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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
91/132

ハセバ

「今、犯人の自供を取っていたんだが、

奴の名前はベンジャミン・ストーサー32歳

トラックの運転手だ。

以前からアイリーンのストーカーで

ファンレターを書いても返事をくれなかった事が

気に入らなかったらしい」

コナーはコーヒーを片手に亮とジェニファーに

顎に手を当ててリラックスして言った。


「勝手な言い分ですね」

「ここではあまり珍しい事件ではないけどな、

それでもう一度犯人を捕まえた時の

様子を教えてくれ」

コナーは笑いながらジェニファーの白いTシャツから

見える胸の谷間を覗き込んだ。


亮はコナーのバカにしたような態度が気に入らなかったが

その時の様子を語り始めた。

「掃除用のモップありますか?」

亮はコナーが持ってきたモップの先を外し

剣道の基本、中段に構えた。


ジェニファーは背筋を伸ばした亮の姿が

凛として憧れのサムライに見え

小さく手を叩いた。

亮はストーサーが休憩中にピストルを

持って入ってきたので、

銃口が自分に向く瞬間、

柄を持って犯人を倒し尚子のタオルで

縛り上げた事をコナーに言った。


「なるほど、しかしピストルを持っている

人間にモップの柄で勝てるのか?

 君とストーサーの距離は3m以上離れていたはずだ」

コナーはピストルを撃つより早く人間が3m先の

ピストルを叩き落とせる訳がないと疑っていた。


「亮、日本のサムライを見せてあげれば」

ジェニファーが亮をあおって言うと亮はコナーに確かめた

「いいですけど、大丈夫ですか?」

「いいとも、見せてもらえれば我々も納得する」

亮は中庭に出てモップの柄を持って3m先に

コナーにヘルメットをかぶらせ警棒を横向きに持たせ立たせた。


「おい、そんな遠くから届くと思うのか?」

「ここからその棒を叩きます。その後は僕に何をしても結構です」

「なんだ?この警棒を動かしたらどうするつもりだ?」

「はい、叩けます」

中庭にいる三人を見て署員が集まってきて見物を始めた。

「ダン、来い」

コナーはまだ亮を信用しておらず

署員の前で亮をはずかしめられるように

ビデオをセットした。


亮は気合の声と共にジャンプしてコナーが

持っている警棒を叩こうとすると

コナーはそれを避け右に動かしたが

亮の柄は警棒を強く叩いた。

コナーは亮の柄の動きと強さに危うく

落としそうになると

「カーン」

コナーのヘルメットは亮の持っていた掃除の

モップの柄で音を立てて叩かれた。

「ブラボー」

亮を見ていた署員が声を共に拍手をした。


「これがサムライか・・・」

唖然としているコナーに亮が言った。

「これが剣道です」

「ケンドーかなるほど・・・忍者が飛んできた

ナイフを叩き落とすのを

 見たことがあるがそれはできるのか」

アメリカ人のコナーにとってサムライも忍者も一緒だった。

「もちろんできます」

亮は日本人のプライドをかけて言い切り、

的の印をつけた段ボールを自分の2m先に置いた。

コナーは押収したナイフを4本持って亮の前に立った。

「本当に良いのか?」

「どうぞ」

コナーは亮に向かって立て続けに

3本放ると棒で弾き返したナイフは

3本とも段ボールに突き刺さった。

そしてコナーは4本目を亮の後ろに回り合図も

送らず投げつけた。


「キャー」

ジェニファーが驚いて声を上げると亮は冷静に

ナイフをコナーの足元に弾き返しコナーは驚いて動けなかった。

「ひどいじゃないコナー!亮の背中にナイフを投げたわね」

ジェニファーはコナーに食って掛かった。

「すまない、亮を見たらどこから投げても

返せそうな気がしてしまった」

コナーは亮とジェニファーに謝り、

亮が犯人をモップの柄で倒したのは

本心から認めた。


「さて、取り調べと報告書を書きにもどる。

何かあったら連絡をくれ

 どんな事でも手伝うぞ」

コナーはビデオを片付け軽く手を挙げて

中庭から署内に入って行った。


「ジェニファー、櫨場俊夫ハゼバトシオの件で何か

