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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
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2つのケーキ

「普通はどれくらいかかるんですか?」

「1文字2円くらい、1ページ2000文字だから4000円ですね。

 日本語だと500~1000ページそれを英訳すると倍くらいのページになります」

「えっ、そんなに!そうか、それで團さんのお願いを聞いてくれたんですね」

澄子が笑うと亮が首を傾げた。


「そうか、なるほど」

下村教授の気持ちが分かった亮は納得した。

「なんか損した気がしませんか?」

「いいえ。教授の論文を直接読める事は光栄だし、僕の知識になりますから、

 僕の方が得しています」

「そんなものかな?」

なんでもお金に換算する自分が貧しいのか、

亮が変な奴か?澄子はちょっと気になった。

1時間のフライトで8時半に羽田空港に着くと

澄子は一度部屋に戻り出社することにした。


「團さんは?」

「このまま大学に行って日本酒と銀線ブローチとデータを渡してきます」

「えっ?データって一晩で500ページの翻訳が終わったんですか?」

「はい」

亮は涼しい顔をして答えた。

「すごすぎる・・・」

澄子は何でもできる亮に驚いて帰って行った。


亮は羽田空港からリムジンバスに乗り丸の内線本郷三丁目で降り

赤門から入って一番奥の薬学部棟下村教授の部屋に入った。

「おはようございます」

亮はノックして部屋に入った。

「おお、来たな團君」

「お土産です」

亮はテーブルに両関酒造「花邑」を置いた。


「それから、奥様に銀線細工のブローチ、これが昨日頼まれた翻訳です」

「ありがとう何ページ分だ。全部終わりました」

「もう終わったのか?」

「あはは、徹夜してしまいましたが」

「そんなに無理をしなくよかったのに」

「昨日はありがとうございました。おかげで助かりました」

「うん、役に立ってよかった」

「ところで、論文で気になるとことがあるんですが?」


下村は亮に言われると素直に亮の指摘した場所を聞いた。

「うん、この部分の実験立証はしていなかった」

「それで、僕が加筆したページがありますから、参考にしてください」

「ありがとう、いつも助かるよ」

「ところで、團君はアメリカで何の研究しているんだ?」

「バイオ燃料です」

亮は今の研究の概論を下村に話をした。


「資金は?」

「とりあえず研究費としてアメリカの企業、

日本の企業、中国の企業から数十億円」

「しかし、自動車燃料は電気自動車にシフトしていくんじゃないか?」

「はい、石油の消費の3分の1は自動車燃料ですが。

 大気汚染の問題を抱えている中国からは発電用にオファーが入っています。

日本の発電の80%は火力発電ですからその中に入り込めば良いと思っています」


「それで製造原価は?」

「今のところ原料に入れる櫨の実が高価ですか、植林を積極的に行えば

 5年後には石油並みに下げる事が可能です」

「それはすごいぞ!」

下村は亮が26歳の若さで数十億円を集めたことに驚いていた。

「日本に戻ったら研究室に入ったらどうだ?」

「はい、考えておきます」

亮は忙しそうに教授室を出た。


そこへ亮の父親の團秀樹から電話がかかってきて

銀座の美宝堂に来るように言われ

社長室へ行った

「お父さん、今帰ってきました」

「お疲れ様、何をやっているか知らんが」

「すみません。秋田の銀線細工と交渉して来ました」

銀線細工のブローチを秀樹に渡した。


「おお、素晴らしい細工だ!」

「美宝堂で扱いたいと工房と話してきました」

「うん、わかった。担当者の連絡先を教えてくれ」

亮は名刺を秀樹に渡した。

「アメリカに戻ったらこの書類を仁に渡してくれないか?」

「はい?」


「仁の相続目録だ。今まで私が管理していたが仁も27歳だ。

 アメリカでまじめに仕事をしているらしいから

無駄使いはしないだろう」

「あはは、もう世界放浪はしないと思います」

「うん、そうだな、たまには遠慮しないで帰ってくるように伝えてくれ。

仁は今、ニューヨークの広告代理店に勤めているそうだ」


御神仁は秀樹の親友の研究者の息子で20年前に実験中の

爆発事故で両親を亡くし、團家で育てられた。

亮の良き理解者で本当の兄弟のように親しかった。

「そういえば、仁兄さんに言わせると両親は殺されたと言っていましたが」

「うん、新薬の研究中だったんだが爆発が起きるような

薬品は使っていないはずだったんだが」

「どんな研究だったんですか?」

「NKナチュラルキラー細胞を活性化させ人間を病気にさせない研究だ。

 もし成功すれば、人をガンやウイルス性の病気から守られるわけだ」

「それはすごいですね!どれくらい完成していたんでしょうか?」

亮はそれにすごく興味を持った。


「それが、研究資料が全く残っていないんだ」

「盗まれた?」

「その可能性もあるし密かにどこかに隠していた可能性もある」

「ひょっとしたら仁兄さんが知っているかもしれませんね」

「まあ、会ったらゆっくりと話をして来い」

「わかりました」

亮が社長室を出ようとすると秀樹が声をかけた。


「そういえば犯人は判明したのか?」

「サスペンスドラマじゃないですからそんなにわかりませんよ。ただ犯人は日本人です」

「そうか、そうなるとアメリカの手配で日本の警察が逮捕して日米犯人引渡し条約で

 アメリカに移送する事になるな」

「はい、ボストン警察で犯人を確定してからなので結構面倒です」

「まあ、勉学に影響の無いようにな」

「はい、わかっています」

亮はDUN製薬の問題解決の為にきっちりと勉強をしなければならなかった。


亮は週末のパーティに出でて友人を作って遊ばないのは、

勉学優先が大きな原因だった。

亮は順子たちの紹介の久保田早苗に連絡をして、

銀座ル・フルールで6時に会う事になった。

6時10分過ぎに店に入って来た早苗は店内をキョロキョロと見渡していた。

高校時代の顔を知っている亮は立ち上がって手を振った。


「あっ、遅れてすみません」

すっかり訛りが消えている早苗は敦子に増して美しかった。

「あっ、初めまして團亮です」

亮はDUN製薬の名刺を差し出した。

「私名刺・・・」

「大丈夫ですよ。女性はあまり名刺持ちませんよね。

実は僕も名刺を持ったばかりで

 出したがりなんです」

「うふふ」

早苗が口に手を当てて笑った。

早苗は初めて入った有名店ル・フルールの

メニューを真剣な眼差しで見た。

「お好きなものオーダーしてください」

「良いんですか?」

「はい、どうぞ」

そう言われて早苗はメニュー何度も見てしばらく悩んでいた。


「ああ、2つどうぞ」

「えっ?」

「ル・フルールは中々入れませんからね。

記念に2つ食べればいいんじゃないですか?」

「はい」

早苗は興味にある2つのケーキをオーダーした。


「実は僕も甘党なんです」

「このお店って並ぶんですよね」

「ええ、予約は当日だけ12時まで電話予約できます」

「そうなんですね」

早苗は店の電話番号をスマフォで写していた。


ケーキが2個来ると亮が話し始めた。

「早速ですが、敦子さんの付き合っていた男性って知っていますか?」

「以前は会社の上司だったらしいのですが、別れたって聞きました」

「その後は?」

「聞いていません」

早苗は強く否定した。

「そうか・・・」

亮ががっかりする様子を見せると

早苗は慌てて答えた。


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