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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
68/132

フレイザー

「待ってよ、亮。私何がなんだかわからないわ」

~~~~~

「フレイザー警視、日本の警察からメールが届いています」

女性の職員がフレイザーに報告にやって来た。

「何て書いてある?」

「それが全部日本語でダン宛に」

「そうか、さっき亮から連絡があったからもう来るだろう」

職員は怪訝な顔をして聞いた。


「警視、民間人に警察の情報を漏らして良いのでしょうか?」

「かまわん。彼はボストン警察が雇った日本人通訳だ」

「失礼しました」

職員はフレイザー警視ににらまれて慌てて部屋を出て行った

「こんにちは」

亮はフレイザー警視の部屋ドアをノックした。


「やあ亮、入りたまえ」

フレイザーは机の前にあるソファーに亮と

パティを座るように手で指示をした。

「コーヒーを飲むかね?」

「はい」

亮が返事をするとフレイザーは部下にコーヒーと

先ほど届いたメールを持ってくるように

内線電話で指示をした。


亮は受け取ったメールを見て言った

「なるほど」

「何かあったの?」

パテは亮の見ている書類を覗き込んだ。

「佐藤敦子さんの元上司の櫨場俊夫ハゼバトシオ

ニューヨークにいるそうです」

「ハ・ゼ・バ・ト・シ・オ?」

「はい、僕が今植林をしているバイオ燃料のハゼです」

「それがどう関係するの?」

「あはは、関係ないですね」

「なーんだ」

亮が珍しく関係のない事を言ったのでパティはがっかりしていた。


「それで身長が185cmで血液型がO型です」

「日本人の割りに大きいわね、顔写真は?」

パティは亮の頭の上に5cm手を伸ばして確認した。

「退職したので会社のほうには残っていないそうです」

「わかった!そいつが犯人だ」

パティが叫んだ。


「亮、それで何か分かったか?」

フレイザーははしゃいでいるパティを尻目に落ち着いた雰囲気で亮に聞いた。

「この櫨場俊夫が気になりますのでニューヨークに行ってみようと思います」

「そうか、民間人の君じゃ動きにくいな、捜査員の誰かをつけよう」

「お願いします」

亮が嬉しそうにするとフレイザーは

亮が何かを見つけたような気がして聞いた。


「それで他に何か分かったか?」

「はい、扼殺の方法です」

「扼殺の方法だって?」

フレイザーは聞きなおし死体検案書を開いた。

「はい、首の締め方なんです。左手を上に右手を添えるように

 首を圧迫しています」

「ああ、犯人はおそらく左利きだろう」


「ええ、咽頭隆起(のど仏 Adam‘s Apple)が潰れ、

頚椎が骨折つまり常人と同じなんです」

「それのどこがおかしい?」

フレイザーは亮の言っている意味が分からなかった。

「もし殺人を犯した者が、巨漢のスポーツ選手として

行為中の興奮状態で首をしめるとしたら、

圧し付けるより閉めつけるような、すると首の両側に

圧迫痕がもっと強く残るはずです」

亮は部分の首を絞めてみせた。


「なるほど」

「ところが、今回の犯人は圧し付けているんです」

「つまり、行為中に興奮して女性の首を片手で締める事があっても

 両手を使う事は無いという訳か、なるほど良く思いついたな。ははは」

フレイザーは、亮はかなりの女性関係があると思って笑った。

「はい・・・・」

「つまり、犯人には殺意があったと言う訳か」

「はい」

「わかった、すぐに検視官に相談しよう」

フレイザーは検視官を呼ぶと亮は佐藤敦子のホテルを聞いた。

「警視、佐藤敦子さんの泊まったホテルは分かりました?」

「うん、ビーコンストリート沿いのバックミニスタースイートホテルだ。

 レンガ作りで趣があって川が観えるいいホテルだ」

「男性の連れは?」


「うん、男が居いるには居たんだが、部屋の予約をしたのが彼女だったので

 確認しなかったようだ」

「フロントが気にならなかったと言うことは、

パスポートのいらないアメリカ人と言う事ですね」

