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リトライチケット  作者: アクイラ(((・・;)
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77/86

第六フロアは未確定について   〜 《BOSS》の名は 〜



   【第6フロア:無月】



「シノ、ブなのか?」

「・・・うん、お待たせ」


 抑揚のない、間に空いた会話。

 どこか懐かしく、失ったと心を押し殺したレインとドラゴンにとって幻であっても手を伸ばしたくなる存在。

 その人物は突如現れた門から飛び出し、最後の1枚となった【虹彩障壁】を破壊し、目の前に現れた。手に持つのは愛刀【特殊武器:春雷】。

 レインは気づく。

 彼女の背後にある重厚な門から飛び出して、瞬く間に場を制圧。

 だがそんなことは今はどうでもよかった。


「ーーーッッ!!!???」


 周りの状況など度外視で、レインとドラゴンはシノブのもとに駆け寄った。 


「良かった、本当に良かった」

「馬鹿野郎!心配かけさせやがって」

「・・・ごめんね、私もダメだと思ったんだけど。・・・みんなが助けてくれたんだ」


 シノブは首から下げた鍵を取り出す。

 このゲームを象徴する紋章が刻まれた鍵。


「・・・5個目の【EXA】。・・・【EXA:天門の鍵】でここまで来たの。・・・本当は障壁と一緒にダメージを与えたかったんだけどフードの耐久値が高くて」


 再会の喜びは今は置いておく、そう決めた彼らは武器を手に取り敵を見やる。

 【神刀:素戔嗚】を持ち、身体能力を爆発的に飛躍させるフードの人物は【スキル】無しでトッププレイヤー達に並ぶほど。

 

〈本来なら6人だけのレイドバトルだったのに気づけば8人も来るなんて。ソラさんの【スキル:座標移動】や【EXA:天門の鍵】で此処までくるなて予想外でした。まさか【神刀】三振り全てが集うとはね〉


 再び【素戔嗚】を抜刀。

 身体能力の向上を表す闘気が溢れる。

 フードの人物にとっても切り札である【神刀】の効力が切れれば、数の暴力には勝てないことを意味している。

 少ないアイコンタクトだけを飛ばし、レインが先陣を切る。

 左手には【悪食魔剣】、右手に【月詠尊】を構え、一撃必殺でフードの人物を倒すための道筋を整えていく。


〈面倒になってきましたね。それに少し掠ってましたか〉


 フードにシノブの残した僅かな切り裂きが広がり、その顔が明らかになる。


〈驚かないんですね〉

「そうじゃなかったらなと思ってはいたよ」


   《BOSSイベント:ナツキ討伐》


 『無月』の創造主 ナツキを倒せ!


  ※勝利条件    《BOSS》の撃破

  ※敗北条件    プレイヤー側の全滅

  ※参加人数    無制限

  ※支給物資    なし


  ※クエスト報酬  願いの聖杯


    クエストを開始します



「やらなくちゃいけないのか」


 途中から記憶から消されていたナツキの存在。

 だが、レイン達の頭に残るナツキの【スキル】は【万物創造】という生産系のものだった。

 つまり。


「【神刀:素戔嗚】の能力はまだあるんだろ?」

「流石レインさん。【気炎万丈】、【森羅万象】、これらは私の【スキル】と掛け合わせて生み出したモノで、本来は【スキル:千変万化】。特定条件を満たすと【スキル】を再現することができる。いわゆる模倣ですよ」


 【神刀】の能力。

 それは初期設定時に禁止された能力だとレインは判断した。

 死者の【スキル】を扱う=強奪。

 【スキル】の再現が可能=模倣。

 つまりシノブの持つ【神刀】は消失の能力。


「・・・皆、私の側に!」

 

 戦場に掛け声が響く。

 これから第2ラウンドが始まろうとしているなかでの招集であっても、誰も疑うことなく、そしてその掛け声に疑問を持たずにシノブへと集まる一同。

 それは《熾天使》であっても例外ではない。

 それほどまでにシノブというプレイヤーへの信頼は強く、疑う余地はなかった。

 シノブの意図を察したナツキは即座に斬戟を飛ばすが、何かに阻まれたのか、木っ端微塵に砕け散る。


 「やっぱり【天照】ですか」

「・・・もうこれ以上、誰も傷つけさせない」


 鞘に刀身を収め腰元で溜める居合スタイルのシノブ。

 それは本来、刀身の届く範囲を自身の領域として膜を生成し、あらゆる攻撃を無効化する【スキル】だが、シノブは自身の足に様々な【スキル】を重ね掛け、その範囲を広範囲に伸ばす。


