バスケットボール
「パッキンを買ってきます、近くに金物屋さんは?」
「車で10分のところにThe Home Depot
(ホームセンター)があるわ」
「分かりました、すぐに行ってきます。パティは?」
「お買い物へ行っているわ」
「じゃあ、急いで行って来ます」
亮は車に乗って走り出しホームセンターに
着いてパッキンを探していると
店員が声をかけて来た。
「何かお探しですか?」
「蛇口のパッキンを」
亮がはずして持ってきたパッキンを店員に見せると
店員は同じパッキンを見つけてくれた。
「ありがとう、ジミーさすが実家が金物屋さんだね」
亮は笑顔で店員に礼を言った。
「えっ?」
店員のジミーは突然自分の事を言われてあっけに取られた。
「おはよう、ジョアン。日本語の勉強なら僕が教えるよ」
亮はレジで働いている女性に声をかけた。
「本当、うれしい。どこで会ったかしら?ごめんなさい覚えていないわ」
ジョアンは嬉しそうに微笑んだ。
「忘れちゃったかな?ハーバード大のダンです」
そう言って亮がお金を払うとジョアンがメモを取りだした。
「待って、電話番号教えて後で連絡するわ」
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亮がパティの家に付くとパティが帰っていた
「すみません、すぐに直します」
キッチンに入った亮はパッキンをつけながらある事に気付いた
「これでだ、ねじっているんだ」
独り言を言って修理を終え蛇口から水を出した。
「ありがとう亮、すぐにお昼ご飯を作るわ、コーヒーを飲んで待っていて」
アリスは大好きな亮が蛇口を直してくれて頼もしく思った。
亮はアリスに入れてもらったコーヒーを手に持って居間の椅子に座った。
「亮、ありがとう、蛇口を直してくれたのね」
「パティ、今ホームセンターに行って面白い事に気付きました」
「どうしたの?」
「すれ違う人が知り合いばかりなんです。一方的だけど」
「そうか、学生の名簿を全部記憶したからね」
「はい、だからレジの女の子に声をかけちゃいました」
「うふふ、ボストン中の3万人の女子学生をナンパできるわね。
アプローチの話題がいくらでもあるもの」
「確かに、ジョアンは日本語を教えると言ってしまった」
「わあ、最低」
パティは亮をにらみつけた。
「それより、ぼんやりとわかった事があるんです」
「何?」
「人の首の絞め方です」
「怖い!」
パティは体を震わせた。
「パティ、僕の仮説を立証するために大学に行ってみます」
「私も行くわ、おばあちゃんの作ったビッグなハンバーガーを食べたらね」
パティは笑いながら指を広げた。
~~~~~
大学に行った亮はフットボール部の練習をパティと一緒に観ていた。
「パティ、フットボールの連中は100kg近い握力が強くなきゃできない」
「あっ、本当だ。タックルした後も相手をがっちり握っている」
「あれはホールドで長い時間物を握る力が無いといけない」
亮は佐藤敦子の首に残された扼殺痕を思い浮かべた。
「あのボールを投げる握力は?」
「ピンチ力瞬間的つまむ力やクラッシュ力握るが必要になる」
「そうか、亮はスポーツにも詳しいのね」
「やっぱり違うなあ・・・・パティ、次に行きましょう」
亮はパティとバスケットボールの練習を観に行った。
「亮、観て彼たち手が大きいわ」
「ええ、でも握力がやはり必要です。
ゴールへ投げた時の手首のスナップが凄い」
「うん、うん」
パティは練習を観て喜んでいた。
「パティはバスケットボールが好きなんですね」
「ええ、大好き」
アメリカ人は野球とフットボールとバスケットボールが好きで
人気のスポーツだ。それぞれシーズンがあまり重なっていない
為にファンがそれぞれ定着する。
「あのブルーウエアの男性が素敵」
パティは指を刺してプレイを目で追っていた。
