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卒業式の隣に君はいない 。愛する人を庇って逝った恋人と、私のお腹に残された命~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2第2話:許せない記憶と、震える謝罪

前話をお読みいただき、たくさんの応援をありがとうございます!


第2話では、突然の再会によって蘇るあの日の記憶と、幼馴染である瞬が抱えてきた長い間の苦悩がさらに深く描かれます。

許したい、けれど許せない――二人の間に流れる重い沈黙と葛藤の物語をお楽しみください。

春の冷たい風が、住宅街の舗道に散り始めた桜の花びらをくるくると巻き上げていく。


目の前で地面に両手をつき、ガタガタと全身を震わせている瞬の姿は、かつて学校の帰り道で他愛のない冗談を言い合っていた幼馴染のそれとはあまりにもかけ離れていた。


「ごめん……本当に、ごめん……!」


瞬の口から漏れるのは、掠れた謝罪の言葉だけだった。


あの事故の後、瞬の祖父は免許を返納し、警察や裁判の調べを経てひっそりと家に引きこもるようになった。


だが、世間の目や「人を殺めてしまった」という十字架は、加害者の家族である瞬たちにも重くのしかかった。


特に瞬は、被害者である宮乃と同じ学校に通い、昔からの知り合いであったがゆえに、どう顔を合わせればいいのか、どう謝罪の言葉を切り出せばいいのかが分からず、ただ恐怖と罪悪感に押しつぶされる毎日を送っていた。


卒業式の日、遠くから黒い喪章をつけた宮乃の姿を見たとき、瞬はその場で足がすくみ、近づくことすらできなかった自分をずっと責め続けていたのだ。


「ずっと……ずっと謝りたかった。でも、怖くて……お前の顔を見る資格なんてないって分かってたのに、俺は……!」


瞬の頬を伝う大粒の涙が、アスファルトの地面にポタポタと染み込んでいく。


その姿を見下ろしながら、宮乃の胸の奥底で、ドス黒く冷たい感情が渦を巻いて激しく暴れ出した。


(怖い……? あなたが怖かっただなんて、そんなの私の絶望に比べたら……!)


健太が血まみれになって自分を庇ったあの瞬間の恐怖。


霊安室で冷たくなった彼の手を握りしめて泣き叫んだ夜。


そして、父親のいない世界でたった一人、不安と戦いながら結衣を育ててきたこの一年の果てしない孤独。


瞬が味わった「謝りに行けない恐怖」など、宮乃が背負ってきた地獄のような日々に比べれば、ほんのちっぽけなものに思えてしまった。


宮乃は震える両手でベビーカーの持ち手を強く握りしめ、冷え切った声でこう言い放った。


「謝らないでよ……」


そのあまりにも低く、冷たい声に、瞬はハッとして顔を上げた。


潤んだ瞳が、恐る恐る宮乃の顔を見上げる。


「瞬ちゃん、おじいちゃんがしたことは、もう消えないよ。健太くんの命は戻ってこない。私たちの未来も、あの日に全部奪われたの。……あなたがどんなに苦しかったって言ったって、私には関係ないよ」


「宮乃……」


「ねえ……」


宮乃の目から、堰を切ったように涙があふれ出た。


それは悲しみというよりも、行き場のない怒りと、どうしようもない絶望が混ざり合った熱いものだった。


「瞬ちゃんは悪くないから、謝らなくていいよ。おじいちゃんの罪は、おじいちゃんが背負うべきだもん。……だから、もう謝らないで。そして――二度と、私の前に現れないで。二度と、話しかけないで」


その言葉は、幼馴染という過去の絆を断ち切るには、あまりにも残酷で冷酷な宣告だった。


瞬はショックで息を呑み、血の気が引いた顔のまま、かろうじて口を開いた。


「そ、そんな……そんなこと、言わないでくれ……っ! 俺にできることなら、何でもするから……!」


「何でもできるって言うなら、あの日に時間を戻してよ! 健太くんを返してよ!」


宮乃の叫び声が、閑静な住宅街の空に虚しく響き渡った。


ベビーカーの中で、その大きな声に驚いたのか、結衣が小さく「ふぇっ」と泣き声をあげた。


はっと我に返った宮乃は、急いでベビーカーを包み込むようにしながら、瞬に背中を向けた。


「……もう、関わらないで」


それだけ言い残すと、宮乃は振り返ることもせず、小走りでその場を立ち去った。


取り残された瞬は、その場に崩れ落ちたまま、声を殺して地面に突っ伏し、どうしようもない後悔の涙に暮れることしかできなかった。

第2話をお読みいただきありがとうございました。

幼馴染としての過去がありながらも、事故の加害者の家族という現実に直面し、冷たく突き放してしまう宮乃。

瞬の謝罪は届かず、二人の溝はさらに深まってしまいました。

この絶望的なすれ違いの果てに、瞬が口にする「ある言葉」とは――。

次回、第3話もお楽しみに!

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