第29話 まだ、やることがある
夕刻が過ぎても、客が引かなかった。
広間のざわめきが、壁に溜まっていた。卓という卓に人がいた。声が、重なり合っていた。
隅のほうで、吟遊詩人が歌っていた。カルロではない。旅の途中で立ち寄った、名も知らない男だった。弦の音が低く、広間に流れた。
それでも、声が落ちなかった。笑う人間は笑い、語る人間は語った。音楽があっても、邪魔をしなかった。
これだ、と思った。
広間の端から、商人の一人が目をあげた。目が合った。男が笑った。気づいたら、笑い返していた。
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夜が深まっていた。それでも、客が残っていた。
フィナがいた場所に、若い女中が立っていた。
客に何か言われて、ふと笑った。思っていたより、やわらかい顔をする子だった。
——だが、それきりだった。俺の目は、すぐにフィナのいない場所のほうへ戻っていた。
フィナの行方は、まだわからない。
もう一度、会えるなら——謝りたかった。あの言葉だけは、取り消したかった。
そして、あの声は、もう聞こえない。また、眠っているのだろう。
でも、心の奥のほうに、熱があった。俺を叩き起こした、あの熱が。
まだ、やることがある。
それだけが、あった。
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> "I've learned that people will forget what you said, people will forget what you did, but people will never forget how you made them feel."
> 「人は、あなたが言ったことを忘れる。したことも忘れる。でも、あなたがどう感じさせたかは、決して忘れない。」
> ― Maya Angelou
ここまで読んでくださっている皆様へ。
感想やリアクション、ブックマークや評価で応援してくださっている方、本当にありがとうございます。
1部、これで完結です。
転生先が酒場兼娼館、チートも魔法もなし、武器は前世の知識だけ——書きながら「これ、なろうで受けるのか?」と自分でも思っていた作品です。それでもここまで読んでくださる方がいる。それだけで書き続ける理由になっています。
フィナというキャラクターが、書いていてずっと気になっていた子でした。1部の中で、いちばん心配していました。
2部ではライバルが登場します。クレメントという男なのですが、これが書いていて手強くて——作者がいちばん振り回されています。
正直、なかなか届いていない実感があって——もし続きを楽しみにしてくださっているなら、ブックマークや評価で応援していただけると本当に助かります。「こういう話が好きな人に届いてほしい」と思っているので。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。