「そうかも知れないな」

フレイザーが顎に手をやって考え込んだ。

「敦子さんは愛する男性と一緒に泊まる事ができてきっと

夢のような時間だったんでしょうね」

パティはその時の敦子の気持ちを感じていた。

「パティ、どうして好きな人と思えるんですか?」

「だってあのホテルは全部スイートでカップル専用ですもの」

亮は敦子が子供を堕胎し傷ついて、やっとの想いでボストンに

来て男性とボストンの市内観光をしている様子を思い浮かべていた。


「きっと幸せだったんでしょうね・・・」

亮が呟くと検視官入って来た。

亮は30代半ばの検視官のカール・レイノルズを紹介された。

亮は粗方自分の考えを述べるとカールは

天井を見た。

「なるほど、君の言いたい事は分かった。

しかし両手で締めると殺意があって

片手で締めたら過失だと言う裁判の判例は無い」

カールは亮の話に否定的に話した、そして間をおいた。

「面白い、頚椎の骨折の仕方によって犯人像を割り出し

犯人の殺意まであぶりだしてしまうなんて」

カールは手に持ったコーヒーカップを揺らして

笑い出した。


「カール、面白いだろう。亮は」

フレイザーは優秀な亮をまるで警察の部下であるかのように自慢した。

「はい、ハーバード大を救った謎の男は彼ですね、警視」

「ああ、そうだ。ニューヨークの女性監禁連続殺人犯を見つけたのも彼だ」

「本当ですか?どうやってあの犯人を特定したんですか?」

カールは亮にその方法を聞いた。

「あれは・・・非科学的な方法です」

亮は申し訳なさそうに答えた。


「あはは、亮は3万人の前科者を記憶してそこから割り出したんだよ。

 ハーバード大の時は本の位置のずれで爆弾を発見した。

彼しかできない方法だ」

フレイザーは手を広げて笑った。

「凄い!」

カールが唖然としていると亮が突然声を上げた。


「そうだ、ロバートには前科が有った。フレッド・カーペンターだ。

 ネバダ州カーソンシティ生まれ、32歳、詐欺で逮捕歴5回うち3回不起訴

 髪を金髪に染めていたから気がつかなかったんだ」

亮はそう言いながら、紙にペンを走らせフレイザーに渡した。

「警視、この男を前科者リストで調べてください」

「分かった」


フレイザーはすぐにニューヨーク市警に

電話をかけ資料を送ってもらうように頼み

メールを開いた。そしてその資料を覗き込んだ

カールが唖然として呟いた。


「本当だ、フレッド・カーペンター、ネバダ州生まれだ・・・」

亮はフレイザーの机に有ったパソコンでFacebookの敦子のページを開いた。

「パティ、この男だ。この男がフレッド・カーペンターだ」

亮は興奮をしてモニターを指差した。

「すごい、本当に記憶していたんだ」

三人はモニターを見て口をあけて言った。

「亮、フレッドが犯人でしょう」

パティは犯人と決め付けて言うと亮が答えた。

「いいえ、フレッドは身長が178cmですから犯人ではないです。

佐藤敦子さんとどうして写真を撮ったか聞くだけです」

「でも、この男どこに居るのかしら?」

パティが首を傾げるとフレイザーは厳しい顔をして答えた。

「それは我々の仕事だ!任せてくれ」


パティは普段優しい顔をしているフレイザーの

真剣な顔に畏怖の念を抱いた。

「警視、ひょっとしたらフレッドは観光客相手に

詐欺を働いているかもしれません」

亮はフレッドの行動を思い浮かべた。


「なるほどそうか、すぐに手配しよう」

フレイザーは亮の言っている意味が分かって

部下にフレッドを探すように指示をした。

「警視、空港の監視カメラの記録映像を見ること出来ませんか?」


「空港は民間の施設なんでね、空港に行かなければ見られない」

「そうですか、分かりました警視、僕は明日ニューヨークへ行きます」

「わかった、うちの捜査官を一緒に行かせたいんだがフレッドの捜査があるので

 ニューヨーク市警に頼んでおく。亮、かかった経費は後で請求してくれ」

フレイザーは時間以外にも金銭的にも亮に迷惑を掛けている事を気にしていた。


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