シーズン2第3話:引き裂かれた絆と、捨て身の誓い
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第3話では、宮乃に冷たく拒絶された瞬が、絶望の中で絞り出す「ある決意」と、許されないと分かっていても踏み出してしまう男の意地を描きます。
二人のすれ違う感情がさらに激しく交錯するエピソードです。
宮乃がその場を去った後も、瞬はアスファルトの冷たい地面に突っ伏したまま、しばらく動くことができなかった。
「二度と、話しかけないで」
あの冷ややかで、すべてを拒絶するような宮乃の瞳と声が、頭の中で何度も何度もこだましては、鋭いナイフのように瞬の胸を切り裂いた。
当然だ、と頭の片隅では分かっていた。
自分の祖父が犯した罪の重さを思えば、被害者である宮乃からどんなに罵られ、軽蔑されようと文句を言う資格などない。
幼馴染として過ごした楽しい日々の思い出さえも、あの事故のせいで全て泥にまみれ、取り返しのつかないものになってしまったのだから。
しかし、それでもなお、瞬の胸の奥底から消え去らなかったのは、激しい自責の念と、どうしようもない焦燥感だった。
(俺が……俺がもっと早く勇気を出して謝っていれば……。いや、そんな言い訳が何になる。あの時、怯えて逃げていた俺に、宮乃の痛みの何が分かる……!)
ボロボロと涙を流し、自分の無力さに打ちひしがれながら、瞬は固く拳を握りしめた。
あの日から、宮乃がどれほど一人で泣き、どれほどの恐怖と孤独の中で赤ん坊を産み、育ててきたのか。
想像するだけでも胸が引き裂かれそうになるのに、自分はただ「怖いから」という理由で、彼女の苦しみから目を背け、安全な場所で息を潜めていただけだったのだ。
「……これで終わりになんて、できるわけないだろ……」
絞り出すような瞬の呟きは、誰に聞かれることもなく、春の冷たい風にかき消されていった。
数日後の夕方。
宮乃は自宅のリビングで、ようやく寝付いた結衣の寝顔を見つめながら、ぐったりとソファに腰を下ろしていた。
あの日の瞬との出会いが脳裏から離れず、ここ数日はずっと心がざわつき、夜も満足に眠れていなかった。
加害者の家族と知ってしまった以上、もう二度と関わってはいけない。頭ではそう分かっているのに、瞬のあの血の気の引いた顔や、泣き叫ぶような謝罪の姿を思い出すと、複雑な痛みが胸を締め付ける。
(私はどうしたかったんだろう……。あんな風に突き放して、正しかったのかな……)
そんな葛藤に沈んでいたとき、玄関のチャイムがピンポーンと静かに鳴り響いた。
こんな時間に誰だろう。両親のどちらかか、あるいは宅配便だろうか。
宮乃は少し身構えながら玄関へと向かい、ドアの覗き穴をそっと覗いた。
そこに立っていたのは、他でもない――峰内瞬だった。
心臓がドクリと大きく跳ね上がった。
なぜここにいるのか。あんなに「もう来ないで」と言ったのに。
戸惑いと、再び押し寄せる怒りと恐怖で、宮乃の足がすくんだ。
しかし、ドアを開けないままでいるわけにもいかない。
宮乃は呼吸を整え、意を決してガチャリと玄関の鍵を開け、ドアを少しだけ押し開けた。
「……どうして来たの? ここには来ないでって、言ったはずだけど」
ドアの隙間から覗く宮乃の表情は、冷たく硬くこわばっていた。
その姿を見た瞬間、瞬はわずかに息を呑み、そして次の瞬間、宮乃が予想もしなかった行動に出た。
瞬は持っていたバッグを地面に落とすと、そのまま玄関先のコンクリートのタタキに、ドンッと激しい音を立てて両膝をつき、さらにその頭を床にべったりと擦り付けたのだ。
いわゆる、完全な土下座の姿勢だった。
「た、頼む……! 話だけでも聞いてくれ、宮乃……!」
「なっ……! 何してるの、近所の人に見られたらどうするの……っ! 起きてよ、瞬!」
突然のことに動揺した宮乃が声を荒らげると、瞬は顔を上げるどころか、さらに強く頭を地面に押し付け、震える声で叫んだ。
「起きない! このままじゃ俺は一生、自分を許せない! お前が何を言おうと、俺はここに来る!」
「……だから、私に関わらないでって言ってるでしょ! あなたの顔を見るだけで、あの日のことが思い出されて……息が詰まりそうになるの! それでも、ここにいたいの……?」
宮乃の瞳から、悔し涙がポロポロとこぼれ落ちた。
その悲痛な叫びを聞いても、瞬は顔を上げず、ただ震えながら、絞り出すようにこう言った。
「……分かってる。俺の顔を見るのも嫌だろ、俺の声を聞くのも吐きそうになるくらい苦しいだろ。それでもいい。俺をどれだけ恨んでも、軽蔑してくれても構わない。だけど……」
瞬はガタガタと全身を震わせながら、地面に額を擦り付けたまま、決死の覚悟を込めた言葉を紡ぎ出した。
「健太の代わりに、俺が守るよ……! お前のことも、お腹の子――結衣ちゃんも、俺が一生かけて絶対に守る! だから、そんなに一人で全部を抱え込んで泣かないでくれ……!」
その言葉を聞いた瞬間。
宮乃の胸の奥底で、ずっと蓋をされていた感情のダムが、音を立てて完全に決壊した。
第3話をお読みいただきありがとうございました。
許されないと分かっていながらも、宮乃の元へ赴き、土下座をして「自分が守る」と誓う瞬。
その言葉は傷ついた宮乃にとって、決して救いにはならず――。
次回、瞬の「健太の代わりに」という言葉が、宮乃の逆鱗に触れ、激しい感情の衝突を引き起こします。第4話もお楽しみに!




