剣道
サンドラは素人の亮が踊りの指摘をするので高慢な男に思えた。
「あなたは踊れるの?」
「いいえ・・・でもある男性が失業中ニューヨーク美術館で
毎日ダンスのビデオを観ているうちにダンスを理解して、有名な振付師に
なったそうですね」
「そうよ、良く知っているわね!」
サンドラは驚きの声を上げ亮の前身と股間を見つめた。
「ところでナオコはあなたの彼女?」
「いいえ、友人です」
亮は顔を横に振った。
「そう、素敵なカップルに見えるけど」
「そうですか」
亮は尚子を女性と意識した事が無かったので
カップルと言われると不思議な気がした。
「そうか、大学に彼女がいるんだ」
サンドラの決め付けたような言い方に
亮は反論をするのがめんどうなのでサンドラに
対して微笑むだけだった。
休憩の5分間、スタジオから一斉に
出て来た女性の中に尚子を見つけた亮は手を小さく振った。
「あと1時間レッスンがあるけど大丈夫?」
「もちろん、観ていて楽しいですよ」
「そうよね、みんなグラマーだもの」
尚子は少しすねる振りをして言った
「いや、そういう訳ではなくてみなさんとても上手です」
「うふふ、分かっているわ。亮も歌だけじゃなくて踊りをやれば良いのに」
「歌だけで充分です」
その時、一人の男がスクールに飛び込んできて
受付のテーブルを叩いて大きな声を出した。
「アイリーンはいるか?」
サンドラは驚いてボトルから水を飲んでいるヒョウ柄の
パンツをはいた女性を指差すと
男はまっすぐ女性のところへ早足で歩いて行った。
「アイリーン、どうして俺のところへ来ない。こんなに好きなのに」
男はベルトに差し込んでいたピストルを取り出し
アイリーンにそれを向ってまっすぐ歩き出した。
「あなた誰?助けて、お願い」
アイリーンは名も知らぬ男にピストルを突きつけられて両手を挙げて
後ずさりをして窓ガラスに背中を貼り付けた。
周りにいた女性たちは悲鳴を上げてスタジオ飛び出して来た。
「尚子さん、携帯のメモリーに入っているジェニファーさんに連絡して
現状を説明してください」
亮は尚子にスマフォを渡すと男から目を離さすに尚子の首からタオルを抜き取り
スタジオの入り口にあったモップの柄を持って男のところへ走った。
「ヘイ」
亮が声をかけると、まさかピストルを持った
人間にかかってくるとは思わなかった
男は振り返って亮にピストルを向けた瞬間、
「籠手!面!胴!」
亮の体は数メートル飛び120cmのモップの柄は男の手首を叩き続いて
男の天頂部強く叩きそれを返して男のミズオチを突いた。
男は一瞬で気を失い大の字になってスタジオの床に倒れた。
「大丈夫ですか?」
亮はアイリーンに声をかけると尚子から借りたタオルで
気を失った男を後ろ手に縛った。
「亮、ジェニファーさんに電話を掛けたわ、
すぐに警察に連絡をするので危険な事はしないでって」
「と言ってももう捕まえちゃいました」
「うふふ、そうね」
尚子は犯人と戦う亮の2度目の姿を観て
ますます亮の事を好きになってしまった。
そこへ武装した警察隊が入ってきて受付にいるサンドラに聞いた。
「犯人はどこですか?」
「突き当りの窓の所です」
サンドラの指差したところに亮が立っていたので
警官は亮を取り囲んだ。
「フリーズ」
警察隊は一斉に亮に銃を向けうつぶせにして
手錠をはめ両腕を掴まれ立たされた。
「違います、犯人はこっちの男です」
両腕を掴まれた亮は倒れている男をアゴで指したが
その男も気を失ったまま手錠をかけられ連れて行かれた。
「違います」
尚子は警察官にしがみついた。
アイリーンも何台もパトカーが停車している外に出て警察官に訴えた。
「違うって言っているだろう!このボケ!被害者は私なんだ」
アイリーンが警察官を蹴飛ばすと刑事がアイリーンに声をかけた。
「恐れ入ります、話を聞かせていただけますか?」
刑事は身分証をアイリーンに見せた。
「コナーと申します」
「私、アイリーン・ヨーク。あの男が突然私を襲ってきたの」
「その男とはどういう関係ですか?」
「それが全然あった事も無いのに『どうして自分の所に来ない』って」
「ストーカーですかね」
「ええ、ステージに立った時熱烈なファンレターを貰った事があるけど」
「おお、ミュージカルスターですか」
コナーはボソボソ言ってメモを取った。
「いいえ、オフブロードウェイですけど」
アイリーンは恥ずかしそうに言った。
そこへ尚子はコナーにしがみついた。
「彼は、日本人の團亮はアイリーンを助けてくれたのよ」
「何!團亮だって」
「そうよ、連続誘拐犯のジェフ・ネルソンの事件で
ニューヨーク市警が表彰した男じゃない」
「そうか、團亮か。まずい!」
コナーは近くに止めてあったパトカーのマイクを手に取った。
「コナーだ!日本人を連れて行った車両、
その人は犯人じゃないすぐ手錠を外して
こちらに戻ってくれ」
そこにジェニファーが来てコナーにボストン警察の身分証を見せた。
「すみません、私の仲間の團亮いるはずなんですが」
「申し訳ない、今戻ってくる」
「申し訳ないって?」
「犯人と間違って連れて行ってしまったんだ」
「どうして?」
ジェニファーがコナーを睨み付けると手を広げて首をすくめた。
「まさか、警察が来る前に一般人がピストルを持った
犯人を捕まえるとは思ってもいなかったんで」
コナーとジェニファーの会話を聞いていた、
尚子がジェニファーに声をかけた。
「ジェニファーさんですか?」
「ああ、さっき電話をくれた・・・」
「白尾尚子です」
「スクールで何が起きたの?」
「はい」
尚子はジェニファーとコナーに亮が犯人を捕まえた様子を話した。
「なんて無茶な!もし犯人が團を撃ったら命を落としていたぞ」
コナーは亮がいくら表彰を受けた人物でも素人である亮の無謀な行動を嘆いた。
「そうね、亮をもっと鍛えなくちゃ」
ジェニファーはコナーの言葉に反応してつぶやいた。
目の前に止まったパトカーから亮が降りてきた。
「申し訳なかった、團さん」
亮に駆け寄ってコナーが謝った。
「大丈夫です」
パトカーに中で亮を知っている警察官が間違いに気づき
手錠を外しスクールの中で起きた事を話していた。
「ありがとうございました」
アイリーンが亮の前に立って亮に礼を言った。
「いいえ、とんでもない」
亮は美人のアイリーンに見つめられ恥ずかしそうに答えた
「実は私も亮に助けられたのよ」
尚子がアイリーンに言うとアイリーンは目を丸くして聞いた。
「本当!」
アイリーンは亮に改めて礼を言うと尚子は亮に手を振って行った。
「じゃあ、今夜ね」
「かわいい子じゃない、尚子さん」
ジェニファーが亮の肩を叩いた。
「ジェニファー、今夜は三人で食事をしましょう」
「いいけど、二人じゃなくていいの?」
「ええ、二人だと緊張しますから」
「私とじゃ緊張しないの?」
ジェニファーが亮の顔を覗き込んだ。
「さあ、事情聴取があるんでしょう。ニューヨーク市警に行きましょう」
亮はジェニファーの言葉を無視して市警に行くように誘った。
「わかったわ、15時までに片付けないとね」
「はい、すみません」
亮は犯人が運ばれたニューヨーク市警に行く
とコナーが待っていた。




