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都会のシャッター街で畑を作ることにしました  作者: 凪野 リアン


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第二十四話 思い出の公民館



 翌日、リアンは公民館に訪れていた。1か月以内には解体業者も入るだろう。その前に公民館の中を見ておきたかったのだ。そして、SNSのために写真も撮りたいと思っていた。扉の鍵穴に鍵を差し込みガチャっと開けた。入口に入ると少し古臭い畳の香りがしていた。玄関の下駄箱にはスリッパがあり、少し埃も被っていた。そんな情景も写真に収め、改築後の風景に思いを馳せている。


(解体業者が入る前に備品も片付けたほうがいいのかしら?今度、相談してみなくちゃ!)


 そんな片付けも心なしか考えるだけで楽しくなっていた。どんな風に変貌していくのか楽しみで仕方ない。一人で見て回るが、口角が上がりっぱなしで、はたから見たら変な人である。

 一番、気になっているのは畑と体育館だろうか。これからは体育館というか、多目的ホールとして、住民に貸し出す予定だ。畑の農業体験のついでに多目的ホールで遊ぶ。また、その逆も…である。


(皆の笑顔が増える様に頑張らなきゃ。商店街に活気を取り戻すんだ。)


 リアンはすべての部屋を確認し、写真にも収めていった。昔はこの場所もきっと活気があって、利用者も沢山いたのだろうと思いを馳せながら見て回っていた。

 夕方、一通り見て回り帰ろうとしたとき、外に立っている人がいた。その人は外観を見ながら、少し涙ぐんでいた。


「こんにちは。」


 リアンは思わず声を掛けてしまった。何故か声を掛けずにはいられなかった。すると、驚いた様子で挨拶が返ってきた。


「あ、こんにちは!すみません…えーと…ここって、取り壊されちゃうんですか?」


 リアンは突然のことで驚いていた。話をよく聞いてみると、昔、公民館をよく利用していた住民の女性だという事を知った。病気で弟を亡くし、昔よく遊んでいた場所を巡っているところなのだと教えてくれた。


「弟さん、残念でしたね…。ご冥福をお祈りいたします。」

「ありがとうございます。ここも無くなっちゃうんですね…。」

「えーと…無くなるわけではなくて…改築を予定しています。」

「改築?何かに利用するってことですか?」

「公民館は一部残し、農作業のできる畑に生まれ変わるんです。」

「この都会で畑が…????」

「はい、交通の便もいいですし、農業体験もやりたいと思っていて…。」

「楽しそうですね。私も是非、完成したら遊びに来たいです。」


 リアンたちは朗らかに会話を始めた。そして、いつの間にか意気投合して、連絡先の交換もした。


「もし、完成したら連絡貰えますか?絶対に遊びに来ますから。」

「SNSもやっているので、是非、確認してみてください。さっき撮った写真もアップして現状報告していきますので。“つながる畑”で検索してみてください。」

「ありがとうございます。早速検索してみますね。」


 女性はその場で検索を始めた。すると、リアンのスマホに通知が入った。


「フォローしました。頑張ってください。」


 リアンは嬉しくて、飛び跳ねそうになったのを抑えて、冷静な振りをしてこう応えた。


「ありがとうございます。これからもどんどんアップしていくので是非、チェックしてみてください。」

「楽しみにしています。実は子供の頃から芋掘りとかの農業体験が好きで、だけど、車が無いから地方に行けなくて…。それがここで出来るってことですよね?」

「そうなんです。農業体験と自家栽培の野菜を使った料理も提供しようと思っています。」

「それは楽しみですね。あの…不躾なお願いなんですが、もし、何かお手伝いが出来る事があれば、私にもやらせてもらえませんか?もちろん、ボランティアで結構ですので。農作業に携わってみたくて…。」

「ありがとうございます。そうですね…。今すぐ返事を出せないので、後日、ボランティア募集の時に応募してもらえると助かります。なにせ、まだ、始まったばかりで、完成の目途もまだ立ってないんですよね。」

「わかりました。不躾なお願いですみません…。」

「気持ちは伝わりました。ありがとうございます。」


 リアンは嬉しかった。女性の気持ちが嬉しかった。話をしてみてわかったことは悪い人では無さそうなこと。逆に優しすぎるくらいの人なんだという事が伝わってきた。素直で純粋な人。リアンはその女性の性格が大好きになった。


「ところで、ここまで話をしてあれなんですけど、お名前教えてもらってもいいですか?私は翔峰リアンです。皆からはリアンちゃんと呼ばれます。」

「あ、ごめんなさい。立花恵です。めぐちゃんとかめぐとか呼ばれますね。好きに呼んでください。」

「それじゃ、恵さん…。完成したら声を掛けますので、その時はぜひボランティアに応募してください。よろしくお願いします。それでは、また…。」


 リアンは軽い会釈をして、恵は頷き、二人は別れた。

 リアンにとって、今日の出会いはいい出会いであったのは間違いなかった。そして、リアンのコンセプトにマッチする人に出会えたことが、宝物のような存在だった。リアンと同じ考えを持つ同志に出会えて嬉しくなっていた。これからの畑の改築がより一層楽しみになり、将来の畑を思い描きながら帰路についた。


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