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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
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すり

「あはは、彼女がいて一見ストレートに見えるけど

親しくなると豹変する隠れゲイもいますから

 気を付けてください」

「おお、それは怖いですね。人が信じられなくなります」

「我々団体競技の場合、アイコンタクトで相手の気持ちがわかるのは

その世界の気持ちに近いそうです」

そう言って直人は亮をじっと見つめると亮は思わず目をそらした。

「あはは、冗談です」

直人は笑って亮の肩を叩いた。


亮と直人は浅草寺でお参りを済ませ

仲見世通りを雷門へ向かって歩いている時

女性の悲鳴が聞こえた。

「スリよ。誰か!」

亮たちはその声にとっさに反応し後ろを振り返ると手に青い長財布を

持った男が人ごみの中をすり抜けてきた。

「直人両手を広げて道を塞いで」

「OK」


外国人体系の187cmの直人が両手を開くとその長さは

2m近くになり狭い仲見世通りの3分の2近くを塞いだ。

男はそれを見て右に避けた瞬間、亮は男の左手を掴み

肘の間に手を突っ込み折りたたんで後ろに回り両手を組んだ。


「痛てえ」

男は痛みのあまり膝を着きうつ伏せに倒れた。

「誰か警察を呼んでください」

亮が声をかけると財布をすられた女性が駆け寄った。

「ありがとうございます。これ私の財布です」

女性が男の持っている財布を取ろうとすると

亮はそれを止めた。


「待ってください、占有離脱物を取り上げるとあなたが

罪になる可能性があります。

こうして抑えておきますから警察が来るのを待ってください」

「はい」

女性が立っていると雷門脇の交番から二人の警官がかけてきた。


「どうしました?」

「あの倒れている男性が私の財布を取って逃げたんです」

女性が男と亮を指さした。

亮は男の腕を離し、男を立たせ警官に引き渡した。


「ご苦労様です、一緒に交番に来てもらえませんか?」

警官の一人が亮に声をかけた。

「どこですか?」

「雷門脇の交番です」

「わかりました。付いて行きます」

男のベルトを摑まえた警官と女性と話をしている警官の後ろを

亮と直人が付いて行くと亮は直人に小声で話した。


「直人、逃げます」

「えっ?どうして」

「後で説明します」

亮と直人は警察の後ろを付いて行くと

仲見世通りを右に曲がり仲見世柳通り

走り出し寿司屋横丁の鰻屋に入った。

「ここで、お昼食べましょう」

「は、はい」


「大丈夫です。制服警官はわざわざ店に入って捜査はしませんよ」

亮はうな重を頼むと直人に逃げて理由を話した。

「昔、誘拐監禁されていた女性を救いに建物に入って

住居侵入と暴行の疑いで捕まったんです」

「本当ですか?それはおかしいですよ。人を救ったんだから」

直人は怒りを露わにした。

「まあ、未成年だったので不起訴にはなりましたけど」

「そういえばさっきの逮捕術すごかったですね」

「いいえ、直人さんに手を開いてもらって

避けたところを捕まえただけです。

右利きの比率が90%、そのうち現実をとっさに

判断する左脳は右半身を動かしますから

ほぼ100%右側にいれば捕まえられるわけです。


「なるほど、亮さんはすごい」

「とんでもない、直人さんだって両手を広げながら右足を一歩踏み出して

 体を斜めにしていましたよ」

「あはは、分かっちゃいました」

「ところであの腕をねじり上げるやつ何と言うんですか?」

「サブミッション、関節技でチキンウイングアームロックとか

チキンアームフェイスロックとか言います」


「誰に習ったんですか?」

「ボストン警察です」

「ボストン警察!」

「まだ言っていませんでしたね。

ボストン警察で日本語の通訳をしているんです」

「ああ分かった。だから佐藤敦子さんの事調べていたんですね」

「ええ、全裸で公園に捨てられた無念さを

