言ったじゃない……!」
誰も答えてはくれない。
冷たい病院の天井の下、宮乃は声を枯らし、ただただ泣き叫ぶことしかできなかった。
あの日の思いがけない事故がすべての日常を奪い去り、二人の眩しい未来を無残に打ち砕いたのだ。
愛する人を守るために、彼は自分の命を差し出した。
その残酷な事実だけが、どうしようもない重みとなって、宮乃の胸を引き裂き続けていた。
第6話をお読みいただきありがとうございます。
目を覚まさない健太、そして霊安室での冷たくなった彼との別れ。
宮乃の絶望を思うと、言葉が出なくなりますね。
愛する人を失い、すべてを失ったかのように見える宮乃ですが、彼女のお腹の中には、彼が命懸けで守り抜いた「命」が確かに息づいています。
次回、雨の中執り行われる卒業式のシーンへ続きます。




