家庭教師
日曜日の13時に亮の家に来た弓子と妹の幸子は玄関の前で唖然としていた
「お姉ちゃん、ここホテル?」
「ううん、表札には團って書いてある」
「そうか、間違いない」
弓子がチャイムを鳴らすと亮の声が聞こえた
「どうぞ」
すると門扉のロックが解除され扉が開き
弓子と幸子は恐る恐る家の中に入って行った
「いらっしゃい」
亮が元気に出迎え応接室に通されると
そこから中庭が見えそこにテニスコートがあった。
「お姉ちゃんテニスコートがある」
「う、うん」
飲み物を持ってきた亮に弓子は妹の幸子を紹介した
「幸子さん、苦手な教科は?」
「英語と国語あと数学」
「分かりました、じゃあ飲み物を飲み終えたら僕の部屋で」
亮がそう言うと外国人の夫婦らしき男女が中庭で休んでいた
「あのう、團さんあの二人は」
「父の友達です、幸子さん英会話の勉強をするなら
彼らのようなネイティブ
と話をするのが1番いいですよ」
「ええ、でも・・・」
幸子がモゾモゾしていると秀樹が
トレーニングウエア姿で弓子たちの声を掛けた
「やあ、いらっしゃい」
「お邪魔しています、今日は亮さんに勉強を教わりに」
弓子と幸子が立ち上がって秀樹に挨拶をした
「そうですか、ところでお姉さんも勉強を?」
「いいえ、付き添いです」
「そうか、お姉さんテニスできますか?」
「少し」
弓子は恥ずかしそうに言うと秀樹は弓子を誘った。
「ちょうど良かった、一緒にテニスをしませんか?」
亮が幸子に勉強を教えている間
弓子は秀樹達とテニスをしたりおしゃべりをしたり
楽しんでいた。
弓子と幸子は亮に見送られ家を
満足そうな顔をして出た
~~~~~~~~
「幸子どうだった?勉強」
「それが凄く分かりやすくて、勉強の仕方も教えてくれたよ」
「よかったね」
「これからメールで教えてくれるって、お姉ちゃんは?」
「楽しかったよ、あの外国人夫婦アメリカの貿易商で
ニューヨークに住んでいるんだって」
「すごい!それに自宅にテニスコートがあるなんて凄いわ」
「家の向こう側が目白テニス倶楽部で團さんの家が経営しているんだって」
「お姉ちゃん、佐田さんより團さんの方が絶対良いよ」
「そうだね」
弓子は亮と良子が深い関係になっていない事を知っていて
亮を誘惑して奪う事を考えていた
~~~~~~~~~
その夜、秀樹は真剣な顔で亮に話をした。
「亮、お前卒業したらアメリカに留学しないか?」
「えっ?」
「今日来ていた。スミス夫妻と話をしたんだがお前と将来を考えると
一度アメリカに住んで勉強したほうが、メリットが有るだろうって」
「はい、考えておきます」
「おっ、珍しく即答しないんだな」
「ええ、卒業したらすぐにやりたい事が」
「なんだ、薬の研究か?」
「はい、糖尿と白血病の研究レポートを
大学の教授が興味を持ってくれたので」
「そうか・・・」
秀樹は多方面に才能ある亮がどう変わっていくか予想も出来なかった
「まあ、将来お前が立派なリーダーになってくれればいい」
「リーダーなんて無理です」
「そうかな、俺はそう思わん。お前には人を引き付ける天賦の才があると思っている」
「でも、友達は少ないですよ」
「それは、お前が拒否しているだけだ」
「拒否はしていません。ただ・・・」
「勉強の邪魔だからだろう」
「は、はい」
「じゃあ、好きなだけ勉強をしろ。勉強をして心に余裕が出来たら
友を探せ、本当の友達が見つかるはずだ」
「はい」
秀樹が言いたかったのは、心の弱い時期に出来た友達は
傷を舐めあって付き合うだけで、心に余裕が出た時の
友達は永遠の友達だと
「でも、学校2つも行って遊ぶ暇が無いな」
「別に良いですよ、遊ばなくても」
「おいおい、そんなことしていたら彼女に逃げられるぞ」
「お父さん、男性と女性って遊ばなくちゃいけないんですか?」
「うーん、それが問題だな。男性と女性は互いに気持ちが
相手を何処まで好きか分からないでいる、
それぞれ生まれも育ちも違うからな、それを共通の時間を
作ってお互いを解り合うんだ」
「はい」
亮はあまり理解できず返事をしないでいた。
「人は楽しい時に本当の心が出るんだ、硬いものが柔らかくなったり、
怯えていたものが取り去られたり、だから遊びは必要だ。
決して相手を騙すものではない」
「はい」
「問題は秋山さんも森田弓子さんも男を知っているが
お前はまだ彼女に積極的じゃないと言うことだ
だから求めるものが違うだろう」
「そ、そうですね」
「まあ、古文書でも見てがんばれ」
「はい」
秀樹は亮の背中を押したつもりが、のこの一言が亮の人生を変えてしまった
亮は3冊目の古文書つまりセックスのテクニックの解読を始めた
~~~~~~~~
翌日の月曜日に大学の前の喫茶店で良子と弓子が話をしていた
「良子、團さんの家すごかったわ。家にテニスコートがあるのね」
「そうなの?」
「あら、行った事のないの?ホテルみたいな家よ」
弓子は自慢気に話した。
「そう」
良子は悲しくて涙が出そうになった
「そうだ、またみんなで飲みに行こうって本田君が言っていたわ」
「そう」
良子は徹にキスをされた事を思い出しまた会ってみたいような
怖いような複雑な気持ちだった。
「ねえ、じゃあまたセッティングするね」
「わかったわ」
良子は仕方なしに返事をした
良子は寂しくなって亮の携帯に電話をかけても電源が切られたままで
メールを出すほどの問題では無く打ち始めて途中で切った。
5月1日、亮は良子を自分の出場するテニス大会に誘った
「秋山さんすみません、連休中に」
「ううん、團君の試合一度見てみたかったから」
亮はその言葉で心臓がドキドキするのが分かった。
「はい、がんばります」
生まれて初めて試合をする亮は不安を感じた。
相手が自分よりどんなに強いのか、それに対して自分の体力がどれだけ
持つのか、未知のものに対する不安がどれほど深いのかを感じていた
試合が始まると亮の動きが硬く簡単に1セットを落とした
テニスと言うスポーツは試合が始まると終わるまで誰とも話が出来ない
孤独なスポーツで亮は頭の中で祖父がなぜ自分にテニスをさせたか
初めて分かった。
「判断力とスピード」
亮はイメージングをしてアドレナリンが出るように自分を興奮状態にしていった
第2セット、第3セットを連続で取って亮は生まれて初めてテニスの試合で勝った
「おめでとう、ひやひやしちゃった」
良子は汗をかいた亮を頼もしく思った
「ありがとう」
そこへ、落合と美咲が来た。
「がんばったな團。相手はシード選手だからたいしたものだ」
「ありがとうございます」
「あっ、彼女か?」
落合が良子に気がついて聞いた
「ええ、まあ」




