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二十八歳の私  作者: マック アダソン
第一章 社会人になった私
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② ADHD・ASDの診断

上京した頃の私は、まだ学生だった。

大学へ通い、授業を受け、課題に追われる日々を送っていた。

しかし当時の私は、自分自身についてまだよく分かっていなかった。

大学時代、私は学校のスクールカウンセラーと話す機会があった。

その中で発達障害の可能性を指摘され、初めて医療機関を受診した。

そして私はADHDとASDの診断を受けたのである。

振り返れば思い当たることは少なくなかった。

人との会話がうまく噛み合わないこと。

自分の話ばかりしてしまうこと。

複数の作業を同時に進めることが苦手なこと。

こだわりが強いこと。

先のことを考えることが苦手なこと。

気づかないうちに声が大きくなってしまうこと。

そして同年代の友人関係を築くことに苦労してきたこと。

それまで私は、自分の努力不足なのだと思っていた。

しかし診断を受けたことで、自分の特性として理解できるようになった部分もあった。

 一方で、診断を受けたからといって全てが解決したわけではなかった。

むしろ私は、その時から発達障害と共に生きていかなければならない現実を知ることになったのである。

学生だった頃の私は、大人になることをどこか遠い未来の出来事のように考えていた。

しかし大学を卒業し、少しずつ社会へ出る準備を進める中で、その未来は現実のものになっていった。

社会人になるということは、年齢を重ねることだけではない。

自分の特性や苦手さを理解しながら、自分なりの生き方を探していくことでもあった。


 そして私には、もう一つ向き合わなければならないものがあった。

思春期に出会った「彼」との別れ、そして成人期に出会った「彼女」との別れである。

二人の転勤による別れは、今でも私の心に大きく残っている。

 彼や彼女の存在が大きかった理由の一つは、私が発達障害を抱えており、同年代の友人関係を築くことに苦労してきたからかもしれない。

振り返れば、高校時代も大学時代も、私は同年代の友人関係をうまく築くことができなかった。

 高校時代や大学時代に継続的に関わることができた相手は、写真の先生や大学のスクールカウンセラーや「彼」や「彼女」のような年上の人たちだった。

 社会人になってからも、それはどこか共通していたように思う。

前職の会社でも今の職場でも、親しく話をする相手は同年代より年上の人が多かった。

その中で家庭教師や彼や彼女との関わりは、私にとって安心して関わることのできた貴重な時間だったように思う。

 しかし、それだけでは説明できないようにも思う。

思春期や成人期という人生の重要な時期に出会ったこと。

三年や八年という長い時間をかけて関わり続けたこと。

そして九年差で、彼も彼女も二度に渡り転勤という形で別れを経験したこと。

そうした様々な要素が重なった結果として、二人は私の中で大きな存在になったのだろう。

 いずれの別れも、関連する場所や景色によって当時の記憶がよみがえり、今でもフラッシュバックが起きることがある。

そのため、その場所へ行くことができなくなったり、景色や似たような風景を見ることを避けるようになったりした。時には現地だけではなく、今でも写真や映像ですら見ることができなくなっている。

 しかし、彼との別れを経験したためなのだろうか。彼女の場合は、フラッシュバックの範囲が狭くなっていた。

彼の時には、関連する場所や景色全体に広範囲に強く反応していた。けれど彼女の場合は、主に彼女が勤めていた百貨店に限られるようになっていた。また、他の百貨店の資生堂ではフラッシュバックは起きなくなった。一方で、美容部員を新たに指名することには強い抵抗を感じるようになった。

 反応する範囲は彼女の方が確かに狭くなっていた。

しかし、反応の強さそのものは彼女の時の方が大きかったように思う。

それが発達障害によるものなのかは分からない。

しかし私は、自分が記憶と共に生きている人間なのだということを知った。

出来事そのものだけではない。その時に見た景色も。聞いた言葉も。感じた感情も。

長い時間が経った今でも、私の中に残り続けているのである。

診断を受けたことで、自分の特性を理解できるようになった部分はあった。

しかし同時に、自分自身についてまだ分からないことも多い。

私は発達障害と共に生きている。

そして記憶と共に生きている。

それもまた、大学時代に診断を受けてから少しずつ理解するようになった、自分自身の一面なのかもしれない。

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