就活仲間
「わかりました。ありがとうございます」
七人は亮の顔を見てクスクス笑った。
亮はおとなしく、謙虚にしている事が有利だと思っている七人の学生
に疑問を持った。
人事課は会社に従うために就職する人間ではなく、
会社の中で如何に力を発揮していく人間か
判断すべきではないかと亮は思った。
「まあ、いいけど・・・」
会社訪問が終わると玄関で亮はオリバーに声を掛けられた。
「團君」
「はい?」
「ナチュラルグリルの企画はどう見ても
日本人が企画をやったように見えるんだが
どんな人がやったか知っているか?」
「どうしてですか?」
「そろそろアメリカに帰って日本料理店の
コンサルタントの仕事をしようと思っている.
知っていたら紹介してくれないか」
「はい、ちょっと待ってください」
亮はすぐにデビッドに電話を掛けた
「もしもし。亮です」
「おお、どうした?」
「今、日本に帰っているんですが。
デビッドの高校時代の友達というオリバーと知り合って」
「本当か?」
亮は電話をオリバーに渡すと
電話を受け取ったオリバーは懐かしそうに
話をするとしだいに目を丸くして電話を切った。
「おい、ナチュラルグリルを企画したのは君だったのか」
「はい」
「ナチュラルグリルはとても忙しいので
手伝って欲しいとデビッドに懇願されてしまった」
「アメリカはローカロリー食品のブームで拡大中ですから
新商品研究と味のチェックもちろん広告宣伝の企画制作もあります。
オリバーのやりたい仕事に近いと思いますよ」
「なるほど・・・・やってみるか!」
オリバーは握りこぶしを握った。
「よかった。本場日本食の味がわかる
アメリカ人は多くありませんからね」
「うん、正しい日本の食文化を伝えていくよ。ありがとう。
うちの会社も君を雇うくらい懐が深い事を祈っているよ」
「あはは、無理だと思います。またアメリカで会いましょう」
亮とオリバーは連絡先を交換して固く握手をした。
「あのう?」
後ろから一緒に会社訪問をした
女性が亮に声をかけてきた。
「はい」
「今の方、親しいんですね」
「たまたま共通の友人がいたから話をしていただけです」
「良かったら一緒にお茶しませんか?」
亮は日本の学生時代から誘われる事が無かったので戸惑ったが
女性の訴えている目が気になって誘いを受けた。
「はい、少しなら・・・」
「良かった」
近くのファミリーレストランへ来た
参加者は女性4人だった。
「えっ!男は僕だけ?」
「はい、他の男性を誘ったら断れてしまって」
「みんな忙しいんですね」
亮が答えるとみんな首を縦に振ってうなずいた。
四人の女性たちは亮以外の男には最初から興味がなく
亮しかお茶に誘っていなかった。
「違う。みんなライバルだからだと思います」
亮をお茶に誘った野島美幸は問題の無いような言葉で答えた。
「そうそう、三人の男性軍は團さんを
すごい目で見ていたもの」
「馬鹿な質問していましたからね」
「ううん、あの外国人の社員さんと
流暢な英語で話していたからです。
それに人事部の人に臆することなく質問していました」
矢部圭子は男っぽい亮をあこがれの目で見ていた。
「團さんはボストンに留学中なんですよね。
さっきアメリカのCMの話をしていたけど」
「そうです。日本のCMは
商品イメージよりタレントを売っているみたいです」
「そうそう、CMは人気のバロメーターみたいだけど
CM嬢王がいて化粧品から証券会社、酒まで
なり振り構わないタレントもいるわ、
見る方は飽きているのにこれでもかって!」
ちょっと太り気味の星野美子が大声で言った。
「ええ、タレントが問題を起こすと
放送中止にしなければならないので
タレントに頼るのはリスクが多いと思います」
「ところでハーバード大学の前は
どこの大学なんですか?」
眼鏡をかけた細身の生田ゆかりが興味深そうに亮に聞いた。
「はい、東大薬学部です」
「ワーすごい」
四人は口をそろえて言った。
「どうして広告代理店なんですか?團さんなら総合商社とか
外資系会社の方が向いていませんか?
公務員試験受けて厚生労働省なんかも」
「あはは、そう言われます。でも広告代理店って
かっこいいじゃないですか。
音楽や映像の最先端行っているようで。
ところで皆さんはライバル意識持たないんですか?」
「私と星野さんは地元の銀行の内定貰っています」
細身の生田はのんびりとした話し方だった。
「私と矢部さんは商社の総合職を狙っていているんです、
團さんの言う通りだけど広告代理店は
かっこいいけど、 1日3、4時間の残業が
当たり前みたいじゃ、過労死しそう」
「そんなに…5時から残業だと仕事終わりが
8時からじゃ何もできませんね。
1ヶ月の残業時間が45時間までですから過酷です」
亮は日本の労働環境やシステムの悪さが
原因となっているのではないかと思っていた。
「野島さんと矢部さん親しそうですけど・・・」
「同じ大学なんです、早大」
「いい大学ですね。文武両道で野球、
ラグビー、テニスは強いですね」
「うちの大学はスポーツ学部があるから
スポーツで活躍した高校生は
推薦入学ができるんです」
野島は積極的に亮に話しかけた。
「なるほど」
「バレーボールも強いんですようちの大学。
全日本の代表選手もいるし」
「すごいですね、そういえば今度の
日曜日バレーボール観に行くんです」
「あら?バレーボール好きなんですか?」
「いいえ、ちょっと誘われて。僕はもっぱらテニスです」
「わあ、今度テニスを教えてください」
野島は女性が男性を使う常套手段を使った。
「良いですよ」
亮は何も考えず簡単に答えた。
「團さん、これからどうするんですか?
飲みに行きませんか?」
亮の話が楽しそうなので女性たちは亮を誘った。
「すみません、7時から食事に行くんです」
「そうか、残念だな」
「そうだ、一緒に食事にしましょう。僕がご馳走します」
「キャー。良いんですか?お邪魔じゃないですか?」
「はい、大丈夫です。その代わり僕が
会社訪問をしたのは内密に」
「はーい」
亮と四人は日本の雇用と労働
について真剣に話をした。
亮と四人は美宝堂の前で華を待った。
「美宝堂っていいよね」
「でも。高級品ばかりだから
冷やかしに見えて入りにくい」
「うんうん、女子大生には到底・・・」
四人はウインドウから中を眺めていた。
そこに華がやって来た。
「お待たせしました」
華が亮にあいさつすると亮は四人に紹介した。
「電波広告社営業部の水瀬さんです」
野島と矢部と星野と生田が華に頭を下げた。
「こんばんは」
「実は今日彼女たち電波広告社の
会社訪問に行ったんですよ」
「あっ、どうも」
水は亮と一緒に食事に行けると
思っていたが四人も増えて呆気に
取られていた。
「さて、お肉食べましょう」
亮は五人を10階のローラン・ギャロスに案内した。
「キャー、高級そう」
四人はキョロキョロしながら店内を歩き
水瀬は不機嫌に亮の脇を歩いていた。
「夜景が綺麗!」
野島が銀座の夜景を見て感激していた。




