武闘大会を目指して
リゼットによるイルゼの鍛錬は、すっかり日課になっていた。
イルゼは、筋肉痛にも慣れ、はじめはショックで涙目だったが、腹筋に浮かび上がったシックスパックも今ではようやく直視できるようになった。
「あなた、剣の稽古に付き合ってくれそうな人に当てはない?」
ある日リゼットに尋ねられた。
「......えーと、確か母方のいとこが騎士団に入団したと思いますけど。」
「それよ!その人に連絡して、剣の相手をしてくれるよう頼みなさい!」
「えっ。......でもそんなに親しくないですし......」
「それだからいいの!親しかったら中身があなたじゃないって、すぐばれちゃうわ。」
「なんといって頼もう?いい口実ないですか?」
「そのくらい自分で考えなさい。」
そもそも剣の稽古をしたいのは、リゼット様なんだから!
稽古を頼む口実くらい考えてくれてもいいじゃない!
でも口答えすると、いいの?処刑されても?とか言って脅してくるし......
結局、一生懸命考えた剣術の稽古の理由は、最近は、侍女も王族を守れるよう、剣術を身につける方針だからという訳の分からないものでした。
いとこが物事を深く考えないタイプで良かった。
数か月後、イルゼは、いとこを負かすくらい強くなってしまった。
いとこも騎士として鍛錬を積んでいたが、王宮の護衛騎士たちと日々剣を交えていたリゼットにはかなわない。
ブランクこそあったものの実戦の勘は、稽古を重ねるうちに戻っていった。
いとこはイルゼの強さを不思議がっていたが、体はイルゼでも、剣技は祖国で鍛えたリゼットのものなのだから。
騎士団の先輩たちも近頃は相手をしてくれる。
侍女を辞めて、女性騎士にならないかと、勧誘もされるようになった。
イルゼの中の人、リゼットはとても気分がいい。
剣を振るうのは、祖国にいた時以来だ。
ちょっとブランクがあるが、このまま稽古を続ければもっと強くなれるだろう。
「参った......なんでこんなに強いんだ。ただの侍女が。」
「最近の侍女は、剣術もたしなみませんと。でもまだまだですわ。」
「そんな侍女、見たことない......」
「最近は、そうなんです!」
イルゼは、今夜も体を返してもらい、ずっと疑問に思っていたことをリゼットに尋ねる。
「一体、どこまで強くなったら気が済むんですか?
このままだと、全身ムキムキで、筋肉ゴリラになっちゃいますよ!
今だって、力こぶができるくらい筋肉がついて、その内着られる服がなくなっちゃいます!」
「小耳にはさんだんだけど、もうじき武闘大会があるんですって。
それに出場するわよー!いい成績が取れるようがんばりましょうね!!」
「生きていたころは王女だからって出場できなかったのに、死んでから夢がかなうなんて、ちょっと複雑な気分だわ。」
「えぇーっ!! 出るの!? 私が!! なんで.....」
リゼットにはいろいろ振り回されて慣れてきたけれど、久々にイルゼは叫んでしまった。




