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追放者アッシュの始末録 ~最強の執行官、最低ランクの冒険者に扮して闇を狩る~  作者: りさき


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第24話 夫人&ベルベティーの守衛

 結婚相談所の裏路地に入ると、オルテンシアが魔法陣を展開する。

 薄暗い路地裏を照らす真円しんえんがいっそう強い光を見せると、6つの人影が現れた。


「すぐに動ける6人を招集しました」


 揃いも揃って黒づくめ。顔はパーカーフードで隠されていて視認できない。

 オルテンシアが魔法を使うのは久しく見ていなかったが圧巻だな。

 オレは6人へ改めて依頼を通達する。


「目標はシンプルだ。ブランドン夫人と娘ベルベティーの保護。2人の安全が確保でき次第、オルテンシアに転送してもらう。位置情報は冒険者カードに送る。随時確認しながら動いてほしい」


 6人の冒険者カードがそれぞれ音を立てる。

 無駄な動作所作をカンペキにそぎ落としカードを取り出した。

 その時間を使ってオレはオルテンシアに耳打ちする。


「把握できていなくて悪いが、それぞれの力量に懸念事項はないか」

「問題ありませんよ。彼らは不自由に動けない私の耳目じもく同様。機能しない視覚や聴覚ならここには立たせていません。それにアッシュくんだって知っているはずですよ」


 知っている? と内心首を傾げると、先頭に立っていた男が口を開いた。


「旦那、もう俺の事は忘れちまったかい」


 親しみのある声とともにパーカーフードをめくる男。すぐに記憶が呼び起こされる。

 短く切りそろえた茶髪の下には、人懐っこい笑顔が浮かんでいる。


「ダリウスか。懐かしいな」

「忘れられてたらどうしようかと思ったぜ」


 ダリウスに握手を求められたので素直に応じる。オレがまだ追放者を始めて間もない頃、潜入したパーティーで知り合ったのがダリウスだ。


「今も冒険者を?」

「暇な時に依頼を受けるくらいだけどな。今はオルテン姉さんからの仕事をメインで請け負っている。旦那は……変わってないみたいだな」

「依頼主の規模は大きくなったがやる事は同じだ。元気そうで何よりだ」

「おふたりとも、そこまでにしておきましょう」


 オルテンシアが話題を区切る。昔話に花を咲かせられる事はほとんどないからな。つい話過ぎてしまった。


「先ほどアッシュくんから説明があった通りですが、今回の任務は一刻を争います。もしかすると……いえ、おそらく敵はもう動き出しています。目的は必ず達成するように。いいですね?」


 ダリウス含む6人は返事も頷きもせずカードをしまう。


「オルテン姉さん、ひとつだけ確認してもいいか」

「どうぞ」

「俺たちが動く事で敵は……理事会は確実に俺たちに目をつける。最悪の場合、今後の目だった行動ができなくなる可能性も出てくると思う。そのリスクは許容しているのか?」

「織り込み済みです。そのリスクを最小限にする手段があなたたちですから。隠密おんみつ行動もさることながら、戦闘力を含む実力だって申し分ありません。そのうえで理想をお伝えしておくのであれば『理事会に敵対する勢力が存在する』という情報を与えるにとどめられるとベストですね」

「わかった。転送を頼む」


 再び生まれる魔法陣。路地裏を照らす円が輝くと、ダリウスたちの姿はすでに消えていた。


「さてアッシュくん。私たちはどう動きましょうか。一応プランは複数持ってきていますが」

「おまえならオレがどう動こうとしているか予想できるんじゃないか」


 目を閉じ、柔和にゅうわに微笑むオルテンシア。


「なんだか懐かしいですね。こんな風にまたアッシュくんと肩を並べて依頼をこなすのは」


 オレの冒険者カードにマークがプロットされる。


「これからも機会は存分にあるはずだ。ここでしくじらなければ、の話だが」

「思ってもいない事を。失敗するなんて思っていないんでしょう?」


 オレの足元に転送の魔法陣が出現する。オルテンシアに向き合いながらオレは答えた。


「勝つまで続ければ負ける事はない。シンプルな原理だ」

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