シーズン2第8話:突然の知らせと、走り出した足
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第8話では、瞬が学校を辞めて遠くへ引っ越してしまうという突然の知らせに直面した宮乃の動揺と、抑えきれない感情の波を描きます。
交錯する想いの中で、彼女が選ぶ行動とは――。
「――瞬が、学校を辞めて、遠くへ引っ越すって……?」
父親の口から告げられたその言葉は、静まり返ったリビングの中で鉛のように重く響いた。
宮乃は持っていたお茶のカップを取り落としそうになり、慌ててテーブルに置いた。
心臓が激しく波打ち、手のひらが冷や汗でジワリと濡れていくのが分かる。
「あ、ああ……。なんでも、あの事故の件があってから、ご近所の目とかもあって居づらくなったらしい。それに、瞬のやつ、ずっと責任を感じて学校でも塞ぎ込んでたからな……。家族で遠くの親戚を頼って、ここを出て行くんだとさ。今週末にも、もう引っ越すらしいぞ」
父親は複雑な表情を浮かべながら、それ以上は何も言わずにリビングを去っていった。
(引っ越す……? ここから、いなくなる……?)
頭の中で、その事実がうまく噛み合わなかった。
あんなに激しく拒絶した。
「二度と私の前に現れないで」と、自分の口であれほど冷たく言い放ったはずだった。
なのに、いざ「もう二度と会えなくなる」「この街からいなくなる」と聞かされた瞬間、宮乃の胸の奥底で、言い知れぬざわめきと、激しい焦りが渦を巻いた。
許したわけじゃない。
健太を奪われた恨みが消えたわけでも、あの事故がなかったことになるわけでもない。
それでも――。
(私に謝るために、全部を背負い込もうとして……あんなボロボロになりながら、何度も私のところに来て……)
あの夜、玄関のコンクリートに額を擦り付けながら「お前のことも、結衣ちゃんも守る」と必死に叫んだ瞬の姿が、脳裏に生々しく蘇ってきた。
あれは、ただの自己満足の謝罪なんかじゃなかった。
彼なりに、自分の犯した十字架と向き合い、壊れそうな心で必死にもがいていた姿だったのだと、今の宮乃なら痛いほど分かってしまった。
それなのに、自分は自分の怒りや悲しみをぶつけるだけぶつけて、彼の存在を切り捨てようとした。
(もし……このまま彼が遠くに行ってしまったら、私は……)
胸を締め付けるような不安が、宮乃の足を勝手に動かしていた。
ソファですやすやと眠っている結衣をそっと見つめ、宮乃はぐっと息を吸い込むと、上着を羽織るやいなや玄関へと駆け出した。
夕暮れが迫り、薄暗くなり始めた春の空の下へ、宮乃は振り返ることもせずに飛び出した。
足がもつれそうになりながらも、宮乃は息を切らして瞬の家へと急ぐ。
(間に合って……! まだ、間に合ってよ……!)
胸の中で何度もそう叫びながら、桜並木の続く坂道を、宮乃はただひたすらに走り続けた。
第8話をお読みいただきありがとうございました。
瞬の引っ越しの知らせを聞き、いてももたまらず走り出した宮乃。
拒絶していたはずなのに、彼女の心が大きく揺れ動きます。
二人が再び対峙する時、どのような言葉が交わされるのか――。
次回、第9話もお楽しみに!




