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卒業式の隣に君はいない 。愛する人を庇って逝った恋人と、私のお腹に残された命~  作者: 凪塩 未来


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第4話:病院の帰り道と、ファミレスでの団らん

いつも応援ありがとうございます!

第4話では、小さな命の確かな成長を感じる病院の帰り道と、何気ない日常の幸せが描かれます。

誰もがこの平穏が続くことを信じて疑わなかった、運命の直前のひとコマです。

卒業式の三日前の午後。


雲一つない澄み切った青空の下、宮乃と健太は小さな命の成長と経過を確認するため、二人で連れ立って近くの産婦人科医院を訪れていた。


診察室のベッドに横たわり、ひんやりとしたジェルを塗られたお腹の上に小さな機械があてられる。


すると、スピーカーから部屋中に響き渡る音がした。


――ドコ、ドコ、ドコ、ドコ……。


それは信じられないほど力強く、まるで生きる喜びを全身で表現しているかのような、新しい命の心音だった。


モニターの画面に映る、米粒よりも少し大きくなった愛おしい影を、目を細めて愛おしそうに見つめる医師の優しい笑顔に、宮乃と健太は顔を見合わせてホッと大きな安堵の息を漏らした。


「順調ですね。赤ちゃんの心音もしっかりしていて、とっても元気ですよ。お母さんも体調をしっかり整えて、無理をしないように過ごしてくださいね」


「はい、ありがとうございます!」二人で声を揃えてお辞儀をした。


病院の自動ドアをくぐり抜けると、春の柔らかくて温かい風が二人を優しく包み込んだ。


お腹の膨らみはまだ外見からはほとんど分からないけれど、宮乃の中には確実に、愛しい命がしっかりと息づいている。


健太はその小さな命が愛おしくてたまらないといった様子で、ずっと宮乃の手をしっかりと握り締めて歩いていた。


「ねえ、病院のあとにさ、お腹減ったね。何か美味しいものでも食べて帰ろうか?」


健太が嬉しそうに提案すると、宮乃も満面の笑みでうなずいた。


ちょうど病院の近くには、高校生の頃からテスト勉強の息抜きや放課後のデートでよく利用していたお馴染みのファミリーレストランがあった。


他愛のないおしゃべりを何時間も楽しんだ、思い出の場所だ。


お店に入り、窓際の明るく日の差す席に腰を下ろした。


ちょうどその日は両家の両親も近くで用事があったため、「じゃあ、あとでその店に合流して、みんなでお茶でも飲もうか」という話になっており、両親たちも少し遅れて同じ店にやってくることになっていた。


メニューを広げながら、二人は楽しそうに声を弾ませる。


「私はやっぱり、大好きなハンバーグランチにしようかな。あ、でも、デザートの季節限定パフェもすごく美味しそう……!」


「フフ、赤ちゃんのためにもしっかり栄養のあるものを食べなきゃダメだよ。あ、そうだ、産まれたら名前は男の子なら『大輝(だいき)』、女の子なら『結衣(ゆい)』なんてどうかなって、昨日の夜ノートにこっそり書き留めてたんだ」


「それ、すごく素敵な名前! 私もいいなって思ってたところなの」


他愛のない、どこにでもある日常の会話。


特別なことは何一つない、けれど二者択一の不安定な未来ではなく、眩しいほどに確かな希望に満ち溢れた日常。


窓の外では、春の陽気の中を人々が穏やかな足取りで行き交っていた。


やがて、両親たちも店に到着し、「お腹の子は順調だったか?」と笑顔で席に加わろうとした、その瞬間だった。


世界が音を立てて引き裂かれたのは。

第4話をお読みいただきありがとうございます。

赤ちゃんの元気な心音を聞き、未来の幸せを語り合う宮乃と健太の姿が、のちの展開を思うとどうしても切なく胸に刺さります。

平穏な日常のすぐ隣に潜む、あまりにも残酷な影――。

次話、いよいよこの物語の最大の悲劇が訪れます。覚悟を持って、お読みいただければ幸いです。

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