第六フロアは未確定について 〜 天より降りて魔を救う 〜
【第6フロア:無月】
2000人以上の命を飲み込み、良くも悪くも世間を騒がしたゲーム《エンペラーオンライン》が終わりを告げる。
祝福を報せる鐘の音。
喜びを噛み締める事も、悲しみを振り返る暇も彼らにはない。
「ではラストアタック報酬をレインさんにお渡しします」
光の粒子となって綻び始めたナツキの体は、代わりに聖杯を形成していく。
「それが【願いの聖杯】。現実世界に【スキル】かアイテムを1つ持ってログアウトすることができるモノです。過去のレインさんは【スキル:空間回帰】の力で全てを巻き戻してやり直していました。ヤクモさんが一部の方の記憶を固定していましたが」
レインの頭には再び【スキル:空間回帰】を持ってのやり直しがよぎる。
そして《熾天使》の存在が1つの可能性を暗喩させていた。
《熾天使》が聖杯を狙ったことから、ゲーム内の存在であったとしても現実世界に連れてこれるのではないか?と。
だが質問をしているだけの時間はない。
「仕方ありません。先に皆さんをログアウトさせます」
崩壊が進むフィールド内において足場も無くなっていたことから、ナツキの権限を駆使してレイン以外が強制的にログアウトさせられていく。
「・・・ナツキ!」
「シノブさん、」
「・・・涼真に何かしたら許さないから」
「もちろんです。私も涼真さんが大好きですから」
悔しそうな顔をして他のプレイヤーがログアウトし、レインとナツキだけがこの場に残った。
「さぁ、聖杯に何を願いますか?」
(全てを巻き戻す力を手にしても、多少の差があるとは言え、また同じ事を繰り返してしまうことは理解した。現実世界に持ち出せる【スキル】。これは私利私欲に使えば世界征服も世界救済も夢物語ではなくなる)
誂向きにレインは全てを蹂躙する悪魔の指輪と、全てを望む時間に戻せるにできる【回帰】の力を宿している。
(この世界で犠牲になった人の復活は可能。でもそれはやり直した末の結果だ、同じ惨劇が繰り返される。でも、前と違う点が1つある)
レインは指輪に目を移す。
最後の【怠惰】の能力。
本能的にこの能力を使わなかったわけではない、能力が本当に分からなかったのだ。
「【怠惰:夢想賛歌】」
口上を述べても何も変化は起きない。
付随するアイテムや体の変化も見られない。
だがナツキの話を聞いて1つの仮説が立ったのも事実。問題はあくまで仮説、机上の空論なこと。そして自身の持っている【スキル】かアイテムが現実世界に持ち出せるという点は【月詠尊】で解決する。
やり直すための能力を使えば100%全員が復活するがまた繰り返される惨劇か待っていて、仮説を信じれば確実に『何か』が起こるがそれが何かは分からない。
「レインさん!時間がありません」
答えの出ないレインを嘲笑うように迫るタイムリミット。
「何をグダグダ迷ってんだか」
「ーーーっ!?」
「どうしてあなたが、」




