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傾いた樽と真珠 ~おっさんマーケターが美少女に転生、気がついたらそこは場末の酒場兼娼館だった~  作者: 華雪β
第11章 新しい店と噂

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第47話 新しい店

移転が終わった。


二週間、店を閉めた。作業の間、常連から何度か声をかけられた。「どこへ行くんだ」「次はいつ開く」。場所が変わること、新しくなること、それだけ告げてその場を切り抜けた。


今日が開業初日だった。


---


朝、フィナと並んで新しい店へ向かった。


「今日からですね」フィナが言った。


「そうだね」


少し間があった。


「うまくいきますかね」


わからない、と正直に思った。でも——


「やってみないとね」


フィナが少し笑った。「そうですね」


---


新しい建物は、以前の場所から少し歩いたところにある。通りに面した一角で、市場に近い。


着くと、すでにイルゼがいた。カウンターの端に立って、広間を見渡していた。こちらに気づいて、目が合った。


何も言わなかった。腹の決まった目だった。


「開けるよ」


「はい」


奥に個室が二つある。小さなテーブルと椅子が二脚ずつ。人に聞かれたくない話がある客は、こういう場所を求めている。以前の店には、こういう場所がなかった。テクラが広間の椅子を並べ直した。フィナが昼の準備を始めた。


---


昼を過ぎたころ、クレメントが来た。


一人ではなかった。旅装の男を連れていた。目が細く、荷の重さを体で知っている感じがした。


「場所を借りますよ」


「どうぞ」


奥の個室に二人を案内した。扉を引いて、クレメントが入った。商人が続いた。


扉が、閉まった。


---


広間に戻った。


テクラが旅の客に薬草茶を運んでいた。フィナが常連に何かを説明していた——薬草茶の種類だろうか、手振りを交えていた。何かが足りなければ、誰かが動いていた。


それを確認したくて、しばらく端に立って見ていた。


---


しばらくして、奥の扉が開いた。


商人が出てきた。顔が、来たときと違った。少し軽くなっていた。

何かが、決まったのだと思った。


クレメントが続いて出てきた。


「少しいいですか」


商人が店を出るのを待って、クレメントが言った。「イルゼさんも」


三人でカウンターの端に立った。


「改善点は追って話します」クレメントが言った。「それより——次に連れてきたい相手がいる。来月、時間を作れますか」


「はい」


それだけだった。


クレメントが店を出た。イルゼと目が合った。何も言わなかった。


---


夜、客が引いた。


帰り道、フィナと並んで歩いた。


「うまくいきましたね」フィナが言った。


朝「うまくいきますかね」と言っていた子が、今は「うまくいきましたね」と言っている。


「うまくいった」


個室の扉が閉まった瞬間を、思い出した。あの一言を。


動いた。新しい仕組みが、今日初めて動いた。


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