33,人化するな魔法猫
「今日はこの辺にしとくか」
日が落ち始め、若干辺りが暗くなり始めてきた頃にタマがそう提案してきた。
うん、夜にあんまり無理して動くと危険だもんね。
「アレン、枯れ木を集めてきてくれ」
「はいはい」
人使いが荒いなぁ。
2人と1匹しかいないんだし、仕方ないけど。
─40分後─
「よし、こんなもんでいいか」
─逆に多過ぎない?─
「そうか?」
僕の目の前には集めてきた枯れ木が、文字通り山のように積まれている。
ここら辺あんまり人がいないからねー。
それだけが理由じゃないかもしれないけど……
─どうやって運ぶの? 私は持つの嫌だよ?─
ふふふ、そんなもの決まっているだろう。
なんのために古代語を覚えたと思っってんだい!
『|マフィス・コーフ・グルル《枯れた木々よ、浮かべ》』
─別に枯れ木を集めるために覚えたんじゃないでしょうに─
……
よぉーし、浮かんだぞー。
これで楽に運べる!
「多い……」
「ん?」
「多い!」
「え!?」
「こんな沢山使わんだろう! 一体何日山に籠るつもりだ!」
「た、確かに……」
─だから言ったのに─
うぅ…
「はぁ、まぁいい。持てるだけ持って先にある村かなんかで売ろう。お金も、持ってないしな」
おっ!
じゃあやっぱりいい事したじゃん!
ふふふ、こうなることも予想済みだ!
「ドヤるな……」
「で、タマは何してたんだ?」
「俺か? 俺は食材確保だ」
「お! なになに?」
「ゴープナだ」
「ゴープナ!!!」
タフゴープナまではいかないけど、ただのゴープナもそれなりに美味しい。
そういえば、儀式初日でも殺ったね☆
「群を見つけてなぁ。足を負傷してるやつがいたから、そいつを」
「ナイスだぜ!」
「じゃあ今日はこいつを料理するか」
「美味しくな! 頼んだぞ!」
「っても、焼くだけなんだがな」
なんだそれ、料理か?って思ったそこの君!
僕も同意見だ。
「よぉーし、できたぞー」
料理(笑)をしに行っていたタマが大皿を持って戻ってきた。
その皿の上には、香ばしい色に焼きあがったお肉がある。
ジュルリ
「遅いよ」
「すまんな。ゆっくり焼くのが大事で、ちょっと手間取って」
「あ〜、物凄く良い香りね〜」
ん?
ほんとだ……!
この匂いはなんだ!!
「流石だなアンナさん。ちょっとスパイスをね」
「へぇ〜、それより早く食べましょ〜?」
「……そうだな」
ちょっとタマが落ち込んでる。
猫が! 落ち込んでる!
クソッ! 普通に可愛い!!
「じゃあ、どうぞ」
「いただきます!」
「いただきます」
口の中に入れた途端に……((ry
食べ終わったあとは焚き火の周りを囲んで眠りにつく。
その間の見張りはタマが買ってでた。
本猫曰く、夜は任せろ!とのこと。
その言葉を信用して、僕とアンナは安心して眠ることが出来た。
魔法猫って有能!
─翌朝─
次の日、目を覚ますと既にアンナが起きていた。
朝の陽の光に当てられるその姿はまるでお伽噺に出てくるような女神。
そんなことより、なに黄昏ているんだ?
「なぁ、アン……」
─アレン、一人にしておいてあげて─
???
分かった。
ルビアスがこう言うってことはなにか、思うことがあるんだな。
それが何についてなのか、聞くのは野暮ってことか。
「よし、二人共起きてるな! 今日もまた歩くぞ」
「うへーい」
「ええ」
タマの姿が見えないと思ったら一人?で奥まで行っていたらしい。
戻ってきた頃にはアンナはいつも通りの表情になっていた。
にしても、タマさん?
なんで人化してんの?
その姿だと僕が霞んで見えるから止めてくれ?
僕も自分の顔に少しは自信があるんだ!
なのに……その少しの自信がズタボロに……
本当に酷いぜ……