考えると早く犯人を捕まえてあげたいんです」

「ええ、気の毒です」

「何としても無念を晴らしてあげるために犯人を逮捕しなければなりません」

「敦子さんの事で思い出したら連絡します」

「はい、お願いします」


そこに秀樹から電話がかかって来た。

「亮、今度は何をした?」

「えっ、何も・・・」

「浅草で何かやらかしたそうだが」

「ちょっと、スリを捕まえて聴取から逃げました。それよりなぜ分かったんですか?」

「掏られた女性がうちのお客さんで礼がしたかったそうだ。

それに警察が聴取をしたいそうで

 探していたらしい。後で警察へ行った方がいいな」

「はい、ちょっと有名人と一緒に居たもので警察から逃げました」

「わかった、とにかく危険な真似はやめておけよ」

「わかっています」

亮はサブミッションを教えてくれたジェニファーに感謝した。


直人と別れた亮の頭は

中には鈴木妙子の事でいっぱいになった。

二転三転する妙子の証言、最初は佐藤敦子を目撃したと言う

証言、後にニック・リードに頼まれた答え、

木村健吾のファンと言っていたが櫨場直人の

ファンだったと言う、しかし直人の話では木村健吾と

連絡を取り合っていた。亮は木村健吾に会ってみたくなったが、

そこに真実を得ることは不可能だと思った。


「やはり警察じゃないとダメかな?」

亮はそうつぶやき雷門脇の交番に入り自分が逃げた理由を伝えた。

「実は隣にいた男性が有名人だったので、それに相手を捕まえたのは僕だけでしたから」

「はい、事情は分かっています。團亮さんですね」

「はい」

「財布を盗られた女性があなたの事を知っていた様子なので

 名前は伺っています」


「そうですか、良かった」

「もう、あんな事をしてはいけませんよ。逆に疑われますよ」

「すみません。ところで、スリの犯人は怪我しませんでした?」

「大丈夫でしたよ。見事な逮捕術だったそうですね。

何か格闘技をやっているんですか?

「はい、たしなむ程度ですが」

警官が調書を書き終えたのを見て亮は警察官に聞いた。

「すみません。殺人の捜査のお願いはどこに行けばいいですか?」

「何!殺人!」

「はい、人が殺されたんです」

「ど、どこで!」

警官が興奮のあまり立ち上がった。


「ボストンです」

「馬鹿にするな!捜査はボストン警察がやっているだろう」

「それが殺されたのが日本人の佐藤敦子さんなので」

「ああ、あの事件か・・・あなたが何の権利で言っているんですか?」

亮は知らなかったが、敦子が殺された当時日本でかなり話題になり

マスコミがこぞって取り上げていた。

「ボストン警察の通訳をやっているので犯人が気になって・・・


帰国したので調べてみようかと思いまして」

「何?犯人が日本人だと言うのか?」

「はい、可能性があります」

「なるほどなあ・・・ところでなぜ雷門の交番に相談に来たんですか?」

「すみません。ついでです」

「たしか先輩に警視庁捜査一課の刑事がいます、相談したらどうですか?」

「お名前は」

「確か、森源太さんです」


亮にとって森は聞き覚えのある名前だった。

「わかりました。連絡してみます。ありがとうございました」

亮は丁寧に頭を下げた。

「後程、感謝状が出ると思います」

「それは辞退します」

「金一封が出ますよ」

「本当ですか!いくらですか?」

亮は金一封がいくらか知りたかった。


「犯人の罪の重さで、警察署長賞と警視総監賞では金額が違いますよ」

警察官は亮の耳元で囁いた。

「なるほど、わかりました。楽しみにしています」

亮は小声で答えて交番を出た。


亮は雷門から向かい斜めにある亀十に好物の松風を買いに行った。

どら焼きで有名な亀十が作る松風はフワフワの黒糖で作った生地で

餡を包んだもので一個250円の物だった。

亮は店を出ると5個入り1パックを開け、1つ口に入れた。

「うん、美味い」

亮はどら焼きを買うために並んでいる人だかりの中、幼子を抱いた母親、

妊娠中の女性を見た。


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