そして武闘大会
武闘大会に向けて、リゼットとイルゼの鍛錬は、より厳しいものになっていった。
「ぜぇ、ぜぇ...... 何でここまでやらなくてはいけないの......
本当にきついから止めたいんですけどぉ......」
「だめよ。もう申し込んでしまったし、最低でもベスト8ぐらいには、入りたいの。王国中に名前が知れ渡るように。」
「無理...... この間まで剣も握ったことのない素人なんですよ。
いくら実際に戦うのは、リゼット様でも、私の体のほうが付いていきません!!!」
「だから体が付いていけるように鍛錬してるんじゃないの。泣き言は後にして。死にたくないでしょ?」
「そうやってすぐ死ぬって脅すんだから。」
「脅しじゃないのよ。あなた私に毒を盛ったの、誰かに唆されてやったでしょう? 毒薬の入手経路を万が一喋ったりしないように、そのうち口封じの刺客が来るかもしれないわ。そのための用心よ。おわかり?」
「え!?そんなことになっているんですか?私、どうしたら?......」
「そのための鍛錬よ。鍛錬あるのみ。命が惜しかったら、励みなさい。」
その日以降、イルゼは弱音を吐かなくなった。
そうこうするうちに武闘大会1回戦の日が来た。
「ドキドキして、心臓が口から飛び出そうです。......」
「大丈夫よ。私が動くから、あなたはよく見ていなさい。
間違っても、気絶だけはしてはだめよ。」
「第一回戦、初め!」
開始の合図とともに、リゼットは相手の間合いに飛び込んだ。
――速い。
観客席がどよめく。
相手が振り上げた剣を振り下ろしたときには、そこにリゼットの姿はなかった。
素早く踏み込み、背後に回っていた。
リゼットの放った横薙ぎの一閃。
切っ先が、相手の喉元でピタリと止められていた。
「勝ったなんて、信じられない!」
「ほら鍛えた体なら私の動きに付いて来られるでしょう?
でも2回戦に向けて気を引き締めていきましょう!」
「......まだやるんですね?......」
2回戦が始まった。
相手の剣士は、鋭い突きを放ってきた。
リゼットはそれを半身を引いてかわす。
同時に剣で相手の剣を受け流し、軌道を逸らす。
相手の体勢が崩れた隙に、懐へ潜り込み、相手の胸に柄頭を思い切り叩き込んだ。
やがて対戦相手は、グフッという声とともに、地面へ崩れ落ちた。
「本当にリゼット様はお強いんですね。感動しました。」
「あなたも頑張ったから、私が全力で戦っても耐えられる体になったのよ。
自分の筋肉にもっと自信を持って!」
「それは、ちょっと......」
そして3回戦の日が来た。
観客の興奮も一段と増してきたようである。
今度の相手は、3回戦まで進んだだけあってなかなか強い。
二度,三度と互いの剣がぶつかり合い、火花を散らす。
剣を受けるたび、リゼットの腕がしびれる。
相手が力任せに振り下ろした剣を正面から受けずに受け流す。
相手が体勢を崩した隙に、軸足を払う。
バランスを崩した相手は地面に倒れ、リゼットの剣が胸元に突き付けられた。
会場には、観客の大歓声が響き渡った。
「なんか、また勝ってしまいましたね。どこまで勝ち進むのでしょう?」
「......次の相手は強いわよ。なにしろアレックス王子の護衛だもの。
王国最強と言っても良いわ。」
「負ける気しかしません。......」
「最初から諦めては駄目よ。勝つ気で行きましょう!」




