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傾いた樽と真珠 ~転生先は酒場兼娼館だった。武器は、前世の知識だけ~  作者: 華雪β
第6章 声と喪失

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第29話 まだ、やることがある

夕刻が過ぎても、客が引かなかった。


広間のざわめきが、壁に溜まっていた。卓という卓に人がいた。声が、重なり合っていた。


隅のほうで、吟遊詩人が歌っていた。カルロではない。旅の途中で立ち寄った、名も知らない男だった。弦の音が低く、広間に流れた。


それでも、声が落ちなかった。笑う人間は笑い、語る人間は語った。音楽があっても、邪魔をしなかった。


これだ、と思った。


広間の端から、商人の一人が目をあげた。目が合った。男が笑った。気づいたら、笑い返していた。


---


夜が深まっていた。それでも、客が残っていた。


フィナがいた場所に、若い女中が立っていた。


客に何か言われて、ふと笑った。思っていたより、やわらかい顔をする子だった。


——だが、それきりだった。俺の目は、すぐにフィナのいない場所のほうへ戻っていた。


フィナの行方は、まだわからない。


もう一度、会えるなら——謝りたかった。あの言葉だけは、取り消したかった。


そして、あの声は、もう聞こえない。また、眠っているのだろう。


でも、心の奥のほうに、熱があった。俺を叩き起こした、あの熱が。


まだ、やることがある。


それだけが、あった。


---


> "I've learned that people will forget what you said, people will forget what you did, but people will never forget how you made them feel."

> 「人は、あなたが言ったことを忘れる。したことも忘れる。でも、あなたがどう感じさせたかは、決して忘れない。」

> ― Maya Angelou


ここまで読んでくださっている皆様へ。


感想やリアクション、ブックマークや評価で応援してくださっている方、本当にありがとうございます。


1部、これで完結です。


転生先が酒場兼娼館、チートも魔法もなし、武器は前世の知識だけ——書きながら「これ、なろうで受けるのか?」と自分でも思っていた作品です。それでもここまで読んでくださる方がいる。それだけで書き続ける理由になっています。


フィナというキャラクターが、書いていてずっと気になっていた子でした。1部の中で、いちばん心配していました。


2部ではライバルが登場します。クレメントという男なのですが、これが書いていて手強くて——作者がいちばん振り回されています。


正直、なかなか届いていない実感があって——もし続きを楽しみにしてくださっているなら、ブックマークや評価で応援していただけると本当に助かります。「こういう話が好きな人に届いてほしい」と思っているので。


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。

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