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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
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直人

「敦子さんの事ですよね」

「はい、ボストンのクリストファーコロンブスパークの芝生の上に全裸で亡くなっていました」

「はい、聞いています」

直人の目はそれを聞いて潤んでいた。

「あのう、全裸で亡くなって身元を判明するのにずいぶん早かったですね」

「たまたま、2日前から連絡が取れなかった日本人女性がヒットしたんです。

 たまたま佐藤敦子さんの元上司の櫨場俊夫さんがニューヨークにいらっしゃると言うので

話を聞きに伺ったんです」

「そうだったんですか、それで僕の方まで」

「はい、以前佐藤敦子さんが家庭教師をしていたそうですね」

「えっ?ええ」

家庭教師の話は知る人が少ないので亮の口からそれを聞くとは

思わなかった。

「国語と日本史を教わっていました」

「どれくらい?」

「高校2年からです。おかげで大学に合格できました」

「スポーツの推薦入学はできなかったんですか?

「残念ながらアメリカンスクールだったのでバレーボールもバスケットボールも弱かったんです。

だから本格的にバレーボールをやったのは大学に入ってからです」

「敦子さんのお付き合いしていた人わかりますか?」

「男性?」

「はい」

「聞いた事はありません。昔はよく六本木で外国人と

話したそうですけど、家に来るようになると

英語の勉強になると言って僕の勉強だけではなく

母の家事の手伝いもしてくれたし

家族ぐるみの付き合いなりました」

「そうだったんですね・・・」

「それで僕以外の家族がアメリカに帰ると

敦子さんは寂しそうにしていました」

「はい、ブログを読んで知っています。

毎日駅を降りて帰るのが寂しいと書いてありました」

「僕は合宿所に入ったので

敦子さん会う事もなくなってしまったし」

「そうですよね。ところで就職は決まりました?」

「はい、F電機に」

「Vリーグの上位チームですね」

「はい」

直人はにっこりと笑った。


「どうしてアメリカに帰らなかったんですか?」

「日本が好きだからです。敦子さんに

日本史を教えてもらっているうちに

 興味を持ち始めて」

「ではずっと日本に?」

「はい、僕は妹と違って日本が性に合っているみたいです」

「ありがとうございます」

亮は直人に日本が好きと言われてうれしくて礼を言った。


「ところで、どうして都電に?」

「僕はアメリカのペンシニア州フィラデルフィアで

生まれで日本に初めて来たのは

 小学四年の時でした。その時父親がこの

都電に乗せてくれて東京の下町を走る

この電車が楽しくて、大人になった今でも暇があると乗るんです。

心が落ち着くので」


「確かフィラデルフィアにもトロリー路面電車がありますよね」

「ええ、ゆっくり街中を走る路面電車大好きです」

直人はおっとりとした目で外の景色を見た。

「それで三ノ輪橋に着いた後はどうするんですか?」

「浅草まで歩きます」

「良いですね。下町散策」


「はい、鷲神社、浅草寺にお参りして

優勝のお礼に行こうと思っています。

そして時々道に迷った外国人の道案内をします」

亮はその言葉を聞いたとき直人の心に

一点の曇りが無いのがわかった。

「櫨場さん一緒に行っていいですか?」

「もちろん、実は僕ももう少し

團さんと一緒に居たかったんだ」

「ありがとう」

「そうだこれから僕を直人と呼んでください」

「じゃあ、僕はリョウと呼んでください」

亮と直人は改めて握手をした。


浅草六区近くになると人通りが多くなり亮と直人の二人は

目立って来て行き交う人が振り返るようになってきた。

「実は父はアメリカに行きたくなかったんです。

ただ母と妹がアメリカに帰りたいと

駄々をこねて父は仕方なしにアメリカへ行きました。

特に妹は日本の学校でいじめにあっていたし」

「いじめですか?」

「妹は自己主張が強くて言いたい事を言ってしまうので

クラス中の反感をかって無視されたみたいです」

