敦子の過去
「ではそのロバートを探し出して取調べをすれば良い訳だな」
「ええ、とりあえず彼に聞いてみる必要があるでしょうね」
「うん、そうだな。もうすぐ解剖の結果が出てくるの
で殺された時の状況が詳しく分かるだろう」
「はい」
亮は淳子が殺された時が悲惨な状況で無い事を祈った。
「どうしたの亮、浮かない顔をして」
パティが亮の顔を見て言った
「愛する男性と再会した女性が殺されて全裸で
公園に投げ捨てられるなんてとても悲しいです」
「ええ、気の毒に・・・」
パティも頭を下げた
「亮、今日は遅いから帰って明日進展が有ったら連絡する」
「はい」
「彼女の遺族は明日の午後に到着する予定だ、その時に通訳をしてくれないか」
「分かりました」
「助かるよ、亮」
フレイザーは亮に軽く手を振った。
亮とパティが警察を出るとパティが亮を誘った。
「亮、今夜は私の家に泊まっていかない、パパたちが会いたがっていたから」
「でも、泊まるほどじゃないですからちょっと寄っていきます」
「そうね、近いものね」
パティはちょっと残念だった。
「はい」
亮はアリスの足のマッサージをした後、パティの家族と話をした。
「そうだパティ、明日からしばらくアンナが家に泊まる」
「どうしたの?」
「ハーバード大学に不妊治療で来るそうだ」
亮はアンナが誰か知らないできょとんとしていると
パティがそれに気づいた。
「アンナは私の従妹よ」
「私の姉の娘です」
アーロンがそれにつけ加えた。
「ああ、そうですか」
亮はパティの顔を見てアンナも綺麗な女性だと確信していた。
「うふふ、ハーバード大の優秀な人の
精子提供を受ける人が多いそうね」
パティが言うとアーロンが冗談で亮を誘った。
「そうだ、亮も協力したらどうだ、きっと優秀な子が生まれるぞ」
「は、はい」
亮は精子提供の登録をしていると言えなかった。
「そうよ、亮の子ならきっと凄く優秀な子が生まれるわ」
パティは自分が亮の子供を産むことを想像して
興奮を隠せなかった。
「茶化さないでください、そろそろ帰ります」
「そうか、もう帰るのか?」
アーロンが残念そうな顔をすると亮はパティのほうを見て笑った。
「はい、明日どうなるか分からないので・・・」
「わかった、また遊びに来てくれ」
アーロンは亮と握手をして亮の肩を叩き
パティは亮を玄関まで送って話した。
「亮ごめんね、私仕事が有るので手伝えるのは夜だけだけど」
「気にしないでください、何かあったら報告をします」
「ありがとう、気をつけて」
「はい」
パティはハグもせず帰っていく亮にいつも寂しい思いをしていたが
特に警察署で緊張した今夜は思い切り抱きしめて欲しかった
部屋に戻った亮は佐藤敦子のブログを開き
1年前からのブログを最初から読み始めた
敦子が秋田から東京に出てきて会社で働き
上司に説教され給料が安く食べたいものを我慢して
生きていく寂しさが面々と書き綴られていた。
亮はブログを読みながら敦子がまるで自分の友達のような気がしてきた
「敦子さん」
亮の目は涙で溢れPCのモニターが涙で見えなくなっていた
亮はティッシュで涙を拭いて鼻をかみ朝6時にパティに電話をかけた
「どうしたのこんなに朝早く」
「すみません。パティ、女性は嘘をつきますか?」
「どうしたの急に?」
「殺された佐藤敦子さんの日記を読んで分かったんです、彼女が嘘をついていた事を」
「そりゃブログはバーチャルの世界だから多少自分を良く書くと思うわ」
「そうですよね、ひょっとしたらロバートはこの世に存在しないかもしれません」
「どうして?」
「一緒に写真に写っている男性が変なんです」
「待って、私も写真を見てみるわ」
