表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾いた樽と真珠 ~転生先は酒場兼娼館だった。武器は、前世の知識だけ~  作者: 華雪β
第5章 始動と亀裂

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/31

第24話 設計しないで

翌朝、フィナが来なかった。


いつもなら、起き抜けに声がかかる。それがなかった。


部屋を、訪ねた。


---


「どうぞ」


返事はすぐ来た。


扉を開けると、フィナは床に座っていた。膝の上に手を置いて、こちらを見ていた。


「仕事、始まるよ」


「……今日は、いいです」


少し間があった。


「ここを——出たいと思って」


---


「どこへ行くの」


フィナは少し間を置いた。答えが出てこなかった。


「決まっていないんですか」


「……まだ」


(行き先が、ない。それでも出ていくつもりでいる)


「だったら——」


フィナのことを、考えていた。行き先がないなら、しばらくここにいて、それから——


「設計しないで」


フィナが言った。静かだった。でも、はっきりしていた。


沈黙があった。


一緒に作ってきた。守るために設計してきた。善意ごと、その全部を——


火が、ついた。


止まれ、と冷静な頭が言った。


気づいたら、声が出ていた。「そんなに嫌だったら——」


「今すぐ出ていけばいいじゃない」


---


そこから先は、不思議と記憶が鮮明だった。


フィナの表情が変わった。覚悟を決めた顔だった。


立ち上がって、荷物をまとめ始めた。引き止めなかった。言葉が出てこなかった。


ふと、窓の方を見た。


窓辺に、小さな鉢植えが一つあった。ずっとそこにあったはずだ。今まで一度も気づかなかった。


フィナが、扉の方へ向かった。


「さようなら」


扉が閉まった。


---


気が付くと、自分の部屋に戻っていた。


寝台の端に座った。


ぬいぐるみが、棚に並んでいた。


何もなかった。アドレナリンが抜けた後の、静かな、何もない感じだった。


しばらく、そのまま座っていた。


---


> "You can say the right thing about a product and nobody will listen. You've got to say it in such a way that people will feel it in their gut. Because if they don't feel it, nothing will happen."

> 「正しいことを言っても、誰も聞かない。腹の底で感じさせなければならない。感じなければ、何も起きないから。」

> ― Bill Bernbach

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