「彼はコネチカット州のハートフォード出身の3年生。アール・バックスです
出身高校のハートフォード高校時代はキャプテンで何度も優勝しています」
「亮、本当に全部覚えているの?」
「ええ、チアリーダーのジュディもメアリーも」
亮が指差した。
「うふふ」
パティは学校の職員ですらできない事を
亮がやっている事がとてもおかしかった。
「パティ、彼に声をかけましょうか?」
「彼を知っているの?」
「まさか、知っているのは彼の経歴だけですよ。でも彼はそろそろ・・・」
亮はそう言って自分の持っていたバックの中を探っていると
アールが転倒した。
「ほら来た。パティ行きます」
亮はパティの腕を引いて客席からベンチの
コーチのジム・ガボットのところへ行って声をかけた。
「すみません、ジム」
「ん?君はダンじゃないか?図書館を救った男の」
ジムが亮と握手をすると亮はそれを受け流してアールの足首を見た。
「はい、僕は理学療法士の資格を持っています。
アールの足を診てあげたいんですけど」
「ちょうど良かった、今日はトレーナーが休みだったんだ、頼む」
「はい」
亮はアールに指示をすると仰向けに寝させた。
「アール、この右足癖になっていないか?」
亮は足首の筋を親指で探り患部を探してアールに言った
「はい、時々痛みます」
「それでジャンプして着地の時足首の角度が変だったんですね」
亮はバックからチューブを取り出して茶色のクリームを塗った
「パティ、このクリームが透明になるまで伸ばしてくれないか?」
「はい」
パティは亮から引き継ぐとアールの大きな足を持って微笑んだ。
「ハーイ、パティです」
「アール・バックスです」
亮はアールが脱いだ靴の中を覗いたり上からヒモの長さを測ったり
落としたりしていた。
すると徐に、バックからティッシュを
取り出しインソールの下にそれを入れた。
「亮、終わったわ」
パティは不思議な行動をしている亮に声をかけた。
「ありがとう」
亮はそう言ってアールの足にテーピングを施した。
「あっ、トレーナーと巻き方が違うんだけど大丈夫か?」
アールは始めて会った亮の能力を信じていなかった。
「はい、 これは日本の忍者巻きと言って外側に曲がった足首の
矯正の為に内側に強く巻いてあります、それとインソールの角度を変えたので
ダッシュしやすいはずです」
アールは亮を疑いながらシューズをはいて軽くジャンプをすると
驚いたように亮の顔をジッと見た。
「ダン、凄い全然痛くない」
アールは走りながら仲間のボールを受け下から上にすくい上げるように
レイアップシュートをした。
「わお、飛んだ!」
コーチのジムは声を上げて拍手をした。
「ダン!」
アールは笑顔で亮とパティのところに走ってきてハイタッチをした。
「痛みが無いうえにジャンプ力が上がった」
「はい、足の蹴りが外に逃げずにまっすぐ出たので
ジャンプ力が上がったんだと思います。
インソールを後で調整してください」
「ありがとう、ダンまるで忍者になったみたいだ」
アールは軽い足で練習に戻った。
「ダン、凄いじゃないか」
ジムが亮の肩を叩くと亮は軽く頭を下げた。
「ところで、バスケットボールの選手の握力はどれくらいありますか?」
「そうだな、フットボールの選手みたいに100kgは無いが70kg以上ある、
650gのボールを扱うんだ握力が無ければ一流になれない」
「そうですか、やっぱり・・・ありがとうございました」
亮は礼を言うとジムはテーピングの効果が良くて思わず亮に頼んだ。
「ダン、うちの選手は怪我が多いんだ、コンディショニング
トレーナーの手伝いをしてくれないか?」
「良いですよ、こちらのやり方とかなり違いますが」
「それでも結果が良ければ良い、そうだ電話番号を教えておこう、
時間が有るときに電話をくれ」
「電話番号は知っています。じゃあまた」




