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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
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取引

「バレーボールです」

妙子は考える間もなくすぐに答えた。

「バレーボール」

亮はバレーボールと聞いてすぐに櫨場俊夫の事を思い浮かべた。

アメリカではともかく日本ではアイドルグループの応援もあって

男子バレーボールは人気があり、美人が多くヒップラインを露わにした

ウエアをセクシーな女子バレーボールも写真週刊誌をにぎわせている。


ただ、身長が高いほど優位なスポーツ故に

日本バレーボールには限界があるのは事実である。

「あのう、團さんメルアドの交換していただけますか?」

「ええ、僕も聞こうとしていたところです。ぜひ」

「ありがとうございます・・・」

妙子は何か言いたそうだったがそれを我慢している様子だった。


亮たちは食事を終えてMiyabiを出た。

「亮、どうする?もう少し飲んでからにする?

せっかくの金曜日だし」

「そうですね。クラブへ行きたいですね」

亮は尚子の誘いに乗った。

「クラブか~どこへ行ってもいっぱいだけどいい?」

「はい」

亮はそう答えてジェニファーの顔を見て笑った。


そこに劉翔記から電話がかかって来た

「亮、今何処にいる?」

「ニューヨークのブライアン公園前のMyabino前だけど」

「おお、やはりニューヨークにいたか。

僕たちも近くにいるから来てくれないか?

サークルラインの船着き場だ」

「僕たちって?」

「文明も一緒だ。大事な話だ」

「分かった。すぐに行く」


「尚子さん急に友人がニューヨークへ来たので

会いに行ってきます。すみません」

「部屋のキーもっているわよね」

「はい」

「アマンダとアイリーン私の部屋に泊まるかも」

「ああ、いいですよ」

亮はジェニファーにも説明した。


「亮、大丈夫危険じゃない?」

「大丈夫です。二人とも

中国人の友達でカンフーの達人ですから」

「そうそれならいいわ。じゃあ明日の朝」

「はい、連絡します」

「鈴木さん、日本に帰ったら会いましょう」

亮は手を振ってタクシーに乗った。


サークルラインはウエスト42ストリートを行った突き当りにあり

自由の女神や海から観るニューヨークの摩天楼など

ニューヨーク湾観光クルージングはここから出発する。

亮がサークルラインに到着してタクシーを降りると電話がかかって来た。


「亮、降りたら左方向リンカーントンネルへ向かって歩いて来てくれ」

亮はそう言われ周りの見ながら歩いていると

目の前の黒い日本車のセダンのドアが開いた。

「亮、こっちだ」

劉翔記がドアの前で手招きをした。

亮は小走りでセダンの後ろに乗った。


「お久しぶりです。日本車ですね」

亮は運転席の劉文明に挨拶をした。

「一番信用できる日本車に乗って来た。

実は今から取引があるんだ」

「何のですか?」

「レアメタル、ロジウム100kgだよ」

「ロジウムって白金族元素で相当高価な物じゃ」

「うん、それが高く売れそうなんだ。

1オンス(28.3g)2000ドルだ」

「それをどれくらい?」

「250ポンド(約113.4kg)だ」


「すると800万ドル。大金ですよ。大丈夫ですか?

 それにどうしてこんな倉庫街で取引をするんですか?」

「それはヤミ取引だからだよ」

「闇取引!」

「あはは、怪しいから亮も呼んだ」

「たった三人で?」

「ああ、そうだ」


亮はマフィアの取引のピストルの撃ち合いを

思い出し恐怖で心臓の心拍数が上がった。

ピストルの撃ち合いと言ってもこちら側は

何も持っていないので撃ち合いに

なる訳もなく、相手が本当にマフィアだったら殺される!!


