妙子
久美は亮があまりにも女性関係が無いので心配になってきた。
「ねえ、ひょっとしたらあなたまだ?」
「違いますよ、ちゃんと」
「本当!東大生に童貞が多いって聞いたけど」
「お母さん、もうその話止めましょう。もう東大卒業しているんだから」
亮は本気になって久美を止めた。
「そう、じゃあアメリカのお嬢さんは?」
「はい、女友達はいますから大丈夫です」
「まあ、素敵。青い目の可愛いお嬢さん」
「目は青くはないですけど・・・」
亮は175cmの巨乳のジェニファーを思い浮かべていた。
「うふふ、楽しみだわ」
「それより姉さんたちこそ心配ですよ。下手したら処女かも」
亮が立ち上がってキッチンから水を持ってくると千沙子が顔を出した。
「誰が処女だって?」
「いや。お帰り姉さん」
「そっちこそお帰り、連絡もしないで」
「お土産欲しかった?」
「いや、来月ニューヨークに行く」
「あっ、食事は?」
久美がテーブルから首を伸ばして聞いた。
「食べてきたけど・・・」
千沙子は冷蔵庫からビールをもってテレビの前のテーブルに付いた。
「姉さん、青山のブリリアンスショーと言う店知っている?」
「うん、クラシカルでなかなかいい商品を作るよ。
青山のイメージにぴったりな感じ」
「なるほどね」
亮は妙子が歴史ある街ボストンに来た理由が解った。
「それがどうした?」
「そこの店のデザイナーに会った」
「アメリカで?研究熱心だね。そのデザイナー」
「鈴木妙子さんと言って、尚子さんたちと一緒に食事をしたんだ」
「ほう、そこまで行ったか。それでこっちでも会うの?」
千沙子はニヤニヤと笑った。
「うん、そのつもり」
「亮には珍しく積極的だね」
亮は詳しい説明が出来ず笑っていた。
「お母さん安心して、亮は彼女に会いたくて
わざわざ日本に戻ってきたんだって」
千沙子は勝手に思い込んで久美に笑って話をした。
「まあ、それを早く言ってよ。心配しちゃった」
久美は胸をなでおろしていた。
「亮、一人に決めるのはまだ早いから、
日本にいるうちにモデルさんと飲みに行こうね。
みんな待っているからね」
「了解!」
23歳を越した亮はお酒を飲むことは拒まなかった。
その夜、亮は帰宅した父親秀樹と語りあった。
「どうだ?アメリカは?」
「アメリカに行って最も日本と違うところ。
それは、アメリカ人は残業しない事です、
残業する人間は能力が無いと見なされ評価が低い、
勤務時間が終わるとさっさと帰るのが当然であり、
残業する人間ほど評価が高い日本とは真逆です」
「確かに、仕事ができない奴ほど休憩するな」
「そして都心部で通勤時間が30分程度で短い事、
車で通勤するアメリカ人は家から職場までたとえ
郊外に家を持っている人でも1時間程度、
同じ1時間でも日本の満員電車通勤とは
疲労度が根本的に違ってきます」
「うん、サラリーマンの疲れは通勤からも来ていることが多分にある」
「はい、電車通勤は身軽さで飲酒の機会が多くなり
帰宅時間も遅くなってしまい、
日本人の平均睡眠時間は7時間50分、東京、
大阪の大都市に通勤する人はさらに1時間短いとも
言われていて、フランス人の平均睡眠時間は
8時間50分世界一だそうです」
「まあ、それは睡眠時間の計り方はベッドに入ってから
換算するらしいからな、寝ようと起きていようと何をしようと、
夫婦や恋人が実際何をやっているか想像つくだろう」
「あっ、それか!」
亮は純粋に、フランス人はよく寝る国民だと思っていた。
「意外と日本の少子化の問題そこにあるかもしれないぞ」
「勤勉と言われている日本人ですが睡眠時間を
もっと増やす方法はいくらでもあるはずです。
とりあえず睡眠安定サプリメラトニンやグリシン、
トリプトファンの開発をやってみます。
