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太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜  作者: 日孁
第1章~純白の支配者~
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32,謎の女

 ルイフから聞けるだけのことを聞いたあと、後ろ髪引かれる思いで僕達は旅に出た。

 この旅の本当の目的を、知らぬままに。

 アンナはまだルイフに問いただしたいことがあったようだけど、その前にルイフ自身が去っていってしまった。

 なんだったんだろ?


─アレン……アレン!─


 え? あぁ、ルビアス。なんだ?


 ぼけーっと回想していたところ、ルビアスから声がかかって我に返る。


─前方の方になにかの気配が。人にしては濃いし、魔物にしては希薄で、少し違和感がある─


 ふむ、なるほど。


 言われて僕も気配を探ってみる。

 が、ルビアスの言うようなものは掴めない。

 むむむ、僕も精度は良いと自負してるんだけどなー。

 あれか、ルビアス空飛んでるからかな?

 きっとそうだ!

 ……まぁ竜だし、違っても納得はできるけど。


「みんなー、ルビアスが前の方に気配を感じるってさ」


 一緒に歩いていた2人……1人と1匹に伝える。

 なんだろう?

 荷物少ないし旅っぽくない……

 てか猫いるし……


「なんか言ったか?」

「え!? いや、なにも!?」

「言ったでしょ。気配がするんだっけ?」

「あ、うん」


 なんだ、また心読まれたのかと。

 多分、もうタマ相手にも見られはしないと思うけど。


「それで? 詳しく教えて?」

「いやー、それがよく分からないんだってさ。人にしては濃いし、魔物にしては希薄って」

「……つまり?」

「さあ?」


 人でもなくて魔物でもないってなんだ?

 王種か? まさか竜か!?

 タマが長いこと考えてる。


「んんー、すまん。俺にも分からん」

「いや大丈夫。もともと期待してなかった」


 殴られた……しかも身体強化の魔法使って……


─この移動速度ならもうすぐ接触すると思う。その時に確かめてみて。私は上空で見てる。何かあれば降りる─


 了解。

 さてさて、どんな奴がいるのかな?

 どのみち、こんなヤヴァイ山に来るやつなんてヤヴァイに決まってる。


 その後、数十分歩いたところに水が溜まった、池のようなところに出た。

 ……誰にも合わなかったぞ?

 ルビアスー?


─でも、まだ気配はある─


 んー、まぁ信じるけど。


「よし、少し休憩するか。ちょうどこの水溜まりが目印になるだろ」

「分かったわ」

「りょーかい」


 ちょうど休憩だし少し周りを見てくるかね。

 ルビアス、降りてこい。


─分かった─


 返事をするとルビアスは直ぐに目の前に着地した。

 木々の間から光が差し込みルビアスの緑の鱗を照らしている。


「変わった生き物を飼ってるね」

「そうか?」

「えぇ、本物の竜なんて初めて見た。綺麗な鱗……」

「あぁ、綺麗だろ? よく分かってんな!」

「えぇ勿論」


 だよなー。

 龍を見たことは無いけど、これに勝ることはない、と断言出来る。

 こいつ本当によく分かってんな!


─……ン……レン! アレン!─


 ……ん?

 !!!


「誰だお前!!?」


 その場から飛び退いて一時的に離れる。

 ルビアスに言われないと全く気づかなかった!

 ルビアスのことを竜だと見ただけで言い当てるし、只者じゃないな……


─アレン、彼女がさっきの異様な気配の正体─


 こいつか……見たところ10代前半と言ったところか?

 だが、見た目に騙されちゃいけない!

 アンナだって見た目は同い年ぐらいのくせにおばあちゃんなんだし!

 詐欺だ! 魔人族にとってはおばあちゃんじゃないんだろうけど。


「私は、風」

「風……?」

「そう。世界中に吹き渡る風。当てもなくただ流れる風」


 なるほど……頭の中お花畑の人だったか。


「それで? 今は何でこんな所に?」


 質問をしつつ、(カミューナ)に手を伸ばす。

 いつ、攻撃を仕掛けられてもいいように。


「……」


 正体不明の少女は無表情のまま、無言で此方を指さした。

 ……僕?


「感情を上手く制御しなさい。力に身を委ねないこと。心の奥底に眠るものを、起こしてはいけない」

「なに? それは一体どういう……おっ!」

「また会いましょう。貴方に、運命の風の御加護がありますよう」


 問い詰めようとすると強い風が吹いてきた。

 反射で目を瞑り、再び瞼を上げると、そこに少女の姿はなかった。


─ひとまず戻ろう─


 流石竜、切り替えも早い!

 そうだな。タマ達にも伝えないと。


─────────────────────



─ライザ、もう良かったのん?─


「えぇ」


─ちゃんと伝えれたのんね─


「えぇ」


─次はどこにいくのん?─


「……」


─分かったのん─


 白銀の鱗を持つ生き物の上で彼女は、自前の美しい空色の長髪を風になびかせる。

 その姿はまるで、一つの絵画のように……


─────────────────────


「ううーん。音もなく現れるのならまだしもなぁ。そんなこと、ルイフ様にも出来ないんじゃないか? 事実、俺にはできない芸当だ」

「やっぱり……そうなんだ」


 どれだけ高度な技術が必要なのか分からないが、そんなことが本当に可能なのだろうか?

 幻覚魔法……それならまだ納得がいく。

 でも、そんなものに僕がかかるわけが無い!

 その根拠は、ルビアスの存在だ。

 ルビアスは僕と心で、魂で繋がっている。

 前もカーバンクルのカテュラから心を読むの妨害してくれたりしたけど、あんな感じでルビアスは僕を保護してくれている。

 だから、そんなやわな幻覚なんかにかかるわけない!

 それなのに、彼女は僕に違和感を抱かせなかった。

 本当に何者だったのだろうか?

 そして、何を僕に告げていったのか……


「風、空色の髪を持った少女。どっかで聞いたことがあるような気がするわね。でも、分からない」


 ん? てことは結構有名人だったのかな?


「まぁ分からないことをいくら考えても仕方ない。これから先のことを考えていこうぜ」

「そうだね」


─アレン─


 んー? 今度はどうした?


─街? いや、小さな農村みたいなのが見える─


 おぉ! それはナイスな情報だ!

 どれぐらい先にある?


─私なら十数分で、アレン達の歩く速さだとあと5日はかかるかも─


 おぉ……それはバッドな情報だ……

 まぁ、まだ歩き出して一日も経ってないしな。

 逆に、そんな近くに人の住むところがあることに驚きか。

 ガスティグ村はルイフが外界と切り離した場所ってことだし。

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