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卒業式の隣に君はいない 。愛する人を庇って逝った恋人と、私のお腹に残された命~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2第4話:許されない言葉と、あふれ出た怒り

いつもお読みいただき、たくさんの応援をありがとうございます!

第4話では、瞬の放った「健太の代わりに」という言葉が、傷ついた宮乃の心にどんな波紋を広げるのか。

悲しみの果てに抑えきれなくなり、激しく感情を爆発させる宮乃の姿を描きます。

玄関先のコンクリートに額を擦り付け、震える声で告げられたその言葉は、静まり返った夜の空気の中で痛いほどハッキリと響いた。


――「健太の代わりに、俺が守るよ……! お前のことも、お腹の子も、俺が一生かけて絶対に守る!」


その瞬間。


宮乃の中で、張り詰めていた糸がプツリと音を立てて切れた。


悲しみでも、絶望でもない。

これまでに感じたことのない、マグマのようなドス黒い怒りが、頭のてっぺんまで一気に突き上げてきた。


「……今、なんて言ったの?」


宮乃の絞り出すような声は、氷のように冷たく、そして震えていた。


瞬はまだ地面に頭をつけたまま、おずおずと顔をわずかに上げ、潤んだ目で宮乃を見上げた。


「お、俺は……本気で、お前たちを……」


「ふざけないでっ……!!」


ドシャッ! と激しい音を立てて、宮乃は玄関のドアを内側から勢いよく蹴飛ばすように全開にした。


あまりの剣幕に、瞬は息を呑んで体を固まらせた。


宮乃の頬には大粒の涙がとめどなく伝っていたが、その瞳に宿っていたのは、恐怖でも弱さでもなく、燃え盛るような激しい怒りの炎だった。


「『健太の代わりに』って、何なの……!? そんなこと、誰が頼んだっていうのよ……!」


「宮乃……っ」


「ふざけんじゃないよ……! 健太くんの代わりになんて、誰ができるわけないでしょ! あの人の代わりが務まる人間なんて、この世に一人だっていやしないんだよ……!!」


宮乃の叫び声は、夜の住宅街に突き刺さるように響き渡った。

室内の奥からは、突然の大声に驚いたのか、結衣の小さく怯えた泣き声が聞こえてきたが、今の宮乃にはそれをあやす余裕すらなかった。

胸の奥に溜まり続けていたすべての感情が、制御不能な濁流となってあふれ出していた。


「あなたが……あなたのおじいちゃんが、あの車を暴走させて、私たちの未来を、健太くんの命を奪ったんじゃない! 私たちがどんな思いでここまで生きてきたか、あなたに何が分かるっていうの……!?」


「……わかってる、そんなこと……!」


「わかってないよ! 分かってたら、そんな口が裂けても『代わり』なんて軽々しく言えるわけないでしょ……!」


宮乃は自分の胸を何度も激しく叩き、歯を食いしばりながら、声を枯らして泣き叫んだ。


「健太くんが生きていれば、今頃私たちは笑い合って、家族三人で普通の幸せな毎日を送っていたはずなの! それを全部奪っておいて……何が『守る』だ、何が『代わり』だ……っ! そんなこと言われたって、嬉しくなんかない、迷惑よ……! 顔も見たくない、声も聞きたくない、二度と私の前に現れないでって言ったよね……!?」


瞬は、宮乃の全身全霊の拒絶と怒りの言葉を、ただただ真っ直ぐに浴びていた。


反論の言葉など一つもなかった。

自分が口にした「代わりに守る」という言葉が、どれほど無神経で、彼女の最も触れてはならない傷口を抉るものだったのか。

言われて当然の罵詈雑言だった。


それでも瞬は、ガタガタと震える手で地面にしがみつき、涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、掠れた声を絞り出した。


「……ごめん……ごめん、宮乃……。頭では分かってたんだ……健太の代わりになんて、なれるわけないってことくらい、最初から分かってた……!」


「だったら、なんでそんなこと言うのよ……!」


「だけど……!」


瞬は叫んだ。

その声は、恐怖に震えながらも、どうしようもない絶望と必死の決意が入り交じったものだった。


「お前が一人でボロボロになりながら、誰にも頼れずに泣いている姿を遠くで見てるしかなかったんだ……! 祖父があんなことをしたせいで、お前がこんなに苦しんでるのに、俺がのうのうと普通の生活を送ってるなんて耐えられなかった……! 許されないのは分かってる、だけど、俺にできる償いがこれしかないなら、俺はどんなに憎まれても、お前のそばにいたいんだ……!」


「ふざけ……ないで……」


宮乃はその場に膝から崩れ落ち、玄関の床に両手をついて、もう声にならない嗚咽をもらしながら泣き崩れた。


許したいわけじゃない。

けれど、許さないと叫んでも、過去は戻ってこない。


目の前で泣きじゃくるかつての幼馴染の姿は、あの日の事故が引き裂いた「取り返したくても取り返せない現実」そのものだった。


夜の冷たい風が二人の間を吹き抜け、行き場のない絶望と哀しみが、ただ静かに夜空へと溶けていくだけだった。

第4話をお読みいただきありがとうございました。

「健太の代わりに守る」という瞬の言葉は、宮乃の傷ついた心にとって救いどころか、何よりも残酷な凶器となってしまいました。

激しくぶつかり合う二人の感情の行方は――。

次回、第5話もお楽しみに!

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