漢方薬には抑肝散とか酸棗仁湯とかがありますけど
効き目が遅いので」
「確かに睡眠薬は個人によって効き目が違うから危険だ。
毎日飲んでも危険じゃないサプリの開発は良いと思う。
研究所との連絡はできるようにしておこう」
亮と秀樹の会話には次第に具体的なビジネスのアイディア出てきた。
「ところで、DUN製薬の方はどうなっていますか?」
「うん、どうも新薬の情報が洩れているみたいなんだ。悪いが亮よ、
一刻も早く日本に帰ってきてDUN製薬に潜入捜査に入ってほしい」
亮はしばらく無言でいると重い口を開いた。
「もう少し時間をください。後3年で帰ってきます」
「申し訳ない。その代わり製薬会社の件を片づけたら、
当分の間好きな事をやっていいぞ。バイオ燃料もしかりだ」
「本当ですか?約束ですよ」
「ああ、約束する。それに関してはお前の必要なものは何でも用意しよう」
亮と秀樹は男の約束をした。
翌朝亮は朝のトレーニングの後に軽井沢の緑川五郎に電話を掛けた。
「五郎さん、お久しぶりです」
「おお、亮さんお元気ですか?」
「はい、いま日本に帰ってきています」
「はい、かなり燃焼力のある藻が出来ていますよ」
「了解です。ところで何か安眠に効く植物ありませんか?」
「それだったらユリ科の植物でクワンソウがあります。
別名ねむり草と言って沖縄に自生しています」
「面白いですね。すぐに沖縄から取り寄せてもらえますか?」
「温室の方に何鉢かあります。本州では気温が低いので
直植栽培は無理だと思いますが」
「ありがとうございます。近いうちに伺います」
「はい、お待ちしています」
とりあえず亮は鈴木妙子に帰国の連絡をして返事が来るまで
原宿から青山のブリリアンスショーまで歩いて行った。
そこは青山通りから骨董通りに入って間もなくのところにあり
ショーウインドウの中には水色を基調とした夏らしいワンピースは
セレブが夏のリゾートに着ていくようなカジュアルなものだった。
「なるほどなあ」
大人になった北川沙織が着たらどんなに似合うだろうと想像すると
目頭が熱くなった。
亮はしっかりとターゲットを絞り込んでいるブリリアンスショーの
コンセプトが気に入りそこに鈴木妙子からメールが返ってきた。
「7時半ごろでしたら時間が空きます。どこへ行ったらいいでしょうか?」
「では銀座の美宝堂前でお待ちしています」
「はい、承知いたしました。7時45分頃伺えます」
亮は移動時間を計算したきっちりとした鈴木妙子が信用できる女性だと思った。
7時40分時間通り鈴木妙子は美宝堂の前に現れた。
「お待たせしました」
「中に入って姉に会いますか?」
「突然なのでまた次回に」
「わかりました。では食事でも。和食、中華、
フランス料理、焼き肉何がいいですか?」
「ええと、中華が良いです」
すでに亮の背景を知っている妙子は遠慮せずに答えた。
「わかりました」
亮は銀座一丁目近くの猛林へ妙子を連れて行った」
「先日はニューヨークでありがとうございました。
白尾尚子さんと会えたし思い出になりました」
「途中で帰って申し訳ありませんでした」
「いいえ、團さんはアメリカにお友達多いんですね」
「そうでもないですよ。ところでボストンの
クラシカルな街並み勉強になりました?」
「はい、うちの洋服のデザインが歴史を重んじる
清爽なアメリカンカジュアルなので
大学生が多いボストンはとても勉強になりました」
「確かにボストンは勉強目的の学生が多いので清楚ですね。
それに比べてニューヨークのOLはかなりおしゃれで良いですね」
「ええ、ヒップラインを強調したタイトスカートのスーツは
自分をアピールしていますね。日本であんな格好をしたら、
間違いなく上司に注意されます」




