報復
良子は足元の旅行用のバッグに入っていた服を
逆さまにして中身を全部出した
「なによせっかく、行こうと思ったのに・・・」
良子は涙を流しながらタンスの引き出しから水着を出し
弓子に電話をかけた。
「弓子、軽井沢だめになっちゃった。伊豆へ一緒に行けるかな?」
「うん、船と民宿だからきっと大丈夫だよ」
「そうか、良かった」
「どうしたの?團さんと喧嘩でもしたの?」
「ううん、なんか都合が悪くなったんだって」
「そう、妹が行きたいって言っていたんだけどだめなのかな?」
「たぶん、凄く元気が無かったから」
「そうか・・・」
弓子は良子と亮の関係を探っていた
「そうだ、徹も喜ぶわ」
「えっ、彼も来るの?」
「うん、良子が来ないと言ったら現地調達だって落ち込んでいたわ」
「そうか、そうなんだ」
良子は徹にキスをされたり体を触られたりしていたので
一緒に行くのが不安だった
2日後の10時に弓子と良子と瑞江、佐田と来島と本田徹は東京駅から
踊り子号に乗った
~~~~~~~
軽井沢から目白の家に戻った亮は自分の部屋に閉じこもり
心配になった秀樹は部屋のドアをノックした
「亮、一緒にコーヒーでも飲まないか」
「はい」
亮はリビングへ行くと秀樹は車のキーを持っていた
「あれ?コーヒーは?」
「うん、サンシャイン60でランチでも食べよう」
「はい」
59階のレストランはとても眺めが良く
東京が一望に見渡せた
「なあ、亮。落ち込んでいるか?」
「いいえ、別に」
「ん?引きこもっていたんだろう」
「ちょっと調べものがあって」
「そうか、そうか」
秀樹はホッとした。
「でも、悔しいです。人を救って犯罪人扱いだから」
「うん、俺も五郎から報告を受けてそう思う。亮仕返しをするか?」
亮は黙って遠くを見ていた。
「この前の高田といい、田中の息子と言い。親の威厳で偉そうにしている
ガキどもが許せん」
「ええ、僕も自分が何不自由ない生活させてもらっている
立場ですが、そう思います」
「あはは」
秀樹は息子に言われて照れていた
「お父さん、仕返しをします。こんな道理が通らない世の中に」
「うん、うん」
秀樹は改めて自分の息子の優秀さに感激していた。
「お父さん、アメリカに留学させてください」
「そうか、決めたか」
「はい、ハーバード大学の経営学科に」
「経営学の勉強をするのか?」
「はい、幸いハーバードとMITは単位交換をしています。
MITで健康科学を勉強しようと思います」
「大学院じゃないのか?」
「東大の薬学部を卒業したら研究は自分でやります」
「そうか、うちの研究員に所属という事で動けばいい」
「そうさせていただきます」
「わかった、がんばれ」
「はい」
「ありきたりの言葉だが、お前は俺の誇りだ」
「ありがとうございます」
秀樹はご機嫌だった。
「さて、自分の息子が屈辱を受けてこのままでは
俺の腹の虫が治まらない」
「はい」
「これから先は、大人の対処をさせてもらう」
「どうするんですか?」
「まあ、任せておけ。これでもそれなりの地位も人脈もある」
「くれぐれも、原美咲さんを傷つけないようにお願いします」
「うん。分かった」
翌日、秀樹は探偵社に田中誠一の息子の調査を始めさせた
そして、團秀樹と警察庁の原警視正は銀座の
ローラン・ギャロスの一室で会った
「お呼びだてしまして申し訳ありません」
秀樹は原に深々と頭を下げた。
「いえいえ、総理から突然連絡があって驚きました」
「さっそくですが、お互い子供の父親としてのお話です」
「お宅の息子さんとうちの娘がお付き合いを?」
「いいえ、先日の軽井沢の事件の件です」
「事件?」
「やはり」
軽井沢で有った事件を説明すると原は溜息をついた。
「娘、美咲には体調を崩したとしか言われていなかった」
「それはお父上の立場を考えていての事でしょう」
秀樹は探偵事務所から届いた田中誠一の息子、
田中進次郎の資料を原に渡した
「うーん、かなり悪さをしているな」
原は資料を見ながら囁いた
「つまり、うちの娘が拉致されレイプされる寸前、
息子さんに助けていただいたというわけですね」
「はい」
原は警察の処理の悪さに怒りが込み上げてきた
「すぐに長野県警に連絡を取って詳しい情報を取ります」
「すみません、1つお願いが」
「はい」
「息子は、お嬢さんの事を思って自分を犠牲にしました、
こらからも息子の事は一切口に出さないでください」
「は、はい」
原は首をかしげた
その夜、原は美咲に話をした
「美咲、軽井沢での事詳しく話をしなさい」
「えっ」
「分かっているんだ、こちらに相手の調書が届いている」
美咲は顔色が変わった
「ごめんなさい、パパ」
美咲は詳しく事情を話した
「美咲、被害届けを出せ」
「嫌よ、恥ずかしいし未遂だったんだから」
「美咲、お前を拉致した男がどんなやつか知っているか?」
「えっ?」
「婦女暴行で3回も捕まっているんだ」
「そんなに?」
「被害者が三人もいるんだぞ、自分の意思に反して裸にされて
犯された女性たちを気の毒に思わんのか」
「き、気の毒だと思う・・・」
美咲は自分が犯されそうになった時の事を思い出して
鳥肌が立った。そして記憶の奥に男性二人が入ってきた
事を思い出した
「それが美咲、田中は逮捕されたがみんな示談で済んでしまっているんだ」
「そ、そんな・・・」
美咲が考え込んでいた。
「これを見てよく考えろ、被害の女性たちは
今でも男性が近づくだけで
体を震わせているんだ」
原は美咲に資料を渡しそれには警察の調書と
私立探偵の報告書も入っていた
「パパ、分かったわ、被害届出す」
「それに、今回傷ついたのはおまえだけじゃないだぞ」
「はい?」
「お前を助けた男だ」
「ああ、そうか落合先輩かあ」
「ん、落合先輩?」
原は秀樹に言われた事を思い出し口を噤んだ。
翌日、美咲は被害届を出し直ぐに警視庁捜査一課の刑事は
田中進次郎の部屋のチャイムを鳴らした
「田中進次郎だな」
「はい、軽井沢での拉致監禁容疑で逮捕する」
「逮捕?ば、馬鹿な。そんな事していない」
進次郎は大声で叫んで激しく抵抗した。
「弁護士、呼んでくれ」
「分かった」
刑事は進次郎の手に手錠をはめた
そして二人の刑事に挟まれて進次郎は
警察車両に乗せられていった。
「美咲、よく見ろ。あれが犯人のふてぶてしい態度だ」
原巌はあんな男に自分の愛娘が犯されそうになったのがとても腹が立ってきた
「分かりました被害届けだします。でもパパ、あの男の父親は衆議院議員だけど」
「だいじょうぶだ、どんなに圧力を掛けられても必ず起訴する」
「うん」
美咲は父親原巌を頼もしく思い自分の警察官僚の道を歩く事を決心した
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「亮、原さんのお父さんは警察官僚で田中進次郎を
トコトン追及するそうだ
もちろんお前の身の潔白を説明してきたぞ」
「ありがとうございます」
亮は大人の話早さに感銘を受けていた。