「【天照:絶対領域】。なるほど簡単には手が出せなくなりましたね」


 ナツキといえども【神刀】の能力には攻めあぐねているのか、納刀し、別の切り口を探る。

 そして導き出したのは。


「では、これで」


 取り出されたのは鏃。

 シノブの領域を全方位から囲むように展開された射出口は、領域から一歩でも踏み出せば風穴を開けようと光る。


「・・・レイン、ソラお願い」


 立方体の枠組みが全員を覆い、それぞれの場所へ飛ばす。

 それはレイン、シノブがナツキの前に立ち、それを囲むように残りのメンバーが配置された構図。

 つまり【神刀】を持つ者同士の闘いの場が形成された。


「【スキル:明鏡止水】」


 3人の【神刀】使いが場を席巻していく中、6人の猛者は静かに場を眺めることしかできなかった。

 死者の能力を使用するレインが【拳聖】【聖女】【剣鬼】【名人】の能力を巧みに操り場を構築し、シノブが【絶対領域】によりナツキの攻撃をレインの【盤面観測】の補佐込みで全て捌いていく。

 だが、根幹であるレインの先読みも完璧ではない。

 【盤面観測】はあくまで、膨大な情報量の中から導き出されたパターン全ての行動に気を配り、ギリギリでの対応を強いられるからだ。

 強力な反面、使用者の脳に甚大な負荷が掛かる。

 《十傑》級の能力を連続使用しているレインの負荷は想像に難くなく、焼き切れそうなほど回した脳を無理矢理動かしているのは、


「【回帰】」


 状態の完全回帰。

 焼き切れそうなほど回した脳の回路を強引に戻し、再び最速で回し始める。ゲージには表示されない疲労感が襲い、視界がぐらつくがそれでもレインは止まらない。

 ナツキへの決定打になるのは自信だと理解しているからだ。

 凄まじい攻防に参加できているのは、レインの先読みとシノブの【絶対領域】のみ。シノブでさえも自身の身体強化なしでは対処できない領域に達している盤面。

 それほどまでにナツキの身体能力が上がっているのだ。


「くそっ、」


 火花が飛んだような視界。

 レインの負担が大きくなっているのは、この場の誰もが理解しているのに参戦できない。

 【神刀】の能力が大きすぎるからだ。

 最後の攻撃のために【悪食魔剣】を溜めているレインを最優先で潰そうとするナツキをシノブが止める三竦み。

 いつ壊れてもおかしくない均衡だが、確実なのは限界が近いのがレインだということ。

 動かなくなった頭を無理やり動かしている状態の連続。

 ましてや先程まで意識を失っていた彼は、いま動けているのですら奇跡に近い。

 

(少しでも隙があれば)


 ナツキの攻撃をシノブに捌かせるために全神経を傾けているレインは徐々に余裕をなくしていた。

 ナツキが様々な角度から攻撃してくることで、ソラの重力やカチュアの大砲を繰り出す際にレイン達が射線と被り攻撃できないでいる。

 かといってナツキは他のプレイヤーから攻撃しようとは考えていない。自身の脅威になりうるのは同じ【神刀】所有者が第一だと理解しているからだ。

 プレイヤーの勝利条件である《BOSS》の打倒に直結するのはレインの【悪食魔剣】と【回帰】の【スキル】。

 神をも屠る威力に到達する魔剣と、底上げされた身体能力を元に戻す【回帰】を当てた瞬間に勝負は決すると言っても過言ではない。

 

「こうしていると前回の闘いを思い出しますね」


 感慨深く、連撃を止めることなく話すナツキ。

 

「レインさんが【月詠尊】で場を作り、他の皆さんがサポートする。違う点はいくつかありますが、どんな形であれ新旧含めた《十傑》のみがこのフロアに辿り着くことは変わらない」


 選ばれた者しか到達出来なかった第6フロア【無月】。

 第5フロアで力を示した者は足を踏み入れ。

 託した者は武器を渡し。

 そして至れなかった者の想いは紡がれる。

 そうして、全ての《十傑》がこの場に揃っていた。

 ナツキですら想定していなかった事態。この場でプレイヤー側が負けることがあれば、現実世界で待っている生き残りの死も確定し、《エンペラーオンライン》は人殺しのゲームとして完成する。


「ナツキ、1つ聞かせてくれ」


 絞り出すように発した声。

 極限の攻防の中レインは武器を消し、交渉を求めると意外にもナツキは手を止める。


「このゲームは何のために作られた?」

 

 

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