第二十三話 完成図
今日は建築士山崎との打ち合わせの日。リアンは午後から慌ただしく八百屋をあとにして商店街振興会事務所へ向かった。玄関の扉を開くと組合長の久保が相変わらずせっせと事務作業をして、忙しそうだった。
「こんにちは。お世話になります。」
「リアンさん、いらっしゃい。ゆっくりくつろいでいって。」
久保はリアンにお茶を出した。頂いたお茶を一口飲んだ。すると、心が落ち着き、気分の高ぶりを少し落ち着かせた。談笑をしている二人は世間話をしながら、山崎が来るのを待っていた。すると、そこに、山崎がやってきた。
「お待たせして、すみません。皆さん、おそろいですかね?」
「えぇ、今日は桐谷さんも来られないようですし、これで全員ですね。」
山崎は着席するや否や、公民館の模型を取り出した。しっかりと作られており、細部まで理解できる内容のものだった。プロの模型は綺麗でこだわりも見受けられた。
「早速ですが、模型で確認していきましょう!」
そういうと、詳細の建築方法や配置の説明が始まった。リアンはワクワクしていた。
「まず、公民館の天井にあるソーラーパネルはこのまま活用していきます。ただ、少し移動をさせて、この公民館を囲うように再設置していき、畑に日が入るように天井の中央には天窓を作っていきます。そして、ここが私自身もこだわった雨水再利用するための雨どいです。」
山崎は模型を指しながら、説明を始めた。わかりやすく端的に専門的な知識もいらないような説明の仕方で、どんどん理解していった。
「雨どいを通った雨水は地下のタンクに収納されます。使う時だけ、ポンプを使って汲み上げる事が出来ます。」
リアンは相槌を打ちながら真剣な眼差しで話を聞いていた。
「それでは、中を見ていきましょう。」
そういうと、山崎は模型の上の方をぱかっとあけて、見せてくれた。そこにはリアンの思い描いた設計が散りばめられていた。
「まず、入口は左右にある下駄箱はそのまま活用します。そして、ここにもう一つ扉を設けまして、虫や防音に効果があると思ってください。そして、周りの小さい部屋は休憩室として、畳を新しいものへ張り替えていきます。奥にある小部屋にはプランター栽培や水耕栽培が出来るように、床はコンクリートで水はけよく設計いたしました。」
次々と説明がされていく中で、リアンの心もどんどん高ぶっていった。
そして、メインの畑の説明に入る時、リアンの目はキラキラと模型を見つめていた。
「畑の隣は体育館になっていまして、地域の皆様が楽しんでもらえる施設となっております。そして、畑区画ですが、先日リアンさんからお寄せいただいた内容で作らせていただきました。基本的には床はコンクリートにして深めの窪みを作り、そこに土を敷いていきます。全面、畑というよりは通路優先の畑をイメージして作りました。そして、畑の高さも一部、高めに設定しまして車いすのお客様にも対応可能のように設計いたしました。」
山崎の説明は、本当に分かりやすい。リアンはこの時、山崎と知り合えたことに感謝していた。
「施設はシャワー室、お手洗い、洗面台、厨房などがございます。そして、今回、堆肥室も作りました。肥料を作るための施設ですね。野菜の要らない部分を捨てるのではなく肥料にする再利用に重きを置いて、制作しています。」
リアンは感心していた。リアンの頭の中のイメージをここまで再現してもらえて感無量だった。
「一応、これらが概要になります。いかがでしょうか?」
「はい!ありがとうございます。私は良いと思います。」
ここで、久保が話を始めた。気になったことがあるみたいだ。
「山崎さん、排水問題ってどうなっていますか?もし、土が排水に詰まったら、水が流れなくなりますよね?そうなったら、ここだけじゃなく、商店街の皆さんにもご迷惑になるんじゃ…。」
リアンはハッとした。排水問題は一番気にしないといけない事だった。畑で完結するわけではない。近隣の事も考えていけないのに、抜けていたことにリアンは反省していた。
「大丈夫です。排水に関しては今回、沈砂槽を設置しようと思っています。これはいわば土と水を分離するマスみたいなもので重い土は下に沈んでいくので、問題は起こりにくくなります。勿論、年に1回の手入れは必要ですが、問題ないと思いますよ。」
久保は真剣な顔で、頭を縦に振り納得していた。
「他に何か問題になりそうなことはないかしら?」
「あの~、大雨の時に大量の雨水がタンクに流れた時、溢れたりはしないでしょうか?」
リアンは少し心配をしていた。予想外の大雨では対処が難しくなると思っていたからだ。
「雨の再利用に関しては、切り替えが出来るようになっています。タンクが満水になった場合は自動的に沈砂槽側へ流れるよう設計しています。大雨の場合は沈砂槽へ直接流れ、再利用の場合はタンクへ流れるように雨どいの進行方向の切り替えで、その時に応じて、替えてもらえば大丈夫です。ただ、地下排水が出来ないぐらいの量が降った場合は、心配ですが…。」
「ほとんど大丈夫でよかったです。豪雨なんて、そうそう降るものではないですし…。」
リアンは安心していた。ホッとして、山崎を見つめた。
「それでは、これで手配しておきますので、よろしくお願いします。」
「ありがとうございます。」
「まず、視察して、解体業者が公民館に入りますのでよろしくお願いします。」
リアンはいよいよの気持ちとこれからの事を考え、ワクワクもプレッシャーも感じていた。この先、どう動くのが正解なのかわからない。必死に頑張るしかないと心に決めた日となった。