「無視は実質的ないじめじゃないですからね。

 訴える事できないし」

「ええ、話好きの妹にとっては

耐えられない事だったみたいです」

「気の毒に・・・それで妹さんは?」

「秋から大学です。合格した大学を選んでいるところです」

「それは良かった」


「亮さん、兄弟は?」

「超元気な姉が二人います」

「あはは、亮さんが元気良いと言うと本当に元気そうだ」

亮は直人と話をしているうちにタイミングを

計ってボストンの話を切り出した。

「言いにくい事なんですけど、佐藤さん三か月前に妊娠していて

体調を崩していたようです」

「えっ?本当ですか?」


「亡くなった時は妊娠していませんでした。

流産か堕胎か?」

「そうですか。気の毒に。敦子さんは不純な

交際をする人じゃありませんから

 相手の男性に本気だったと思います」

直人は心から敦子を尊敬していた。

「やはり付き合っていた男性がいたんですね」


亮が調べた結果ここ数か月間、敦子と付き合った

男性の姿が見えない事に焦りを覚えた。

「実は佐藤さんが殺された時、ボストンで直人さんが

目撃されたみたいなんですけど。

佐藤さんに会いました?」

「いいえ、確かにボストンで試合が有りましたが

個人行動は禁止されていましたので敦子さんが

ボストンにいたなんて知りませんでした」


「へんな質問ですけどボストンで日本人女性会いました?」

「はい、日本人の女性に声を掛けられてちょっと

話をしました。確か鈴木さんて・・・」

「その女性とは?」

「なんかバレーボールのファンという事で

他の連中と一緒にサインをしました」

「他の連中?」

「はい、木村健吾さんと森田一さんも一緒でした」

「ああ、プライベートじゃないんですね」

亮は妙子にプライベートだから

口止めされたと聞かされていた。


「あはは、JAPANのネーム入りのジャージを着て

いましたからプライベートじゃないですよ」

「そうですね。いくらアメリカでもアスリートの

大きな男性が三人立っていれば目立ちますよね」

「はい、僕なんか金髪だからこうやって

ニット帽をかぶっているんですよ。彼女は

木村健吾さんのファンみたいで

連絡先を交換していました」


「なるほど・・・」

亮は鈴木妙子がバレーボールのチケットを取れたのは

木村健吾との関係と推測できるが

鈴木妙子の言っている事はどこまで

本当かわからなくなっていた。


「木村さんとは仲が良いんですか?」

「いいえ、僕は大学生で彼は実業団ですからね。

全日本で一緒になるくらいです」

「エースの座を狙っているライバル同士ですか?」

「あはは、エースだろうがなかろうが収入には

関係ありませんから大した問題じゃないですよ」

「そうですよね」


直人はそう言っているが一度人気に火が

付くとテレビコマーシャル、

取材等の収入がかなりの金額が入ってくる、

特に金髪でイケメンの直人は

ファッションモデルのオファーが

入ってくるに違いなかった。

外国人カップルがキョロキョロしているのを

見て直人が走って行った。


「亮さん、この辺りにお好み焼きの美味しいところを

知っているかと聞いています」

「浅草ROXの前の信号を渡った所に六文銭

と言うお好み焼き屋があります」

「ありがとう」

櫨場はカップルに道を伝えた。


「仲が良くてうらやましいいですね」

亮がそう言って二人を見ていた。

「亮さん彼女は?」

「いません、日本にもアメリカにも」

「僕もです」

亮と直人は笑いながら握手をした。


「でも、直人さん高校時代はいたんでしょう」

「いましたけど死にました。

それが僕がアメリカに帰らない理由です」

「すみません。思い出したくない

過去を思い出させてしまって」

亮もそう言いながら沙織の事を思い出した。


「運動部の僕は彼女が出来ないのは当然ですが、

亮さんにいないのは不思議です。

 ひょっとしたら?」

「違います、違います。出会いが無いだけです」

「向こうは思った以上にゲイが多いのに驚いたでしょう」

「ええ、直接は知りませんが彼女がいないと

言っただけでゲイだと思われます」


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