60,洞窟内探検⑤(怒りと悲しみ)
─アレン、怒りに任せてはいけない─
ルビアス
お前もか……?
─違う。誰かのために怒ることは誇ってもいい。でも、怒りに振り回されて自分を見失わないで─
……そうだな
でも、その時はお前が僕を止めてくれるだろ?
─もちろん─
なら安心だな
ルビアスの言葉に冷静さを取り戻してきた。
うん、たしかに怒りは必要だ。
あいつ、パーンクァフルに対しての怒りはまだ収まってないし、許せない気持ちもある。
でもだからといって、それに全てを委ねてしまっては駄目なんだ。怒りを制御して、自分の支配下に置かないと。自分を自分で支配しないと。
「……あれが【王種】」
「こ、こわかったー!」
「「「「「「「あ、ジクシオ様……」」」」」」」
みんなは各人各様の反応をする。
その中でタマだけは思案顔で1人頷いている。
「アレン……君」
「あ、はい?」
そうだった。
この人どうすれば。
というか名前なんで知って?
「逢いに……行くんだろう?」
なにに、もちろんあいつだろう。
行かないわけが無い。
痛い目見せてやらないと僕の気が済まない!
「ええ、もちろんです!」
「じゃあ……」
「?」
じゃあ?
彼は怯えた表情で、一瞬言葉を噤み顔を伏せた。
が、やがて首を振り面を上げる。
そこには怯えた様子はなく、決意に満ち満ちた目をしていた。
「……僕も……つれてってくれないかい?」
2人を殺されて、自分だけが助けられて、色々な思いがあるんだろう。
断る理由はない。見たところ足でまといになるような人じゃなさそうだし。ただ、実際に戦えるのかは分からない。精神的なものが完全に癒えていない状態だろうし。
「僕は構いません。けど、貴方が辛いのなら無理して戦うのはやめてくださいね」
「…………ありがとう」
「……おい」
「わわ!」
ルドルフに引き寄せられ、隅の方へ連れてかれる。
え? なに?
「……お前……あいつを簡単に仕留めたのも驚いだが」
「……太陽の申し子ってのはなんだ?」
「あ」
い、いやー! なんでしょーねー!
なんて言えばいいんだ!?
えーとえーと!?
「アレン」
「タマ!」
タマからの助け舟キタ━━!
というかよく聞こえたね。
「別に話してもいいんじゃないか?」
「え? ……え? いいの?」
「隠してたのってルビアス様の事だろ? それに理由も目立つからだったしな」
「そう、だけど」
いいの? こんな簡単にバラしても?
「お前にも腹を割って話せる友人が欲しいだろ」
別にタマがいてくれればそれで。
「俺だっていついなくなるか分からない。それに、味方は多い方がいい」
縁起の悪いことを言う。
タマがいなくなるって……嫌だよ。
想像するだけで、悲しみが僕の胸を締付ける。
「あ、いや本当にいなくなったりするわけじゃないぞ!? もしもってことだからな!?」
「わかってるよ」
しょげてる僕を見て、タマが焦る。
でも確かに仲間は多い方がいい、か。
……話そう。
「僕は……竜に選ばれた。ルビアスに選ばれた太陽の申し子なんだ」
「……竜だと?」
「七星竜が実際にいたのかは分からない。けど、竜であるルビアスはここにいる」
「……龍じゃないのか?」
─あんな龍と一緒にしないで─
ルビアスの苛立ちが伝わってきた。
そんなに嫌なんだ。
「太陽の申し子は竜との完璧な調和が可能とされる存在。僕は魔力も聖気も元々持ってなかったんだ。器だけが大きくて、そこにルビアスの力を流し込んだ」
言っててやっぱ悲しくなるな。
ずーっと魔法の勉強してたのに根本の魔力がなかったって……
「……魔力と聖気を持たない……そんなことが……いや悪い……続けてくれ」
やっぱ相当レアなんだろうなぁ。
はぁ。
まあそのおかげでルビアスと相棒になれたんだし、魔法も使えるようになったわけだけど。
「それから【王種】のルイフに修行させられて、一通り終わって次は世界を旅してこいと。ついでに【王種】全てに会ってこいって」
色々省いたけど、いいよね?
「……なるほどな」
よかったらしい。
周り? ちゃんと防音の膜を魔法で張りましたとも。
ひと通り話し終えたところでタマや他のみんなも集まってきた。
「さ、行くか」
「うん」
パーンクァフルを目指してゆっくりと最奥を目指す。
✧✧ウルメリア大陸(ヘビィ大洞窟〜最奥部〜)✧✧
彼女は笑っていた。喜んでいた。
久々に楽しめる相手が来たと。
彼女の十の瞳に映るのは魔蟲の大群。
危険度は1〜8まで様々だ。
先程のクァクァロードもこの中の1つにすぎないか。
(さあ、私の可愛い子供たち。あいつらに地獄を見せてやりな。)
彼女の一言で彼等は一斉に動き出す。
ガサガサと音を立てる大量の巨大な虫達の進行は、虫好きな者が見ても悪寒を覚えることだろう。
彼女が純白の支配者と呼ばれる由縁。
【王種】の中で唯一、数多の眷属を持ち支配する力。
魔蟲にのみ範囲は絞られるものの、ひ弱な人間たちからすれば恐ろしい力だ。
そして、その力が今、アレン達に振りかかろうとしていた。