あったらコナー刑事に頼みましょうか?」

亮はフレイザー警視にニューヨーク市警の

パーカー刑事に協力依頼をするように

言われて来たのだった。


「そうね、最初は日本人の亮を嫌がっていたけど、

最後にあなたを認めていたわ」

「そうですか」

亮が中庭から帰ろうとすると見学をしていた

警官たちが亮を取り囲み

剣道の話を聞いた。


~~~~~

亮たちは15:00にエンパイヤステートビル近くの

オフィイスビルの1階のティールームで

櫨場俊夫を待った。

「あの警察官たちには参ったわね。

亮の事本当に忍者だと思ったみたい」

「ええ、日本に忍者が居ると思っている

外国人がたくさんいるようです」

「えっ?日本に忍者はいないの?」

ジェニファーは首を傾げた。


「はい、いませんよ100年以上前に

いなくなりました、サムライと一緒に」

「そうなんだ、つまらない」

ジェニファーは寂しそうな顔をした。

「あのう、團さんですか?」

背の高い男が亮に声をかけた。


「はい、團です」

「櫨場俊夫です」

櫨場は深々と頭を下げた。

「ジェニファー・パトリックです」

櫨場俊夫とジェニファーが挨拶を終えると亮が話しをした。

「すみません、ボストンで亡くなった佐藤敦子さんの件で

 パトリック刑事の聴取の通訳に来たんですけど

 英語の堪能な櫨場さんには必要ないみたいですね。あはは」

亮は櫨場の顔色をうかがいながら笑った。


「いいえ、たとえ自分が悪い事をしていなくても警察と話をするのは

いつも嫌なものですよ。團さんがいると安心します」

「そう言われるとありがたいです」

亮が頭を下げるとジェニファーが櫨場に話を聞き始めた。

佐藤敦子との関係、アメリカで会った事があるか、

殺人があった日のアリバイを聞いた。


それに対して、櫨場は佐藤敦子との

関係は上司と部下の関係であり

アメリカに来ると言うメールが来ただけで、

殺人の有った当日は会議があって

ボストンに行く時間が無かったと言った。

櫨場が言った事をすべてメモに取った後に亮が櫨場に聞いた。


「櫨場さん、背が高いですがスポーツは

何をなさっていたんですか?」

「私はこっちのハイスクールでバスケットボール

日本の大学ではバレーボールを

 やっていました」

「そうですか、高校までアメリカに?」

「ええ、父がこっちの商社に勤めていましたから」

「それでアメリカに戻られたんですね」


「はい、アメリカの方が自分の性格に合っているようです」

「そうですね、僕もアメリカ人の方がはっきりしていて好きです。

ちなみにご家族は?」

「ハイスクールの娘と大学生の長男がいます」

「一緒にお住まいですか?」

「妻と娘は一緒にこちらに住んでいますが、息子は日本です」

「さびしいですね」

亮が言うと櫨場は少しの間目を伏せた。それは家族と別れている

寂しさだろうか。亮は気の毒に思った。


「ありがとございます」

ジェニファーは立ち上がって櫨場と握手をし、亮も続いて握手をした。

「亮、どうだった?」

時々日本語で会話していた亮たちの会話が理解できなかったので

ジェニファーは気になっていた。

「はい、スマートでなかなか素敵な中年ですね」

「あら、亮は男も好きなの?」

「ち、違いますよ。それに『も』と言うのはどういう意味ですか?」

亮はジェニファーに女好きと勘違いされるのが嫌だった。


「それにしてもあなたの言う通り彼の指は太かったわね」

「はい」

亮はメガネ型カメラで撮った映像をスマフォに繋いで確認した。

「このデータを検視官のカールに送ります」

「一致するかしら?だってあなた犯人は学生だって言っていたでしょう」

「僕の間違いかもしれません、殺人とレイプの犯人が違うような気がします」

「亮の推理が間違っていたと言う事ね」

「そうですね」

亮は初めて自分の間違いを認めた。


「じゃあ、犯人は誰?」

「まず、バレーボールをやる人間像を推測しましょう」

「ええ、身長185cm以上の指の太い男性、

そしてレイプ犯はあそこが大きい」

ジェニファーそう言って顔を赤らめた。


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