「はい、写真をメールで送ってあります」
「あ、はい。準備がいいのね」
パティはメールを開いて写真を開いた
「亮、写真を開いたわ」
「了解、パティ写真を見ておかしくないですか?」
「ええと、ロバートが彼女の肩を抱いて笑っている」
「二人の距離が遠すぎませんか、敦子さんは彼の子供を妊娠した関係ですよ」
亮はローラとデビッド二人の姿を観ていたので違和感を覚えていた。
「そうね、とても恋人同士に見えない」
「きっとその男性は日記に書いてある男性じゃない」
「そうね、エンジニア見えないわ」
「ええ、拡大すると両方の耳たぶに穴が2つ、
染めたブロンドの髪も生え際から見ると
ブラウンだ。まるでロックミュージシャンだ」
「そうね、まじめな仕事に着いているようには見えない」
「じゃあ、彼女と付き合っていたロバートは?」
「うん、写真に載せられない男性だと思います」
「写真に載せられない男性?」
「ええ、本物のロバートは結婚していて敦子さんと不倫関係だったと思います」
「えっ。そんな・・・」
パティにとって男性が他の女性と不倫すると言う事は考えられなかった。
「パティ、信じられない事のように思えるけど日本ではこの手の関係が多いんです
そんな日本人女性を狙って六本木に遊びに来る外国人も多い」
「日本の女性たち不倫が嫌じゃないの?それとも遊び?」
「うーん、難しいですね」
良子と失意の別れ、男女関係の深さを良く知らない亮にとって
それ以上の事をパティに説明できなかった
「ふう」
パティはそれを聞いて大きくため息をついた
「じゃあ、フレイザー警視から連絡が有ったら電話をします」
「はい」
~~~~~~
亮がフレイザーの連絡を受けたのが大学の
キャンパスを歩いているときだった。
「亮、解剖の検視結果が出たぞ」
「分かりました、それで暴行の後は?」
「あったよ陰部がかなりひどい裂傷だ」
「では、犯人は敦子さんの彼じゃないですね」
「おそらく」
「後で詳しく話しますが、フェイスブックに載っていた
写真は敦子さんの彼ではないようです」
「ん?」
「二人の写真は恋人どうしてはありません」
亮が言い切るとフレイザーはなんとなく亮の言っている意味が分かった。
「なるほど、写真はヤラセか」
「ええ、たぶん」
「もうすぐ、佐藤敦子さんの遺族がこっちへ来るので通訳頼めるか?」
「はい」
~~~~~~
亮がボストン警察署に着くとフレイザー警視が死体検案書を見せてくれた
「扼殺で犯人の身長は185cm以上。ずいぶん大柄ですね」
「ああ、扼殺痕の後から手の大きさの後から身長を割り出した」
「ん?」
亮が敦子の首に残った紫の痕を見て声を出した
「どうした?亮」
「ええ、ずいぶん指の太い犯人ですね」
「うーん、こんなもんじゃないか?」
「そうですか・・・」
亮は指痕の太さが気になっていた。
まもなく佐藤敦子の母親と姉が到着した
亮は二人を霊安室に案内し佐藤敦子本人と確認して泣き崩れる二人に対して
警察の質問を通訳する事しか出来なかった。
母親の佐藤洋子は敦子がアメリカに来ていた事も知らず
アメリカ人の恋人が居た事などは寝耳に水の話だった
「お姉さん、敦子さんが妊娠で流産した話は聞いていますか?」
亮は敦子の3つ上の姉、恵子に聞いた
「いいえ・・・ただ1ヶ月くらい前体調が悪くて会社を休んだ話は聞きました」
「そうですか」
「敦子を妊娠させた男性が敦子を殺したんでしょうか?」
「そうは確定できませんが敦子さんのアメリカ人の彼を警察は全力で捜しています
ただ、全裸で公園に放置されていたので、なんの証拠も見つからないんです」
「死因は?」
恵子が亮に聞くと亮は直ぐに答えた。




