幸子
「場所はニューヨークですよね、ボストンから車で4時間かかりますが」
「飛行機なら1時半、LCCなら1万円足らずだ。それにニューヨークに
アパートを借りて上手くやってくれ、ハードだがお前なら出来るだろう」
「はい、やってみます」
「亮、ハーバード大で無理やりトップを取る必要ないからな、
時間が有ったら彼女とデートでもしろ」
「お父さんハーバード大で主席は無理ですよ、
世界中から来た優秀な学生だらけですから」
「そうか、てっきりトップを狙っているかと思っていた」
秀樹の問いかけに答えないでいると亮は父に確認を取った。
「居眠り運転で事故をやったら大変だから
ニューヨークにアパートを借りてくれるんですよね」
「もちろん」
「友達とルームシェアリングしていいですか?」
「翔記君か?」
「いいえ、元AKK48の白尾尚子さんです。
彼女は来年音楽の勉強のためにニューヨークに引っ越したいらしいので」
「おお、いいぞ」
秀樹は元アイドルの尚子とルームシェアするのは大賛成だった。
「ありがとうございます」
「あはは、がんばれよ。しかし元アイドルとはうらやましいな」
「でもまだ彼女とはその話をしていませんけどね」
「きっと大丈夫さ」
「そうですかね~」
~~~~~~
「翔記、亮って半端じゃない男だな」
文明と翔記は飛行機でニューヨークに向かっていた。
「ああ、かなり頭がいい」
「ただ、問題は欲が無い事だ」
「それはしょうがない、まだ23歳だぞ」
「あはは、23歳それは若い」
文明は腹を抱えて笑った。
「まさか歳の男に我々の未来を託すとは面白い」
「うん、それで1つ問題がある」
翔記は暗い顔をして文明の顔を見た
「なんだ?」
「亮はとても無鉄砲だ、我々を助けるために
爆弾の有る図書館に入ったり殺人犯のいる家に
テニスラケットだけで飛び込んだり、まったく危険を感じていない」
「亮にはそれなりの勝算の事があってだろうが
それは危険な行為だ」
「しかも警察が亮の頭脳を利用しようとしている」
「なるほど警察がな」
「何か考えなくてはならないだろう、文明」
「亮に何か理由をつけてカンフーを教え込んだらどうだ、
ボディガードも必要かもしれない」
「それがいい、カンフーは暇があったら僕が教える。
ボディガードも必要な時は手配しなければ」
「あはは、世話のやける男だ」
翔記と文明は笑いながら手を握りあった。
~~~~~~~
ニューヨークに着いた亮は秀樹に連れられて各ブランドの責任者を紹介され
商品仕入れをして行った。
「どうだ。面白いだろう、こっちの商売も」
秀樹は亮を研究者の道からビジネス世界に連れて来たかった。
「はい」
父親の熱意を感じた亮は秀樹に質問した。
「お父さん、僕は欲張りでしょうか?」
「ん?」
「いい薬を作って病気から人を救ってあげたい、
美しい宝石を提供して女性に幸福を味わってもらいたい、
犯罪に巻き込まれた人を救ってあげたい」
「あはは、それが全部できる事に越した事はないな、
でもそれをこなせる奴はいないだろう」
「そうですよね、でも」
亮は秀樹に白尾尚子の事件を詳しく説明してフレイザー警視に
捜査協力の依頼を受けた事を話しした。
「亮、探偵は男のロマンだ、できるならやってみたらどうだ。
宝石屋の主人が探偵なんて小説みたいで面白いじゃないか」
「そうですね」
「ただ、アメリカは本物のピストルの弾が飛び交うところだ
危険な事はするなよ」
「分かっています」
亮も捜査協力と言ってもそこまで危険を犯す事はしたくなかった。
亮と秀樹はニューヨークの夜の街を歩いていると
目に前を美しい女性が通り過ぎた。
「おお」
秀樹が振り返ってその女性を見た。
「亮、彼女が今売り出し中のシンディと言うモデルだ」
「そうですか」
亮はそう言って振り返った。
「シンディは千沙子と知り合いらしぞ」
「さすがですね、姉さん」
「あいつのファッションセンスは半端じゃない、本当なら
こっちで勉強させてやりたかったんだがスタジオDが忙しくなってしまって」
「そうですね、忙しそうですね」
亮はブロンドのショートヘアにミニスカートから長い足を出して歩く
シンディと数年後運命の出会いをするとは夢にも思わなかった。
クリスマスムードのネオンがまぶしく輝く
タイムズスクエアの空に白い雪が降り始めていた。
「さあ、東京に戻ったらクリスマス商戦だ、しっかり売れよ」
秀樹は亮の肩を叩いた。
~~~~~~~
日本に帰った亮は休むまもなく朝一番に美宝堂に出社した。
宝石売り場のガラスケースを拭いていると
制服を着たショートカットの可愛らしい女性が亮に声をかけた
「おはようございます」
「おはようございます」
亮は雑巾でガラスケースを拭く手を止めて女性に挨拶した。
「私も手伝います」
「はいお願いします」
「うふふ、私の事覚えていますか?」
亮は幸子の顔をじっと見た。
「えっ?」
「岩倉幸子です」
「あっ、幸子ちゃん」
幸子はニッコリと笑った。
「久しぶりです」
「幸子さんはどうしてここに?」
「何度も亮さんの家に出入りさせてもらって
いるうちにお姉さんたちと親しくなって
ここでアルバイトさせてもらっています」
「そうか・・・お姉さん、弓子さんは?」
「アサダ飲料に勤めています。亮さんは色々有ったみたいで
姉とは疎遠になってしまいましたものね」
「あはは、知っていたんですか」
「はい、姉と秋山さんはキャビンアテンダント目指していて、
秋山さんだけがCAになって急に高慢な態度を取って
姉との仲が悪くなってしまったんです」
「そうなんですか・・・それで・・・」
良子と徹とのその後が気になっていた。
「ええ、あの徹って男とべったりで半同棲状態、
姉は去年彼と別れちゃって」
「じゃあ、みんなバラバラになってしまったんだ」
亮は一時的な思いで秀樹に頼んで秋山良子の
CAの試験を有利にさせた事を後悔していた。