亮と翔記と文明は11アベニューとW36thStの

交差した倉庫街の倉庫に入った。

両側に積み重ねられた荷物の間を低速で

走っていくとボス風の男を真ん中に五人の

男たちが立っていた。


「人数的に負けていますけど・・・」

「亮、怖かったら降りなくていいぞ」

文明が後ろを振り返って言った。

「大丈夫です、一緒に降ります」

「まあ、危ないと思ったらこの車に乗り込め

一応この車は防弾だから」

「はい」


亮たちが降りると文明はボスらしき男と話をして

ジュラルミンケースに入っている

お金を確認した後、文明は車のトランクを開けた。

相手の男たちはトランクからロジウムを降ろし替わりにお金の入った

ジュラルミンケースを入れレロジウムをボスの元へ持ってきた。


「OK」

文明とボスが握手をした時、亮の耳にエンジン音が聞こえた。

「文明、外に車三台が来た早く!」

亮は外の車のエンジン音を聞いて運転席に乗りエンジンをかけた。

文明と翔記が車に飛び乗るとバックのまま思い切り

アクセルを踏み、積み荷と積み荷の

車のリアを入れシャッターの開くのを待った。


「亮、どうするつもりだ」

文明はシャッターが開いたら武装した男たちが

何人も飛び込んで来る事を想像していた。

「シャッターが開いたら一気に出ます」

「もし前がふさがれていたらどうするつもりだ?」

「車が三台、立て及び斜めに両側のドアがぶつからないように

車一台分間隔を空けて止まっているはずです。

そして車はSUV、車高が高いので

車高の低いこちらのセダンならこっちが先に動けます」


「本当か?」

文明が首を傾げた。

「はい、あのエンジン音はF社のSUVの間違いないです」

亮はそう答えて笑った。

シャッターの音がガラガラ鳴りだすと亮はハンドルを握った。


「10秒で50cm、この車の車高が1475cmですから30秒で通過できます」

亮はアクセルを踏んでエンジンの回転数を上げた。

5秒経つと亮はDにシフトを入れ

「3.2.1 GO」

ホイールをスピンさせて車を走らせた。

「わわわ、ぶつかる」

文明が体をのけぞらせた。


「大丈夫、間に合います」

亮は自信を持ってアクセルを踏んだままだった。

車はシャッターの数ミリギリギリを通り過ぎ

風圧でシャッターをガタガタさせた。

亮は目の前の状況を確認して目隠しにヘッドライトを点けた。


「車幅1875cm、通過できる!」

亮の予想通りアメリカの大きなSUVは

しっかりと車間を空けていて

そこをすり抜け、ライトを消してウエスト36

ストリートに出て東へ向かった。


「開きますよ」

亮は先ほどシャッターが開く時間を覚えていて

アクセルを踏んでエンジンの回転を上げた。

ガラガラと音を立ててシャッターが

1m上がると亮はDレンジにシフトを入れ

ホイルスピンをさせて車をスタートさせた。

「頼む、空いていてくれ」

亮は目の状況を確認して目隠しにヘッドライトを点けた。


「やった!空いていた」

アメリカの大きなSUVはしっかりと車間を空けていて

亮はそこをすり抜けると「バリバリ」というマシンガンの音が聞こえ

何発かリアのガラスに弾が当たっていた。

「本当だ。防弾だ」


亮はライトを消してスピードを上げて12アベニューへ出た。

「文明、どこへ行けばいいですか?」

「マンハッタンのチャイナタウンだ。わかるか?」

「了解です」

ニューヨーク最大の繁華街ブロードウェイの東側にある

巨大な中国人街がチャイナタウンである。

「翔記、追っては?」

文明は追手が気になっていた。


「大丈夫だ。来ていない」

後部座席でずっと後ろを見ていた翔記が答えた。

「文明、あの様子だと派手な撃ち合いがありそうですね」

「ああ、我々の金を狙っていたのか、向こうのロジウムを狙っていたのか?」

「取引の情報を掴んだギャングがあわよくば

両方を狙っていたのかもしれませんね」

亮の答えに翔記、文明の二人は無言だった。

「まさか・・・」

文明は後ろを振り返って翔記と目を合わせた。


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