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リトライチケット  作者: アクイラ(((・・;)
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第六フロアは未確定について   〜 人柱 〜



   【第6フロア:無月】



「このゲームが作られた理由は、」


 ナツキは言葉を止めた。

 まるで口が縫い留められたように声が出なくなっていたのだ。

 

(ここまで来ましたか。これが私の過ぎた願いの罰ですもんね)


 ナツキは悔しそうに目を瞑る。

 そして自分の取るべき手段を再認識し、高らかに笑う。


「そんなことはもうどうでもいいじゃないですか!私は2000人近くの命を奪った。一緒に闘ったから情でも湧いたんですかぁ?ならりやすいようにしてあげます」


 パチンッ!指を鳴らす。

 壁面に9本の石柱が聳え立つ。

 その石柱は手足をそこに収めろと言わんばかりに十字架の形をしていた。

 

「9?」

 

 ナツキが訝しげに眉を寄せた瞬間、隙を伺っていた猛者が動く。

 《熾天使》の特攻。

 両の拳に焔を纏わせ殴りかかるが、悉くを【素戔嗚】で捌き切られ空を切る。

 自身の攻撃が通用しないと判断した《熾天使》は即座に身を引き次の攻撃に託した。

 降ってきたのは重力の塊。しかも逃げ場を奪うように立方体の枠組みがナツキを囲む。身体強化で重力は多少動きがにぶるだけであっても、防御力を無視した次元ごとの割断は彼女であっても一溜まりもない。

 だからこそ対処はシンプル。

 次元が割断するよりも速く、効果範囲からの脱却。

 

「【陸の型 観音白雪】」


 探知に専念したYAIBAによって、気配を感じ取った彼女だが他へ指示を飛ばすだけの余裕がないほどの速度のナツキに自ら向かう。

 そんなナツキが向かったのはシルファ。

 恐怖を煽るように空気を叩いて駆け寄るナツキに対して籠手を交差して受け身を取るが、防御した腕ごと殴られ、跳ね上げられた両手に意識を向けてしまった瞬間、隙だらけの腹部に全力の拳が突き刺さる。

 【剣聖】の回復効果が発動するが、意識が一瞬切れたシルファに連打が決まり完全にHPは回復し続けるが、完全に視界が黒く染まる。

 

「まずは1人ですね」


 ナツキが倒れそうなシルファの首根っこを掴み、石柱に押し当てると、手足と首が拘束され、見せつけのように晒される。


「この石柱は《エンペラーオンライン》最高硬度で出来ているので簡単には壊せず、捕らえられた人は【スキル】は使えません。さて、次は」 


 次なる標的はカチュア。

 そしてナツキはプレイヤーを更に追い詰める。


「【スキル:森羅万象】」


 ナツキはそっとシルファの籠手に触れると、強引に所有権が書き換えられ、黒く染まった【剣聖】の籠手がナツキの手に装着される。

 籠手から噴き出す突風で形成された黒い【天威矛砲】が再びナツキによって投擲される。周りの空気を押しのけながら進軍する【天威矛砲】に対して絶対防御と名高い【星霊結界】を展開すると、万物を穿つ矛と、万物を拒む盾の衝突。

 軍配は辛うじて盾に上がったものの、ヒビの入った部分から光が漏れる結果となったため、ダメージの有無だけを見ればカチュアの勝利。

 ーーーだが、その場に立っていたのはナツキのみだった。


「これで2人目」


 パキンッ!と音を立てて砕ける籠手が本来の主を思い出したように意識のないシルファの手元に戻るが、ナツキは次の獲物を手にする。 

 【聖槍】はナツキが触れた瞬間、黒く染め上げられる。


「さて皆さんに提案です。カチュアさんを殺されたくなければレインさん以外は死んでください」


 いままさに放たれようとしている【光輪大砲】。

 本来ならば槍の周りを浮遊する光玉2つを消費して放たれるそれは、3つもの光玉を費やし、確実な死をもたらすことを示していた。


「・・・ギリギリ間に合った」


 放たれるより速くシノブが【飛雷神】による転移で駆けつけ、そのままカチュアを連れ去っていく。

 

「【天威矛砲】を放ったと瞬間に【春雷】を投げてましたか」

「・・・」


 シノブの速度をもってしても完全に躱し切るのは難しく、【春雷】ごと左腕を消し飛ばす。

 シノブの武器の1つである瞬間転移の支えになっていた刀の消滅。そして片手になったシノブにナツキの追撃が入ろうとした瞬間、焔と弾丸が左右から迫る。


(《熾天使》とドラゴンさんですね)


 素手で左右の攻撃を受け止め始めるナツキ。

 だが彼女は気づいていない。今立っている床そのものが漆黒に染まり始めていることを。

 徐々にHPが削られていることを理解した瞬間まで2秒。

 即座に離脱している間も全ての攻撃を防ぎ続けた彼女だが、目の前で飛びかかろうと分かりやすく溜めを作っているYAIBAが警戒心を煽る。


(おそらく陽動。なら手負いの2人から)


 狙いを定められたカチュアとシノブ。

 反撃しようと帯電させたシノブだが、左腕を失った痛みから反応が遅れ完全に間に合わない。


「【スキル:元素乃王エレメントマスター 麻痺パラライズ】」

「この程度」


 1秒にも満たない拘束時間を振りほどき、視線の先の相手に左右からの攻撃を防ぎながら駆け寄る。

 残り5歩ほどの距離に近づいた時、ナツキは地面を思いきり踏みつける、床を砕いて左右からの攻撃に瓦礫を正確に当てていく。

 妨害の消えた彼女との距離は4歩。

 ただのパンチが必殺の一撃を誇る攻撃が、風圧を纏って対象を捕らえーーーることはなく、直前に耳に届いた宝石同士を打ち鳴らす音。


「【色欲アスモデウス魅惑幻朧ファントム】」


 強引な視線誘導により、わずかに狙いが逸れたのだが、意に介さずもう片方の拳を構えた瞬間、肩に衝撃が走り弾丸が衝突していたことを理解した。


(ドラゴンさんか、しまっーーーー)


 わずかな時間稼ぎの積み重ねがシノブの刀が届くまでの猶予を作った。

 最大出力で繰り出される帯電した【神刀:天照】が振るわれ、ナツキの体を右肩から袈裟斬り。

 

「まだです!」


 片膝をつくほどの衝撃を堪えながら両腕で刀を掴み、鎖骨辺りまでで刀の進行を食い止める。

 

「危なかった。でも身体能力で勝る私と力比べしますか?」

「・・・それは無理。・・・それにウチのエースがいるから」

「【壱の型  白狼】」

「あなたから警戒を解くわけないでしょ!」


 黒い【聖槍】が背後の1つを消費し【星霊結界】を築き、YAIBA渾身の攻撃を防ぐ。

 その場に絶望感が襲う中、悪魔だけが静かに笑う。


「やっと使い切ったな」


 ナツキの余裕を完全に奪うため、最強プレイヤーであるYAIBAに最後の一撃を託した全員の企みの更に一歩先を行く。

 まるで未来視で組み立てた盤面を崩し、仲間が限界を超えることを念頭に置いた未来を信じた《探偵》の刀が、届く。

 

「【暴食ベルゼブブ天上晩餐ムーンフォール】!」


 

 


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