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卒業式の隣に君はいない 。愛する人を庇って逝った恋人と、私のお腹に残された命~  作者: 凪塩 未来


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第5話:突然の暗転と、身を挺した選択

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。

第5話は、本作の核心であり、すべての日常を奪い去る「あの瞬間」を描きます。

身を挺して愛する人を守った健太の選択と、突然訪れる悲劇のエピソードです。

――ガシャアァァンッ!!


耳をつんざくような激しい金属の衝突音と、店舗の大きな窓ガラスが粉々に砕け散るすさまじい音が店内に響き渡った。


何が起きたのか、脳で状況を理解するのに数秒の遅れがあった。


お店の駐車スペースにバックで駐車しようとしていた一台の軽トラック。


その運転手が、高齢者か、あるいはパニックに陥ったのか、アクセルとブレーキを踏み間違えたまま、猛スピードの車体を店舗の大きなガラス窓へと突っ込んできたのだ。


「危ない――っ!!」


誰かの叫び声が、遠くの出来事のように聞こえた。


窓際の席に座っていた宮乃と健太のすぐ目の前に、巨大な鉄の塊と、無数の鋭利なガラスの破片が猛烈な勢いで迫ってくる。


逃げるための時間は、コンマ数秒も残されていなかった。


本能的な恐怖で身体がすくみ、宮乃はその場で目をつむり、頭を両手で抱え込むことしかできなかった。


死の恐怖が全身の血液を凍りつかせる。


その瞬間。


健太は、自分の身を顧みることも、怖がることもせず、反射的に飛び出した。


「宮乃っ……!!」


健太は自分の身体を完全に盾にするようにして、座席から宮乃を力強く抱きしめ、そのまま硬い床へと覆い被さるように押し倒した。


守るべきものはただ一つ、目の前にいる愛する女性と、そのお腹の中で静かに息づく新しい命。


その一心だけで、健太は自分の全体重をかけて宮乃を頑丈に覆い隠した。


次の瞬間、ドゴッという凄まじい衝撃が店内に響き渡り、頑丈なテーブルや椅子がまるでおもちゃのようにめちゃくちゃに吹き飛んだ。


舞い散る粉塵と、ガラスの破片の嵐。


両親たちの悲鳴と、店内の人々の阿鼻叫喚の声が入り交じり、地獄のような光景が広がった。


宮乃は健太の腕の中にしっかりと、隙間なく抱きしめられていた。


頭上から降り注ぐガラスの破片や、襲いかかった衝撃の大部分を、健太がその背中と両腕で完全に受け止めてくれていた。


「け……健太くん……?」


凄まじい衝撃が収まり、不気味な静寂が戻ってきた世界の中で、宮乃は震える声で彼に呼びかけた。


しかし、返事はない。


いつもなら「大丈夫か、宮乃? 怪我はない?」と優しく微笑んでくれるはずの彼は、ピクリとも動かなかった。


「嘘……嘘でしょ? 健太くん、返事してよ……!」


宮乃が恐怖に震えながら恐る恐る顔を上げると、健太の背中や頭部から、鮮やかな赤い血がとめどなく流れ出し、冷たい白い床をみるみるうちに染めていくのが見えた。


信じたくない、信じられるはずもない光景が目の前に広がっていた。


健太は、宮乃の体を必死に守り抱きしめたまま、ぐったりと意識を失っていた。


「いやあああああっ!! 健太くん、しっかりして!! 目を開けてよ、嘘だと言ってよ!!」


両親たちが血相を変えて駆け寄り、救急車を呼ぶ必死の叫び声が遠くで響いていた。


けれど、宮乃の耳にはもう何も届かない。


ただ、目の前でどんどん冷たくなっていく健太の温もりを必死に感じ取ろうと、彼の制服の袖を血まみれのまま握りしめることしかできなかった。

第5話をお読みいただきありがとうございました。

あまりに突然の事故、そして宮乃と子どもを守るために自分の体を盾にした健太の最期の選択。

書いている私自身も、涙が止まらない回でした。

日常が一瞬で崩れ去る絶望の中、生き残った宮乃はどうなってしまうのか。

次回、第6話をお届けします。

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