第24話 設計しないで
翌朝、フィナが来なかった。
いつもなら、起き抜けに声がかかる。それがなかった。
部屋を、訪ねた。
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「どうぞ」
返事はすぐ来た。
扉を開けると、フィナは床に座っていた。膝の上に手を置いて、こちらを見ていた。
「仕事、始まるよ」
「……今日は、いいです」
少し間があった。
「ここを——出たいと思って」
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「どこへ行くの」
フィナは少し間を置いた。答えが出てこなかった。
「決まっていないんですか」
「……まだ」
(行き先が、ない。それでも出ていくつもりでいる)
「だったら——」
フィナのことを、考えていた。行き先がないなら、しばらくここにいて、それから——
「設計しないで」
フィナが言った。静かだった。でも、はっきりしていた。
沈黙があった。
一緒に作ってきた。守るために設計してきた。善意ごと、その全部を——
火が、ついた。
止まれ、と冷静な頭が言った。
気づいたら、声が出ていた。「そんなに嫌だったら——」
「今すぐ出ていけばいいじゃない」
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そこから先は、不思議と記憶が鮮明だった。
フィナの表情が変わった。覚悟を決めた顔だった。
立ち上がって、荷物をまとめ始めた。引き止めなかった。言葉が出てこなかった。
ふと、窓の方を見た。
窓辺に、小さな鉢植えが一つあった。ずっとそこにあったはずだ。今まで一度も気づかなかった。
フィナが、扉の方へ向かった。
「さようなら」
扉が閉まった。
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気が付くと、自分の部屋に戻っていた。
寝台の端に座った。
ぬいぐるみが、棚に並んでいた。
何もなかった。アドレナリンが抜けた後の、静かな、何もない感じだった。
しばらく、そのまま座っていた。
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> "You can say the right thing about a product and nobody will listen. You've got to say it in such a way that people will feel it in their gut. Because if they don't feel it, nothing will happen."
> 「正しいことを言っても、誰も聞かない。腹の底で感じさせなければならない。感じなければ、何も起きないから。」
> ― Bill Bernbach




