面接
「明日、敦子さんの情報取っておくから」
「本当ですか?」
「うん、任せと置いて」
「ありがとうございます。では明日同じ時間で」
「はーい」
亮と別れた華はニコニコと笑って帰って行った。
亮が秀樹と蝶に入るとすぐに絵里子が亮に話しかけた。
「さっき一緒にいたお嬢さん綺麗な方ね」
「えっ?」
「さっき、お見かけしたので」
「ああ」
亮は華の顔をじっくり見ていなかったので
綺麗と言われてもピンと来なかった。
「ああ、ボストンからわざわざ会いに来た娘さんか?」
あの情報がすっかり秀樹に伝わっていた。
「いいえ」
「おいおい、もう一人いたのか??」
「そう言う訳じゃありませんけど・・・これお土産です」
亮は紙袋を絵里子に渡した。
「あら、何かしら?」
「秋田のお土産の稲庭うどんといぶりがっこです」
「あら美味しそう。遠慮なく頂戴します」
絵里子はそれを受け取るとボーイを呼んでそれを渡した。
亮はしばらくアメリカでの生活の話をすると絵里子が目を丸くした。
「それって普通の学生生活じゃないわ。
もっと学生生活を楽しんだらどうかしら?
大学のお友達は?中国人の友達が一人います」
「たった一人?女子大生は?」
「いないですね。日本人は持てないんですよ」
亮は真剣な顔をして答えた。
「そうかなあ、日本人が向こうの文化に
慣れていないだけだと思うわ」
「ところで絵里子さん、
不倫相手の女性を自宅に入れるってありますか?」
「えっ?奥さんがいる時?」
「はい」
「それはあり得ない。
女は勘が鋭いから関係のある女性がいれば
仕草ですぐわかるわ」
「本当ですか?」
「ええ、詐欺師か女優でもない限り」
「女優ではないなあ、詐欺師でもないし」
亮は敦子を思って天井を見た。
「わからなくなってきたぞ」
亮はつぶやきながら明日、華と会うのが楽しみになってきた。
「亮も女心の事で悩む年ごろになってきたか」
「昔から悩んでいますよ」
「あはは、そうだった」
沙織、良子の事を知っている秀樹は大声で笑った。
「お父さん、明日ローラン・ギャロス良いですか?」
「ああ、俺は使う予定が無いからいいぞ」
秀樹は亮と沙織の件以来、
人気店ローラン・ギャロスには團家の席を
常に空けておくことにしていた。
「亮、今度は女に騙されないようにしろよ」
「はい」
亮は別な意味で女性に騙されないようにしたかった。
家に帰った亮は土産に買った比内地鶏のきりたんぽ鍋を作った。
「なるほど、この出汁は濃厚で美味い!早速みやびに作らせよう」
母親の久美も美佐江も千沙子も絶賛だった。
「はい、比内地鶏の仕入れ先聞いてきました。
きりたんぽはササニシキが一番だそうでそれも仕入れできます」
亮は少しでも敦子の実家が潤うようにしたかった。
「ササニシキ、懐かしいなあ。粘りが少なくさっぱりした味で
今でも高級寿司屋は使っているそうだ。その米の入手先
みやびに教えてやってくれ」
「はい」
美味い料理を食べた秀樹は満足そうに語り始めた。
「やはり、商売で最も集客力があるのが食べ物屋だ。
食のイベントをやれば数万の人を
呼ぶことができる、洋服やジュエリーの
イベントはそうはいかない。つまり食べ物が
最も人間の欲望が満足されるものなんだ」
「確かに、美味しい店には何時間も待つ人の列できます」
「その代表が築地よね。中華街もそうか」
「ええ、バーゲンでもないのに洋服屋さんに列ができる事は無いわ」
亮も美佐江も千沙子も秀樹の言葉に同意した。
「俺が今危惧しているのは、商店街にマッサージ店が増えることだ、
色々な商店を集めて作って来た商店街がその集客力を当て込んで
マッサージ屋を始めるが一店当たり
数十人の集客能力しかない店舗が増えれば
商店街全体の力が落ちてしまうわけだ」
「あら、お父さん、街の商店街の心配までしているの?」
「うん、まあな。できるなら昔のような
活気ある商店街が復活してほしい」
亮は自分の事だけじゃなく大きな視野で
物を見ている父親が好きだった。
「ところでお父さんお願いがあります」
「またお願いか!」
秀樹はあきれた顔をしていた。
「DUN製薬がCMを頼んでいるのは電波広告社ですよね」
「ああそうだ。美宝堂も仕事を頼んでいる」
「会社訪問したいんですけど」
「ん?就職活動か?」
「そういう訳ではないんですけど。
広告代理店ってどんな仕事しているかなって」
「まあ、社会勉強にはいいが・・・」
「わざわざでは申し訳ないので新卒者に混じってで良いんですが」
「わかった。何とかしてみよう」
翌日、亮は黒いスーツに着替え敦子が
勤めていた広告代理店電波広告社に行った。
ロビーには自分の同じような格好をしている男女が七人いた。
「説明会の方集まってください」
亮を含めた八人はミーティングルームに案内された。
どうやらこの時期に集められて人間はすでに篩に落とされた残りの
学生でかなり優秀らしい。
「みなさん、このシートに記入お願いします」
配られたシートは簡単な経歴書で
亮がのぞき込むと、みんな有名な大学だった。
みんなTOIECK800、750点と書いていたので
亮も1000点と書いた。
「TOIECK1000だって。こいつ馬鹿じゃないか。
TOIECKの最高点は990点だぞ」
人事課の社員が亮のシートを見て笑った。
「誰か!TOIECK1000点のレベルを見てきてくれ!」
営業部のオリバーが亮の元に行って声をかけた。
「君、ハーバード大学だってね」
「はい」
「懐かしいな、大学時代良くボストンへ行ったよ」
「ボストンの大学だったんですか?」
「いや、高校の友人がマサチューセッツ工科大学だったんだ。
ナチュラルグリルって知っているかな?」
「はい、知っています」
「あそこの息子が友達だった」
「えっ、デビッドと同じ高校?」
「おっ、デビッドをしているのか?」
「はい、友人を介しての友達で何度か会っています」
「いや、奇遇だな」
亮とオリバーはデビッドの話で盛り上がった。
しばらくするとオリバーは興奮して人事課に戻ってきた
「すごいですよ彼は、経済用語、医学用語、
機械用語の専門用語まで知っていて
発音もネイティブです」
「おい、そんなに優秀な学生なんでうちに来る?」
人事課の人間が首を傾げた。
亮たち八人は電波広告社の会社を
案内され、企画部、制作部、
営業部(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネット)
を見学すると営業部のメディア事業部で
忙しそうに働いている水瀬を見かけた。
その後、亮たちはミーティングルームに入り
会社の人事部の詳しい説明が始まった。
亮以外の七人はメモを取って真剣に就活をしていた。
「何か、質問ありますか?」
人事部の係長が八人の顔を見た。
亮を除く七人は全く質問をする様子は無かった。
「はい」
亮は手を上げた。
「はい、アメリカでは有名芸能人はCMにあまり出ません。
偏ったイメージを避けるためとか人気が落ちないと
出ないとか言われていますが。
アメリカでは商品販売のためのイメージCM、
逆にタレントの人気に頼ったCM作りが
日本の実情だと思っていますが。
それに関してどう思いますか?」
「それは人事課の私が答えるものではないですね。
私はあくまで就職に関しての質問を聞いたのです」
係長は質問が無いと思っていたので突然の質問に苛立った。
「わかりました」
「まあ。うちの会社に就職出来たら調べてください」




