誘拐
亮の夏は薬草園で薬草を収穫しそれを干す作業と夜は古文書に基づいた
薬の研究をしていた。
そして軽井沢のテニス部の夏合宿は自転車で行く事が出来た
久々のテニス漬けの毎日は亮にとってリフレッシュされた日々だった。
休憩でベンチに座っている亮の所に落合が来た
「團、かなりレベルが上がったな。秋のリーグ戦に出ないか?」
「でも、また途中棄権になるかも知れないんですけど」
「リーグ戦は団体戦だから日程が合えば出場すればいい」
「はい」
「それより、隣のコートは一葉学園だぞ。
うちと違ってなんか清楚な感じの女性たちばかりだ」
「そんな事言ったら失礼ですよ、うちにだって」
亮がテニスコートで一際目立つ美咲を見た。
「ああ、彼女は最高だ!容姿端麗、頭脳明晰おまけに家柄もいい」
「落合さん彼女を好きなんですか?」
「うんまあな」
「落合さんがんばってください」
「ありがとうな」
落合は亮の肩を叩いてコートへ戻っていった。
それと入れ替えに美咲が亮の脇に座った。
「團君、軽井沢の別荘に住んでいるの?」
「ええ」
「せっかくの合宿なのに寝食が別なら合宿の気がしないわ」
「でも、夜のミーティングに出ています」
亮は美咲の言っている意味がわからなかった。
「でも、明日の合宿の打ち上げくらいに出てよ」
「でも・・・」
亮はお酒のある席には出たくなかったが美咲の
強い言い方に仕方なしに返事をした。
亮がいい訳をしようとすると隣のコートから
一葉学園の女性が二人来て亮に声を掛けた
「すみませーん」
「はい」
「あのう、うちのコーチが捻挫してしまって
コーチをしてくれませんか?」
「僕がですか?」
「はい」
亮は自分を指差すと女性がうなずいた。
「その前に、コーチは?」
亮はコーチの元に走るとバックに入っているシップを貼り
テープで足首を固定した。
そのすばやさに一葉学園の部員が声を上げた。
亮は理学療法士の勉強をしていて
骨格、筋肉の勉強をしていて
コーチの足の具合はよくわかった。
「素敵!」
「コーチ、しばらく足を動かさないでください」
亮が言うとコーチが横を向いて亮に言った。
「ありがとう、君が隣のコートで
1番うまそうなのでお願いするように言ったんだ」
「ありがとうございます、お手伝いをします」
亮は落合の許可を取り20人の一葉学園テニス部の学生を
見て一人一人コーチをしているとたった
数時間で学生たちは上達していった。
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「あいつ、コーチがうまい!」
隣のコートで見ていた落合が
驚いていると美咲が感心していた。
「ええ、1番下手な子がちゃんと
ボールをコートに返すようになったわ」
「うん、しかもみんなしっかり
トップスピンがかかっている」
「どうしてあんなに教えて方うまいのかしら?」
「あいつの事だ、テニス教本を何冊も読んだんだろう」
「凄すぎ!」
美咲はすっかり亮に憧れていた。
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翌日、練習終了後打上げの準備で1、2年生は買出しに出かけた。
「團君、私先輩へのプレゼント用のらくやきを取って来る」
「はい、気をつけて」
亮は軽井沢駅で美咲を車から降し後輩とスーパーに向った。
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「すみません」
らくやきを持った美咲に後ろから来た
黒いバンの助手席の男が声を掛けた。
「はい」
美咲が振り返って返事をすると男は
美咲の全身の姿を見てニヤニヤと笑った。
「塩沢湖に行くのにはどうしたらいいかな?」
「塩沢湖バイパスのほうに出て右に曲がって左に入った所です」
美咲は男に道を教えた。
「荷物重そうだね、何処まで行くの?乗せていってあげようか」
男達は美咲にしつこく迫った。
「大丈夫です、迎えが来ますから」
「そんな事言わずに」
男が後ろを向いて合図を送ると
後ろのドアが開いて男が二人降りてきて美咲の口を塞ぎ車の中に
連れ込んだ
「猿ぐつわだ」
運転していた男が指示をすると
二人の男はすばやく美咲を動けなくなるように両手両足を縛った
「おお。これで今夜のおかず確保」
運転していた男が車を発進させた
スーパーから戻ってきた亮は待ち合わせしていた駅前に美咲がいないので
らくやきの店に行って美咲の事を聞くと荷物を持って帰ったという事だった
「あれ、先に帰ったのかな?」
亮が言うと後輩がため息をついた。
「待ちくたびれて先にタクシーで帰ったんですよ」
「そうか・・・」
亮は塩沢湖の傍にある合宿所へ戻ると
美咲は帰っていなかった。
「落合さん、原さんの携帯に電話をかけてください」
「うん」
亮が言うと落合はすぐに電話をかけた
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車の中では後ろの席で暴れる美咲の腕を掴みながら男は
美咲の顔を叩いた。
「おとなしくしろ」
一人の男は美咲の顔にナイフを当てた
すると美咲は体の力を抜いた
「畜生」
運転していた男が声を上げた。
「どうした?」
「ガス欠だ」
「しょうがねえ、スタンドに寄れよ」
「ああ」
4人の男達が乗った車はガソリンスタンドに入った
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「落合先輩、僕は原さん探しに行きます」
「当てはあるのか?」
「いいえ、でも重い荷物を持って歩いてこっちへ向うわけ無いので
タクシーに乗っていなければ誘拐の可能性があります」
落合は亮の冷静な判断にドキドキした。
「誰か一緒に連れて行くか?」
落合が聞くと亮は断った。
「いいえ、大丈夫です」
亮は駅前にいるタクシーの運転手とレンタルサイクル屋に目撃者がいるか
聞きに行くとタクシー運転手二人が美咲を目撃していた
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「いらっしゃいませ」
女性従業員の指示で車を止めた
美咲が乗っているバンの運転手は
無言で満タンを指示すると
従業員の女性は給油を始め、窓を拭いた。
その目に映ったのは後部座席で二人の男に
押さえ込まれている美咲の姿だった
女性従業員は怪しんでいた
清算を終えた男はすぐに走り出そうとすると
従業員が声を掛けた
「お客さん」
その車は急発進して逃げるように走り出した。
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「すみません、この辺りで脇に女性の
ヌードが描いてある黒のバンを
見かけませんでした?」
亮がガソリンスタンドで従業員に聞いた。
「見かけました、ちょっと前に塩沢湖の方向って走っていきました
品川ナンバーで乗っていたのは男性が4人と女性が、
体を押さえつけられていました」
やはり誘拐と確信した亮は女性店員に礼を言った。
「ありがとう」
礼を言って走り出そうとすると女性従業員は亮に言った。
「友人が後を追っています」
「連絡方法は」
「携帯で」
「番号を教えてください」
「0×03○○3・・・・メモをしなくていいんですか?」
「大丈夫です。雨宮さん」
亮は女性のネームプレートを見て車を発進させた。




