シーズン2第7話:すれ違う母の背中と、明かされる過去
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第7話では、瞬の母親との思いがけない再会を経て、宮乃の心に去来する過去の記憶と、さらに明かされる事故の裏側の真実を描きます。
許せない感情の裏で、少しずつ紐解かれていく因縁の糸に注目してください。
「宮乃ちゃん……! 本当に、本当にごめんね……!」
絞り出すような瞬の母親の謝罪の声が、住宅街の静かな空気の中にいつまでもこだましていように感じられた。
深々と頭を下げたまま、肩を震わせて泣いている老いた女性の姿は、憎むべき「加害者の家族」というよりも、ただ我が子が犯した取り返しのつかない罪に押しつぶされそうな、一人の痛々しい母親そのものだった。
宮乃は、握りしめていた郵便受けのフタからそっと手を離し、立ち尽くした。
頭の中では、「ここにいてはいけない」「早く立ち去らなければならない」と警報が鳴り響いているのに、足がまるで地面に縫い付けられたように動かない。
(どうして……どうして、私たちがこんな思いをしなければならないの……?)
健太を失ったのは自分たちだ。
これからの長い未来を、父親のいない孤独の中で娘と生きると決意したのは自分だ。
それなのに、目の前で泣いているこの人もまた、あの事故の日から止まった時間の中で、終わりなき十字架を背負い続けている。
宮乃は震える息を大きく吸い込み、どうにか声を絞り出した。
「……顔を、上げてください」
その掠れた声にハッとしたように、瞬の母親はゆっくりと顔を上げた。
涙でぐしゃぐしゃになったその顔を見た瞬間、宮乃の胸の奥が締め付けられるように痛んだ。
「お気持ちは……手紙で、十分に伝わりました。だから……これ以上、謝らないでください。私にとっても、昔からよく知っているおばちゃんだから……これ以上、お互いに辛くなるのは、嫌です」
「宮乃ちゃん……」
「洋服、ありがとうございました。大切に使います。……失礼します」
宮乃はそれ以上言葉を続けることができず、頭を軽く下げると、すぐにベビーカーの向きを変えて早足でその場を立ち去った。
背後から「本当に……本当にごめんね……」と絞り出すような母親のすがり声が聞こえたが、宮乃は振り返ることを許さなかった。
家に戻り、リビングのソファに倒れ込むように腰を下ろすと、張り詰めていた糸が切れたように全身の力が一気に抜け落ちた。
ベビーカーですやすやと眠っている結衣の寝顔を見つめながら、宮乃はふと、事故が起きる少し前の記憶を思い出していた。
あの事故の直前、瞬と街ですれ違った日のことだ。
高校の帰り道、見慣れない制服を着て少し疲れた顔をしていた瞬に、宮乃は「最近見かけないけど、元気だった?」と声をかけた。
瞬はどこか言いたげな、けれど言えないような複雑な笑みを浮かべ、「……まあ、色々あってさ。宮乃も、健太と仲良くやれよ」とだけ言い残して足早に去っていった。
今思えば、あの頃からすでに、瞬の家では祖父の足の衰えや、運転を巡る家族間のトラブルの兆候があったのかもしれない。
「もっと早く気づいていれば」「あの時、何か話を聞いてあげられていれば」――そんな後悔の念が、瞬の心をも蝕んでいたことを、宮乃は今なら少しだけ理解できる気がした。
(だけど……だからって、許せるわけじゃない……!)
宮乃は頭を振るようにして、その感傷を無理やり断ち切った。
健太の命は戻らない。奪われた時間は絶対に返ってこない。
その夜、宮乃がいつものように仏壇の前に座り、健太の写真に今日の出来事を語りかけていたときのことだった。
ガチャリと、静まり返ったリビングに玄関の鍵が開く音が響いた。
この時間に戻ってくるのは、宮乃の父親か、あるいは母親しかなかった。
「お母さん、遅かったね……って、あれ?」
キッチンの方から現れたのは、母親ではなく、血の気の引いた青白い顔をした父親だった。
父親は手に一枚のチラシ、いや、地域の回覧板のようなものを持っていたが、その手が激しく震えていた。
「お父さん、どうしたの……? そんなに青い顔して」
宮乃が不安そうに尋ねると、父親は重い口を開き、信じられない言葉を告げた。
「宮乃……さっき、近所の人から聞いたんだが……。瞬のやつが……学校を辞めて、遠くへ引っ越す準備をしているらしい」
「……え……?」
その言葉を聞いた瞬間、宮乃の心臓が激しく波打ち、思考が完全に停止した。
第7話をお読みいただきありがとうございました。
瞬の母親との切ない再会のあと、さらに告げられた「瞬の転校と引っ越し」という衝撃の事実。
宮乃の心に再び大きな波紋が広がります。
二人の関係はここで完全に途切れてしまうのか――。
次回、第8話もお楽しみに!




