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卒業式の隣に君はいない 。愛する人を庇って逝った恋人と、私のお腹に残された命~  作者: 凪塩 未来


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第2話:新しい命の予感と、戸惑いの朝

前話をお読みいただき、たくさんのブクマや温かい応援をありがとうございます!

第2話では、卒業を間近に控えた宮乃に訪れる突然の戸惑いと、恋人・健太の誠実な強さが描かれます。

二人の未来を揺るがす「新しい命」の始まりを、ぜひ見届けてください。

卒業式まであと二週間と迫ったある日の朝、宮乃の身体に今まで感じたことのない奇妙な異変が訪れていた。


目覚まし時計の音とともにベッドから起き上がろうとした瞬間、頭がぐらりと揺れるような激しいめまいと、胃のあたりから込み上げる耐え難い吐き気に襲われたのだ。


最初は、連日の受験勉強や卒業前の慌ただしさによる心身の疲労、あるいはちょっとした風邪の引き始めだと思い込もうとした。


しかし、日を追うごとにその症状は強くなり、胸の張りや、規則正しく刻まれていたはずの生理周期の明らかな遅れが、無視できない事実として宮乃に迫ってきた。


(もしかして……、嘘……だよね?)


その日の放課後、宮乃は誰にも言えない秘密を抱えたまま、駅前のドラッグストアへと足を運んだ。


明るく無機質な蛍光灯が照らし出す店内の奥で、震える手で小さなプラスチックの検査薬の箱をカゴに入れ、レジへと向かった。


薬局の小さな個室トイレの中。


心臓の鼓動がうるさいほどに大きく響き、手のひらは冷や汗でびっしょりと濡れていた。


深呼吸を一つして、恐る恐る結果を確認する。


そこに浮かび上がっていたのは、残酷なほどハッキリとした、くっきりと濃い二本の線だった。


頭の中が真っ白になり、世界から音が消え去った。


私たちはまだ高校生で、これからそれぞれの進路へ歩み出そうとしている段階なのに。


自分の力でまだ何も成し遂げていない未熟な私たちが、親になるなんてことができるのだろうか。


どうしようもない不安と、底知れぬ恐怖が津波のように押し寄せてきて、宮乃はその場でしばらく身動き一つできなかった。


足元から崩れ落ちてしまいそうな絶望感の中で、ただ涙だけがポロポロとこぼれ落ちた。


放課後、いつものように待ち合わせをしている駅前の小さな公園。


夕暮れの冷たい冬の空気の中、宮乃はベンチの端に小さく体を丸めるようにして座り、うつむいたまま自分の膝を抱えていた。


やがて、遠くから歩いてくる健太の姿が見えた。


健太は宮乃の姿を見つけると、いつものように優しい笑顔を浮かべて近づいてきたが、すぐに宮乃の顔色が血の気のないほど青白く、震えていることに気づいて足を止めた。


「宮乃、どうしたの……? 顔色がすごく悪いよ。どこか痛いの? 風邪でも引いた?」


「健太くん……あのね、私……」


震える声で、検査薬の結果を告げた。


一瞬、健太の動きがピタリと止まった。


頭の中で言葉を処理しきれていないように、健太は大きく目を見開いたまま固まっていた。


その表情を見た瞬間、宮乃の胸の不安はピークに達し、堰を切ったように大粒の涙が溢れ出した。


「ごめんなさい、私、どうしたらいいか分かなくて……。私たち、まだ学生なのに、こんなの……っ」


しかし、健太はほんの一瞬フリーズしただけで、すぐにその震える宮乃の肩を両手でしっかりと抱き寄せ、自分の胸に強く引きずり込んだ。


その温もりは驚くほど力強く、そして少しも揺لがなかった。


「謝らないで、宮乃。怖かったよね、一人でこんな重い思いをさせて、本当にごめん」


健太の声はわずかに震えていたが、不思議とまっすぐで、迷いは一切なかった。


彼はゆっくりと宮乃の顔を上げさせると、涙に濡れた冷たい頬をその大きな手で優しく、愛おしそうに拭ってくれた。


「俺は……すごく嬉しいよ。もちろん、これからのことや、両親たちにどう説明して謝るべきか、現実的に考えなきゃいけない山はいくつもある。でも、俺たちの赤ちゃんなんだよ。こんなに愛しい存在が、俺たちのところに生まれてきてくれたんだ。絶対に、僕が守るから。何があっても、二人とこの子を幸せにするって、今ここで誓うよ」


その力強い言葉を聞いた瞬間、宮乃をすっぽりと覆っていた不安の暗雲が、サーッと晴れていくような気がした。


まだ見ぬ小さな命の存在への戸惑いと恐怖は消えなかったが、それを守ろうとする健太の揺るぎない覚悟が、宮乃の心をしっかりと支えてくれた。


私たちは親になるんだという実感が、じわじわと胸の奥底から温かい波となって広がっていった。


その夜、二人はそれぞれの両親にすべてを打ち明けることを決意した。


怒られる覚悟、勘当される覚悟をして臨んだ話し合いだったが、二人の真剣な眼差しと、命を大切に育て上げたいという強い意志を受け止め、両家の親たちは深いため息をついたのち、静かにうなずいてくれた。


「自分たちの選んだ道に責任を持とうとするなら、私たち大人が全力で支えるしかないわね」と、宮乃の母親がハンカチで目頭を押さえてくれたとき、二人は心の底から救われた思いがした。


学校側も、卒業式間近という特殊な事情や、二人の真摯な姿勢を考慮し、表沙汰にして退学処分などにすることはせず、内密に卒業を認め、温かく見守る方針を取ってくれた。


世界中が自分たちの味方をしてくれているような、そんな錯覚にとらわれるほど、二人の未来は確かに光り輝いていた。

第2話いかがでしたでしょうか。

突然の妊娠という戸惑いの中、少しも怯むことなく「僕が守る」と誓った健太の姿に、胸が熱くなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

若さゆえの不安と、それを超える強い愛。

第3話では、いよいよこの重大な事実を両家の両親に打ち明ける、緊張の顔合わせへと進みます。

次回もよろしくお願いします!

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