シーズン2第1話:明かされた真実と、許されない謝罪
皆様、前作『卒業式の隣に君はいない』への温かい応援、本当にありがとうございました!
今回スタートする「シーズン2」では、事故の加害者を巡るさらなるドラマと、切ない人間模様を描いていきます。
前話の設定に修正を加え、幼馴染である峰内瞬、そして事故を引き起こした彼の祖父をめぐる新たな物語としてお届けします。全15話、どうぞ最後までお付き合いください。
春の温かな陽光が、街の桜並木をふわりと包み込む季節。
あの日、健太を失った絶望の淵から這い上がり、宮乃は愛娘の結衣を抱いて新しい一歩を踏み出していた。
季節は巡り、結衣はもうすぐ歩き始めようとするほどにスクスクと成長し、宮乃の生活もようやく穏やかなルーティンを取り戻しつつあった。
両家の両親たちの温かな見守りもあり、笑顔を取り戻した宮乃だったが、それでも心の奥底には、あの日のファミレスの光景が消えない傷跡として残り続けていた。
――あの事故を起こした運転手は、いったいどんな人間だったのだろう。
裁判や警察の調書によって、加害者が近所に住む高齢男性であり、アクセルとブレーキを踏み間違えたパニックによる過失だったことは頭では理解していた。
しかし、宮乃の心の中でその人物像はぼやけたままであり、直接顔を合わせたことは一度もなかった。
ある日の午後。
宮乃は結衣をベビーカーに乗せ、近くのスーパーへと買い出しに出かけていた。
のどかな住宅街の角を曲がったとき、前方に見覚えのある古い平屋の家が見えた。
そこは、宮乃の幼馴染であり、昔からよく一緒に遊んだり学校の帰り道を共にした同級生・峰内瞬の家だった。
高校を卒業してからも時折顔を合わせれば「よっ」と声を掛け合うような、気心の知れた幼馴染だ。
(あ、瞬だ……)
家の前で、使い古された軽トラックの荷台を拭いている瞬の背中が見えた。
宮乃はふと足を止め、いつも通りの軽い調子で声をかけようとした。
「瞬、こんにちは。お久しぶり――」
だが、その言葉は宮乃の喉の途中で完全に凍りついた。
宮乃の声に気づき、作業の手を止めてゆっくりと振り返った瞬の顔を見た瞬間、宮乃の脳裏で全てのピースが音を立てて噛み合った。
瞬の顔に浮かんでいたのは、計り知れない罪悪感と、怯えたような、そして直視できないものを見るような苦悶に満ちた表情だった。
そして、その背後にあるトラックの車種。荷台の傷。
あの日のニュースで断片的に伝えられた加害者の特徴、そしてこの地区。
(……まさか)
頭の中が真っ白になり、血の気がサーッと引いていくのが分かった。
あの日のファミレスに突っ込み、健太の命を奪い、自分たちの未来を粉々に引き裂いたあの軽トラックの運転手。
それは、瞬のおじいちゃんだったのだ。
宮乃の足元が大きくグラリと揺れ、ベビーカーの持ち手を握る手が激しく震え出した。
「み……宮乃……」
瞬は宮乃の姿を認めると、ガタガタと全身を震わせ、持っていた雑巾を地面に落とした。
その顔は恐怖と申し訳なさで歪み、一歩、また一歩と宮乃に近づこうとしたが、まるで重い鎖にでも繋がれているかのようにその場で膝から崩れ落ちた。
当時、事故を起こしたのは瞬の祖父だった。
しかし、瞬自身も「加害者の家族」として、そして宮乃の幼馴染として、どう向き合えばいいのかが分からず、ずっと恐怖と罪悪感のあまり宮乃の前に姿を見せることができずにいたのだ。
「瞬……どうして……? どうして、おじいちゃんがあの時……っ」
宮乃の声は絞り出すような掠れ声になり、涙が堰を切ったようにあふれ出した。
信じたくなかった。大好きな幼馴染の家族が、自分の愛する人の命を奪った人間だったなんて。
世界が再び音を立てて崩れ去るような、そんな悪夢の中に放り出された気分だった。
瞬は地面に両手をつき、ポロポロと大粒の涙を流しながら、絞り出すような声でこう言った。
「ごめん……本当に、ごめん……! あの時、祖父が起こした事故で、健太を……お前たちを……!」
――当時、瞬は怖くて仕方がなかった。世間の目を恐れ、被害者である宮乃の前にどうやって謝りに行けばいいのか分からず、ただ逃げるように月日を過ごしてしまった。
その怯えと後悔が、今の彼のボロボロの姿にすべて表れていた。
宮乃は震える足で一歩前に出ると、あふれ出る涙を拭うこともせず、すがるような、拒絶するような複雑な眼差しで瞬を見下ろした。
シーズン2、第1話をお読みいただきありがとうございます!
平和な日常の裏で明かされた、幼馴染・瞬との残酷な因縁。
事故を起こしたのは瞬の祖父であり、瞬自身もまた、罪悪感と恐怖からずっと宮乃の前に出られずに苦しんでいた――。
動き出した歯車の中で、二人はどのような対峙を迎えるのか。
次回、さらに深く切り込む第2話をお楽しみに!




