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都会のシャッター街で畑を作ることにしました  作者: 凪野 リアン


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第二十話 育てる知恵



 自然の中で作業する畑は本当に心地が良かった。毎日となると大変なんだろうとは思うものの、リアンにとっては最高の時間と思えた。早瀬と二人で話していると大森が戻って来た。


「おぅ、戻って来たか。何やっていたんだ?今まで?」

「あぁ、野菜の成長具合を少し見て回っていたんだ。お前の所の野菜は相変わらずよく手入れされているなぁ。みんな、元気に育っていたぜ。」

「ハハハ、当たり前だろ。こっちは農家のプロだぜ?」


 二人は終始、笑いながら話をしていた。その光景を見ているリアンも自然と笑顔があふれていた。


「リアンちゃん、どうだった?優しく教えてもらったか?」

「はい、とても分かりやすく教えてもらって、しっかりお手伝いできました。」

「いやいや、リアンちゃんの呑み込みが早くて、助かったよ。また手伝いに来てくれよ。」


 和やかな雰囲気で温まる空間が出来上がっていき、ぽかぽかと春の温かさとにこやかな話でリアンの心も癒されていった。


「よし、次は玉ねぎの収穫を手伝ってくれるか?大森も手伝ってくれるんだろ?」

「仕方ねぇなぁ。やってやるよ。」


 玉ねぎ畑へ車で向かい、広大な畑を見ながら向かっていった。


「よし、着いたぞー。」


 畝がいくつも並んでいる。そこには玉ねぎの葉と思われるものが沢山寝ころんでいた。


「大森はわかっていると思うが、リアンちゃんに説明すると、玉ねぎの葉っぱが寝ているやつが収穫時期の目安になっている。葉っぱを持って上に引っこ抜けば収穫できるからな。もし、抜けにくい場合は左右に揺らしながら引っこ抜いたり、周りの土を掘って引っこ抜きやすいようにどかすといいぞ。」


 リアンは早瀬に言われたとおり、収穫を始めた。もう半分以上は寝ている葉っぱが多い。寝ている葉っぱを握りしめ持ち上げてみた。すると、まん丸と大きい玉ねぎが顔を出した。綺麗な玉ねぎだった。土がまだ付いている。土の匂いに混ざって玉ねぎの香りがかすかにする。リアンはその瞬間を楽しんでいた。


「収穫した玉ねぎは畝の上で交互に並べておいてくれ。葉っぱで玉ねぎを隠して、直接日に当たらないようにな。傷みにくくするんだ。」

「並べ方にも意味があるんですね。」


 リアンは農家の知恵を間近に感じ、全ての行動に意味があることを知った。玉ねぎは土を落ち着かせるために乾燥させ、保存性を上げるためにも乾燥させる。水分を含んだ土を乾燥させ腐敗防止にもなるようだ。

 リアンは一つずつ丁寧に収獲しては畝の上に並べ、繰り返し行っていった。畝の上には綺麗に玉ねぎがずらりと並んでいた。土の上で昼寝をしているかのように気持ちよさそうだった。まんまると大きな玉は新鮮で輝いて見えた。


 何度も何度も繰り返し、畝一列分をリアンはすべて収獲することが出来た。その頃にはリアンの腰は悲鳴を上げていた。ずっと、中腰の状態で作業を続けてきたからである。少し、立ち上がり、腰を伸ばすリアンを見て早瀬が心配をする。


「リアンちゃん大丈夫か?少し休憩しような。」

「はい、すみません。」


 みんなは手を止め、少しだけ、休むことにした。


「畑作業ってやはり大変ですね。」

「そうだな、腰は痛くなるし、天候に左右されやすいし。まぁ、でも、悪いことばかりじゃない。野菜が育つ瞬間に立ち会えるんだから。それに一生懸命育てた野菜の収穫を終えると達成感もあるんだ。」

「確かにそうですね。市場に出荷されたときも達成感で包まれそうですね。」


 リアンは早瀬の話をしっかりと心に留めていた。将来リアン自身もその体験を出来るように野菜の育て方も見習うべきことが話の内容に詰め込まれていた。リアンは畑を作って何を育てるのかまだ決めかねていた。最初は栄養が足りないだろう。堆肥も作りたい。土も育てたい。苗も育てる必要があった。やるべき課題が多かった。


「早瀬さん、土づくりでまず何をやるべきか教えてもらえますか?何を育てたらいいですか?」

「最初は枝豆とかラディッシュがいいんじゃねぇかな?初心者には薦めているんだ。土が出来るまでは、一番、良いんじゃないかな?」


 将来の畑について、色々と質問し、疑問に感じていることをすべて確認していった。その都度、早瀬は優しく応え、将来の農家になるであろうリアンに包み隠さずすべて伝授した。

 再び、玉ねぎの収穫に戻り、本日の作業は終了となった。


「さぁ、そろそろ帰るぞ~。」

「早瀬さん、ありがとうございました。また来ますね。」

「おぅ、いつでも来な。もし、畑をやる時に困った事があったらいつでも相談してくれな。」


 リアンは軽く会釈をして、早瀬に別れを告げた。農家の苦労も体験する事が出来て、リアンはまた畑への希望が広がり始めていた。


 帰りの軽トラは大森と興奮気味に会話をして、少し経った頃には、気付けばウトウトと居眠りしてしまっていた。リアンが起きた頃には西日の当たる商店街の風景となっていた。現実に帰ってきたような感覚に思えたリアンだった。


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